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第一章
32ーバウム
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「……ルルーシュア様、これはいったい……」
マーリソン様が何に驚いてるか? それはね……
「わふっ」
「誰なのー?」
そう! 我が家のトップアイドル、モモちゃんとルビちゃんです! いくらなんでもフェンリルとカーバンクルは出したらダメだろうと、モモとルビは魔道具作成部屋とは別の部屋にいたのですが、私が我慢できず。
何をって? モフるのをですよ! 私には癒しが必要なのよ! まだ来ないだろうと、油断してたわよ。ガッツリ見られてしまいました。
「えっと……マーリソンさま。何に見えます?」
恐々聞いてみた。
「私にはどう見ても、シルバーフェンリルとカーバンクルにしか見えませんが。まさか、そんな……伝説ですよ」
「そのフェンリルとカーバンクルです」
「…………!!」
あー、フリーズしちゃった。戻ってこーい!
「なんと素晴らしい!! やはりルルーシュア様は神に愛されてらっしゃるのですね!!」
ま、確かに神には会ったけども。
「さ、さっさと魔道具作りますよ」
「はーい」
やだわ、ユリウスったらクールだわ。
「ルル様、マーリソン様。大旦那様と大奥様がお呼びです。サロンへお越し下さい」
あら、お祖父様とお祖母様が? 何かしら?
「二人共、座りなさい」
あらやだ、全員集合じゃない。
「実はマーリソン殿の母上の事故の真相が分かった」
お祖父様、調べて下さってたのね。でも……マーリソン様大丈夫かしら?
「真相と言われますと?」
マーリソン様、流石にいつものテンションではないです。
「結論から言うと、起こるべくして起こった事故だった」
お祖父様のお話では……
マーリソン様のお母上は、馬車の車輪が外れた為に起こった事故だった。車輪が外れるなど、不自然だったので当時も捜査されたそう。お母上が馬車を使われる少し前に、お父上が馬車担当の使用人を解雇されていた。そのせいでメンテナンスが行き届いていなくて、運悪くお母上が乗ってらした時に車輪が外れて事故になったのだと。
なんとも痛ましい事故だったと。
「父は昔から気分の起伏が激しく、気に入らないと直ぐに使用人を解雇しておりました。自分の思う通りにならない事が、我慢ならない人なのです。母上はよく泣いておられました。もしかして、愛人を家に入れる為に父が手を下したのかもと思っておりましたが。そうですか」
それでも……間接的ではあるけれど、お父上のせいだと思ってしまうわよね。
「お調べ頂いて有難う御座います。これで本当に心から吹っ切れました」
私は今世の家族には恵まれている。前世は覚えてないから、その程度だったんだと割り切っている。今世、貴族だけでなく親の存在は大きい。親によって幸、不幸が決まるとも言える位に。
「元々もっと酷い想像をしていたのですから、大丈夫です。ルルーシュア様、私は大丈夫ですよ。泣かないで下さい」
私、泣いてた……?
「ルル……」
……レオン様。
「寧ろルルーシュア様に泣かれる方が辛いです」
マーリソン様ったら。
「マーリソン殿が吹っ切っておられるなら、他人の私共が口を出す事ではない。それと、マーリソン殿。魔導士団はどうなさるのか? このままと言う訳には行くまい?」
「幸い魔導士団に入団してからの休みが溜まっております。今はその消化で。しかし、私は家を出ました。二度とあの家に戻るつもりはありません。ですので、小さな家でも借りようかと考えております。しかし、今回の件が片付きましたら、無理矢理にでもルルーシュア様に付いて行きますがね」
「それならば、一旦我が邸に来ると言うのはどうかな? どうせ毎日通って来られてるんだ。手間が省けるだろう」
「そこまでお世話になる訳には参りません。これ以上、ご迷惑は……」
「アーデスとも相談したのだが、ルルーシュアに着いて行くかどうかは別としてだな。今迄全く接点のなかった魔導士団副士団長であるマーリソン殿が毎日通ってくるのは、どう考えても目立つし不自然だ。部屋は空いている。遠慮せずに来るといい」
お祖父様……
「お心遣い、感謝致します。私ごときに勿体ない事で御座います」
マーリソン様は深く頭を下げられました。
と、言う事で明日からマーリソン様もお祖父様のお邸に住われる事になりました。
「ルルーシュア様と同じ邸など……! 興奮して眠れないかも知れません!」
と、言っていた事は聞かなかった事にしよう。
今日はお祖父様のお邸の料理人にバウムの作り方を伝授しました。試作品を皆で食べてます。バウム、ウマウマよ。上出来よ。
「んー、少しパサついてないか?」
食べる専門のレオン様です。
