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第1章 朝5時にピンポン連打する異世界押しかけ妻
第15話『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』
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「一応、特殊能力が一つだけあります」
なんだかちょっと肩透かしみたいになって意気消沈していた俺を見て、エリカが付け加えるように言った。
「特殊能力だって!? どんなやつだ!? っていうかちゃんとすごい力持ってるんじゃんか!」
もしかして魔法少女リリカル☆エリカに変身しちゃったりするのかな?
まったくこんな大事な情報を出し惜しみするなんてエリカも人が悪いなぁ。
もしこれがなろうとかカクヨムとかアルファポリスで掲載されているWeb小説だったら、みんなこの話が完結したと思ってフォローやブクマを外しちゃうだろ?
ともあれ。
エリカは自分の持つ特殊能力についての説明を始めた。
「わたしが持っているのは、対象の質量や体積、物理法則に関係なく、動体の軌道を少しだけずらす能力です。ただししっかりと目視で確認できる範囲に限ります」
「ごめん、なに言ってるのかよく分からないから、もうちょっとだけ分かりやすく説明して欲しいかな?」
俺って文系出身なんで、理系っぽいこと言われると途端に脳が理解を放棄しちゃうんだよな。
理系の人が文系に話す時は、その辺りを察して話してくれると嬉しいな!
「つまり分かりやすく言うと、動いている物の進行方向をちょっとだけ変える力ですね。例えばそこのティッシュペーパーの箱をわたしに向かって投げてくれませんか?」
「え? おう、分かった。じゃあ軽めに投げるぞ?」
俺はティッシュ箱を掴むと、エリカに向かって軽ーく投げた。
ほんとに軽くで、これならキャッチも簡単だし、仮に当たってもちっとも痛くないだろうって感じの、ソフティタッチのゆるふわスローだ。
すると、なんということだろうか!
「うぉっ!? 今、ティッシュ箱が変な動きしたんだけど! エリカに向かって投げたはずなのに、途中で全然違う方向に見えない糸で引っ張られたみたいに飛んでいったんだけど!?」
「これがわたしが女神学院での厳しい修行によって習得した特殊能力――動いている物の進行方向を少しだけ変える『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』です」
「『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』!? す、すげえじゃん! これマジもんの超能力じゃないか! ヤバイ、ガチですごすぎる! ブラボー!! って、エリカどうした? なんかめっちゃしんどそうなんだけど? おいエリカ、おい!」
俺が気が付いた時には、エリカの顔は血の気が引いて真っ青になっていた。
慌ててエリカに駆け寄ると、ふらついて倒れそうになっていたその華奢な身体を支える。
「すみません、ちょっとぼぅっとしちゃってました……」
軽く肩を揺すって声掛けした俺に、エリカが苦笑いを返してくる。
「もしかして『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』を使った反動が来たのか?」
特殊な能力には使用代償がある――ラノベや漫画じゃ、夜空に浮かぶ星の数ほどよくある設定だ。
「さすがトール、なかなかの洞察力ですね。おっしゃる通り、この力は瞬間的に多大な生命エネルギーを消費してしまうんです」
「だよな、物理法則を捻じ曲げたんだもんな」
たったティッシュ1箱とはいえ、世界のルール通りに動こうとする物体の動きを変えてしまったのだ。
その負荷は当然、相当なものになるだろう。
「ですがこう見えてわたしは、強大なエネルギーを持った異世界転移の巫女。安静にしていればすぐに回復しますので、そこはどうぞご安心を」
事実、そう言ったエリカの頬には既に赤みが差し始めていて、活力が戻りつつあることが見てとれた。
受け答えもしっかりしているし、これには俺も一安心だ。
「うん、顔色も見る見る良くなってるよ。でもとりあえずこの能力は封印ってことにしよう。下手に使ってエリカに倒れられたら困るし」
「そうですね、それに使い勝手もあまり良くはありませんから。コントロールも超アバウトなので大雑把に向きは変えられても、ピンポイントで何かを狙ったりはできませんので」
「そうなんだな。でもこれは間違いなく超能力だよ、すごいぞエリカ! 俺、生まれて初めて本物の超能力を見たよ! 感動したよ!」
「えへへ、トールに褒められちゃいました」
俺なんかに褒められたくらいで何がそんなに嬉しいのか、エリカはにへら~っと嬉しそうにほほ笑んだ。
なんだかちょっと肩透かしみたいになって意気消沈していた俺を見て、エリカが付け加えるように言った。
「特殊能力だって!? どんなやつだ!? っていうかちゃんとすごい力持ってるんじゃんか!」
もしかして魔法少女リリカル☆エリカに変身しちゃったりするのかな?
