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グラウンド・ゼロ

第13話

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 「今回のミッションの内容はわかっているな?」

 「おあいにく様。少年を捕まえるんでしょ?」

 「“捕まえる”んじゃない。連れていくんだ。663-8152のエリアに連れていけ」

 「どっちでも良くない?で、名前なんだったっけ?そいつの」

 「木崎亮平。彼は、特別保護対象の一人だ。くれぐれもしくじるなよ」

 「はいはい」


 無線連絡を取っているのは、年端も行かない女の子だった。

 彼女はグラウンド・ゼロの住人であり、第12セクターの空挺部隊兵『スカイ・フォックス』の一員で、コードネームは“ナギサ“と呼ばれている。

 ナギサは無線先である情報司令部の局員とやり取りしながら、今回のミッションについてを確認していた。

 「今回のミッション」とは、断層に落ちた人々の救出を行うこと。

 それはスカイ・フォックスの重要な任務の一つだが、今回の任務は特別だった。

 標的である「木崎亮平」という人物は、【ファースト・キッド】という人類の1人で、最初期の人間の1人でもあった。

 「ファースト・キッド」というのは、平たく言えば”世界崩壊前”の人間のことであることが、事態はそう単純ではなかった。

 彼はファースト・キッドの中でもとくに重要な人物にみなされており、「特定保護対象」の1人でもあった。

 しかし過去の任務では、彼を連れてくることは悉く失敗に終わっており、長い間、その行方もわからないままだった。

 情報司令部が見つけた情報によれば、彼は断層に閉じ込められたまま、ある海岸の岸辺にいるということが目撃されていた。

 ナギサは彼を見つけ、回収地点である「663-8152」まで連れていくことが任務だった。

 663-8152、ナギサはコンピュータ上で場所を確認し、ルートを確かめる。

 
 甲子園球場。


 最初期の世界では、かつてそう呼ばれていた場所。

 ナギサは場所を脳内にインプットし、断層の中へとダイブを試みた。

 E・ゾーンへのアクセス。

 失われた世界の、——狭間へ。
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