「そうか? 美味いけどな」
これまた食べる専門のジュード兄様です。
「美味しいわ!」
「美味しいねー!」
はい、またまた食べる専門のモモにルビです。でも可愛いから許すわ。
「私はこの様に甘くて美味しいものは、生まれて初めて食べました!」
とは、マーリソン様です。
「そうだ、マーリソン殿」
「はい、ラウアース様なんでしょう?」
「サクソン殿の裏帳簿なのだが、持ち出せない様に魔法が掛かっているのだが」
「ああ、はいはい。あれは私が魔法をかけました。まさか裏帳簿だとはつゆ知らず」
アッサリと認めましたね。軽いですね。
「どうやったら解けるのだ?」
「簡単ですよ。それ以上の魔力を流せば良いのです」
「それ以上とは、どれ位だ?」
「私は偶々魔力量が多いのですが、父や弟、義母も魔力量は少ないのです。日常生活に困らない程度ですね。ですので、ルルーシュア様やユリウス殿は勿論、そうですね、この中だと……皆さん可能ではないでしょうか?」
「そうなのか?」
「はい。魔力を流し続けると一瞬ピキンと抵抗を感じる瞬間があります。それで終わりです」
「そんな簡単なものなのか?」
「はい、どうせ碌な事に使わないだろうと思い、適当に作ったものですから。父達は絶対に持ち出せないと思っている様ですが。まぁ実際、父達は魔力が少ないので持ち出せませんね」
なんともね……本人達は完璧だと安心しまくっているでしょうね。
「裏帳簿を持ち出すタイミングだが、パーティーが始まってからが良いだろう。パーティーには侯爵一家も招待されているだろうからな。侯爵一家が馬車で邸を出たら決行だ。ユリウス、頼めるか?」
「勿論です。皆様は何食わぬ顔でパーティーに出席して下さい。殿下、ケイをお借りしても宜しいですか?」
「ああ、勿論だ」
「持ち出せ次第、お持ちします」
これで問題は8割クリアです。残すは、婚約破棄の理由のみ。
「ルルーシュア様、おかわり頂いても?」
マーリソン様、マイペースです。次はアップルパイ作ってもらおう。
マーリソン様が何に驚いてるか? それはね……
「わふっ」
「誰なのー?」
そう! 我が家のトップアイドル、モモちゃんとルビちゃんです! いくらなんでもフェンリルとカーバンクルは出したらダメだろうと、モモとルビは魔道具作成部屋とは別の部屋にいたのですが、私が我慢できず。
何をって? モフるのをですよ! 私には癒しが必要なのよ! まだ来ないだろうと、油断してたわよ。ガッツリ見られてしまいました。
「えっと……マーリソンさま。何に見えます?」
恐々聞いてみた。
「私にはどう見ても、シルバーフェンリルとカーバンクルにしか見えませんが。まさか、そんな……伝説ですよ」
「そのフェンリルとカーバンクルです」
「…………!!」
あー、フリーズしちゃった。戻ってこーい!
「なんと素晴らしい!! やはりルルーシュア様は神に愛されてらっしゃるのですね!!」
ま、確かに神には会ったけども。
「さ、さっさと魔道具作りますよ」
「はーい」
やだわ、ユリウスったらクールだわ。
「ルル様、マーリソン様。大旦那様と大奥様がお呼びです。サロンへお越し下さい」
あら、お祖父様とお祖母様が? 何かしら?
「二人共、座りなさい」
あらやだ、全員集合じゃない。
「実はマーリソン殿の母上の事故の真相が分かった」
お祖父様、調べて下さってたのね。でも……マーリソン様大丈夫かしら?
「真相と言われますと?」
マーリソン様、流石にいつものテンションではないです。
「結論から言うと、起こるべくして起こった事故だった」
お祖父様のお話では……
マーリソン様のお母上は、馬車の車輪が外れた為に起こった事故だった。車輪が外れるなど、不自然だったので当時も捜査されたそう。お母上が馬車を使われる少し前に、お父上が馬車担当の使用人を解雇されていた。そのせいでメンテナンスが行き届いていなくて、運悪くお母上が乗ってらした時に車輪が外れて事故になったのだと。
なんとも痛ましい事故だったと。
「父は昔から気分の起伏が激しく、気に入らないと直ぐに使用人を解雇しておりました。自分の思う通りにならない事が、我慢ならない人なのです。母上はよく泣いておられました。もしかして、愛人を家に入れる為に父が手を下したのかもと思っておりましたが。そうですか」
それでも……間接的ではあるけれど、お父上のせいだと思ってしまうわよね。
「お調べ頂いて有難う御座います。これで本当に心から吹っ切れました」
私は今世の家族には恵まれている。前世は覚えてないから、その程度だったんだと割り切っている。今世、貴族だけでなく親の存在は大きい。親によって幸、不幸が決まるとも言える位に。
「元々もっと酷い想像をしていたのですから、大丈夫です。ルルーシュア様、私は大丈夫ですよ。泣かないで下さい」
私、泣いてた……?