まったくこんな大事な情報を出し惜しみするなんてエリカも人が悪いなぁ。
もしこれがなろうとかカクヨムとかアルファポリスで掲載されているWeb小説だったら、みんなこの話が完結したと思ってフォローやブクマを外しちゃうだろ?
ともあれ。
エリカは自分の持つ特殊能力についての説明を始めた。
「わたしが持っているのは、対象の質量や体積、物理法則に関係なく、動体の軌道を少しだけずらす能力です。ただししっかりと目視で確認できる範囲に限ります」
「ごめん、なに言ってるのかよく分からないから、もうちょっとだけ分かりやすく説明して欲しいかな?」
俺って文系出身なんで、理系っぽいこと言われると途端に脳が理解を放棄しちゃうんだよな。
理系の人が文系に話す時は、その辺りを察して話してくれると嬉しいな!
「つまり分かりやすく言うと、動いている物の進行方向をちょっとだけ変える力ですね。例えばそこのティッシュペーパーの箱をわたしに向かって投げてくれませんか?」
「え? おう、分かった。じゃあ軽めに投げるぞ?」
俺はティッシュ箱を掴むと、エリカに向かって軽ーく投げた。
ほんとに軽くで、これならキャッチも簡単だし、仮に当たってもちっとも痛くないだろうって感じの、ソフティタッチのゆるふわスローだ。
すると、なんということだろうか!
「うぉっ!? 今、ティッシュ箱が変な動きしたんだけど! エリカに向かって投げたはずなのに、途中で全然違う方向に見えない糸で引っ張られたみたいに飛んでいったんだけど!?」
「これがわたしが女神学院での厳しい修行によって習得した特殊能力――動いている物の進行方向を少しだけ変える『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』です」
「『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』!? す、すげえじゃん! これマジもんの超能力じゃないか! ヤバイ、ガチですごすぎる! ブラボー!! って、エリカどうした? なんかめっちゃしんどそうなんだけど? おいエリカ、おい!」
俺が気が付いた時には、エリカの顔は血の気が引いて真っ青になっていた。
慌ててエリカに駆け寄ると、ふらついて倒れそうになっていたその華奢な身体を支える。
「すみません、ちょっとぼぅっとしちゃってました……」
軽く肩を揺すって声掛けした俺に、エリカが苦笑いを返してくる。
「もしかして『運命を偽る者、デスティニー・フェイカー』を使った反動が来たのか?」
特殊な能力には使用代償がある――ラノベや漫画じゃ、夜空に浮かぶ星の数ほどよくある設定だ。
「さすがトール、なかなかの洞察力ですね。おっしゃる通り、この力は瞬間的に多大な生命エネルギーを消費してしまうんです」
「だよな、物理法則を捻じ曲げたんだもんな」
たったティッシュ1箱とはいえ、世界のルール通りに動こうとする物体の動きを変えてしまったのだ。
その負荷は当然、相当なものになるだろう。
「ですがこう見えてわたしは、強大なエネルギーを持った異世界転移の巫女。安静にしていればすぐに回復しますので、そこはどうぞご安心を」
事実、そう言ったエリカの頬には既に赤みが差し始めていて、活力が戻りつつあることが見てとれた。
受け答えもしっかりしているし、これには俺も一安心だ。
「うん、顔色も見る見る良くなってるよ。でもとりあえずこの能力は封印ってことにしよう。下手に使ってエリカに倒れられたら困るし」
「そうですね、それに使い勝手もあまり良くはありませんから。コントロールも超アバウトなので大雑把に向きは変えられても、ピンポイントで何かを狙ったりはできませんので」
「そうなんだな。でもこれは間違いなく超能力だよ、すごいぞエリカ! 俺、生まれて初めて本物の超能力を見たよ! 感動したよ!」
「えへへ、トールに褒められちゃいました」
俺なんかに褒められたくらいで何がそんなに嬉しいのか、エリカはにへら~っと嬉しそうにほほ笑んだ。
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