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グラウンド・ゼロ
第12話
しおりを挟む「ピー…ジジジ」
「聞こえる?」
「…ジジ…、ジー……。…ああ。聞こえる」
「電波が悪いね。領域を広げられる?」
「…今、調整した。声はどうだ?」
「うん。大丈夫」
西暦2×××年。4月。
かつて「日本」と呼ばれた大陸の中心で、新たな新興工業都市「グラウンド・ゼロ」が設立、繁栄を遂げていた。
グラウンド・ゼロとは世界各地に存在する“世界崩壊後”の都市のことで、全世界で言えば約600余りの支部と、20個のメガシティが存在する。
メガシティはそれぞれ「××セクター」という表記で区分され、各セクターに於いて巨大な防衛網が築かれた「砦」が、『機械防衛都市システム』として稼働、運用されていた。
日本列島が存在していた場所に復興したメガシティは、『第12セクター』に該当し、重要な防衛ラインの一つとして見なされていた。
メガシティは通称「フロム・スペース」と呼ばれ、この世界の【外】から侵入してくる“ゼノ”と呼ばれる魔物から身を守るため、特殊な訓練を積んだ兵士たちを配備し、また、街の至る所に迎撃システムを配置、セキュリティの強化を実施してきた。
ゼノは、空から降ってくる。
それはもう数百年も前からのことだ。
今から数百年前、「シエンフエゴス小惑星」と呼ばれる巨大な隕石が地上に落下し、世界は元の形を失った。
巨大隕石の落下後、地上には【E・ゾーン】という断層が発生し、人々はその謎の断層に呑み込まれ、数年も経たないうちに消息を絶った。
世界は、2083年に一度死んだ。
22世紀に突入する前、——第一次タイム・クラッシュが起こった世界線に於いて、かつて存在していたはずの「世界」を、失った。
隕石が衝突したあの日、
——あの日からだ。
世界は、「空」を失った。
どこまでも青く広がっていたはずの空にはぶ厚い雲が覆われ、二度と、光が差し込むことはなくなった。
あの日から、二度と止むことのない雨が降り続けることになった。
雨は地上の形を変え、大陸はことごとく海に沈んだ。
光の差し込まない世界で、動物や植物たちは次々に死んでいった。
大地は瞬く間に荒廃した。
風が吹くことさえ無くなり、空を飛ぶ鳥の姿さえ、いつの日か消えてしまった。
「時間」が、止まった。
永遠に「未来」が失われたのだ。
人々が歩んでいた確かな明日への時間が、“タイムクラッシュ爆心地”である、兵庫県神戸市淡路島北部を中心として。
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