「ルル……」
……レオン様。
「寧ろルルーシュア様に泣かれる方が辛いです」
マーリソン様ったら。
「マーリソン殿が吹っ切っておられるなら、他人の私共が口を出す事ではない。それと、マーリソン殿。魔導士団はどうなさるのか? このままと言う訳には行くまい?」
「幸い魔導士団に入団してからの休みが溜まっております。今はその消化で。しかし、私は家を出ました。二度とあの家に戻るつもりはありません。ですので、小さな家でも借りようかと考えております。しかし、今回の件が片付きましたら、無理矢理にでもルルーシュア様に付いて行きますがね」
「それならば、一旦我が邸に来ると言うのはどうかな? どうせ毎日通って来られてるんだ。手間が省けるだろう」
「そこまでお世話になる訳には参りません。これ以上、ご迷惑は……」
「アーデスとも相談したのだが、ルルーシュアに着いて行くかどうかは別としてだな。今迄全く接点のなかった魔導士団副士団長であるマーリソン殿が毎日通ってくるのは、どう考えても目立つし不自然だ。部屋は空いている。遠慮せずに来るといい」
お祖父様……
「お心遣い、感謝致します。私ごときに勿体ない事で御座います」
マーリソン様は深く頭を下げられました。
と、言う事で明日からマーリソン様もお祖父様のお邸に住われる事になりました。
「ルルーシュア様と同じ邸など……! 興奮して眠れないかも知れません!」
と、言っていた事は聞かなかった事にしよう。
今日はお祖父様のお邸の料理人にバウムの作り方を伝授しました。試作品を皆で食べてます。バウム、ウマウマよ。上出来よ。
「んー、少しパサついてないか?」
食べる専門のレオン様です。
「そうか? 美味いけどな」
これまた食べる専門のジュード兄様です。
「美味しいわ!」
「美味しいねー!」
はい、またまた食べる専門のモモにルビです。でも可愛いから許すわ。
「私はこの様に甘くて美味しいものは、生まれて初めて食べました!」
とは、マーリソン様です。
「そうだ、マーリソン殿」
「はい、ラウアース様なんでしょう?」
「サクソン殿の裏帳簿なのだが、持ち出せない様に魔法が掛かっているのだが」
「ああ、はいはい。あれは私が魔法をかけました。まさか裏帳簿だとはつゆ知らず」
アッサリと認めましたね。軽いですね。
「どうやったら解けるのだ?」
「簡単ですよ。それ以上の魔力を流せば良いのです」
「それ以上とは、どれ位だ?」
「私は偶々魔力量が多いのですが、父や弟、義母も魔力量は少ないのです。日常生活に困らない程度ですね。ですので、ルルーシュア様やユリウス殿は勿論、そうですね、この中だと……皆さん可能ではないでしょうか?」
「そうなのか?」
「はい。魔力を流し続けると一瞬ピキンと抵抗を感じる瞬間があります。それで終わりです」
「そんな簡単なものなのか?」
「はい、どうせ碌な事に使わないだろうと思い、適当に作ったものですから。父達は絶対に持ち出せないと思っている様ですが。まぁ実際、父達は魔力が少ないので持ち出せませんね」
なんともね……本人達は完璧だと安心しまくっているでしょうね。
「裏帳簿を持ち出すタイミングだが、パーティーが始まってからが良いだろう。パーティーには侯爵一家も招待されているだろうからな。侯爵一家が馬車で邸を出たら決行だ。ユリウス、頼めるか?」
「勿論です。皆様は何食わぬ顔でパーティーに出席して下さい。殿下、ケイをお借りしても宜しいですか?」
「ああ、勿論だ」
「持ち出せ次第、お持ちします」
これで問題は8割クリアです。残すは、婚約破棄の理由のみ。
「ルルーシュア様、おかわり頂いても?」
マーリソン様、マイペースです。次はアップルパイ作ってもらおう。
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