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660貴方を守る騎士になります

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シュミト公爵の手を引き、闇魔法で姿を消しながらスカイウォークで城の中を進んだ。
塔に近づくと、人を連れてスカイウォークを使うのは限界だった。

後は姿を消して塔へ向かったが、既に塔の方は見張りは殆ど居ない。
このまま塔には人が居ないと思わせた方が良いかとも思ったが、塔までの通路に毒の入った瓶を投げつける。

「ヒトフリ草から抽出した毒なので気を付けて。
 解毒剤は有りますが毒が強過ぎてこの場で助けられるか難しい。」

通路に撒けば、毒が留まり敵も入ってこれなくなる。
猛毒だが10日もすれば無毒となるので、バラン将軍達が城を取り戻すまで丁度いい時間稼ぎになるだろう。
剣君と斧ちゃんの格好なら、出し惜しみはしない。
今は、グランザム王国の人間。ヨハン王子に尻拭いをお願いするつもりだ。
塔への階段に着いた所で、更に毒の入った瓶をばら撒き、階段を手に入れた廃材で塞ぐ。

「2人は国でも落すつもりなのか。」
「それは、騎士や貴族の間で流行っているジョークですか。バラン将軍にも言われましたよ。」

確かに、国を落すなんてデカイ話をすれば、笑いも出るだろう。
塔の階段を登るが、敵の姿は無い。
部屋に入ると、ドレーヌ夫人が短剣をかざしたが、俺達の姿を見てその場に座り込んでしまった。

「ドレーヌ様、大丈夫ですか。」
「シュミト公爵だと分かった途端に、力が抜けてしまいました。
 本当に助けに来てくれたのですね。ありがとうございます。」
「勿体ないお言葉。助けに来るのが遅れて、申し訳ありませんでした。」
「いえ、助かりました。剣君と斧ちゃんもありがとう。」

俺達は着ぐるみのまま、ドレーヌ夫人に頭を下げた。
ヤマトにはそのまま姿を隠し続けて貰っている。


******(シュミト公爵)

斧ちゃんが寝ている兵士の容態を確認し、問題ない事が分かると
部屋にテーブルを用意し、塔に籠城しているとは思えない料理を出してくれた。
そして、通路の様子を見てくると言って、部屋を出て行った。
変な気を使われ、緊張してきた。

「冷めない内に頂きましょうか。」

俺が話す事を微笑みながら相槌を打ってくれるのが嬉しくて、何時もより饒舌になっている自分が居た。
初めて参加したパーティでドレーヌ様に見惚れてしまった時の少年時代に戻った気持ちだ。

暫くすると、

「どうやら、兵士の方の目が覚めたみたいですね。」

ドレーヌ夫人が兵士の方へ行くので

「では、剣君と斧ちゃんを呼んで来ましょう。」

俺は2人を呼びに通路へ出たが、姿が見えない。
通路を塞いだ所まで戻ると、2人の話声が聞えてきた。

「剣君、斧ちゃん、兵士が・・・」

彼等は着ぐるみの頭を脱いで、食事をしている最中だった。
2人の他に黒くて丸い狸の様な魔獣。
直ぐに後ろを向いたがお互いに目が有ってしまった。
声から若いとは思っていたが、こんな青年と子供だったとは・・・


******(拓)

瓦礫で塞いだ所まで戻って浩司と食事をしていたのだが
塔では魔力を放出させる探索魔法が使えず、シュミト公爵の気配にすら全く気付けなかった。

シュミト公爵は俺達と目が合うと直ぐに後ろを向いてくれたが、完全に顔を見られた。
おまけにヤマトまで

「恩人の事を話す様な真似はしない。」

ここはシュミト公爵の言葉を信じるしかなさそうだ。
部屋に戻ると、ドレーヌ夫人が兵士の側で汗を拭いてあげている。
場所を代わってもらい様子を確認したが、

「問題なさそうですね。名前を聞いても良いですか。」
「自分は、第一騎士団所属のべータです。」
「べータさん、後は無理せずに食事を取って体を癒してください。」
「ありがとうございます。自分はお2人の事を何とお呼びすれば良いでしょうか。」
「俺は斧ちゃん、向こうは剣君と呼んでください。」
「・・・斧ちゃんと剣君ですね。了解しました。」

微妙な間が有ったが、気にするのは止めよう。
その後は、ドレーヌ夫人が兵士に食事をさせているのだが、それを羨ましそうに見るシュミト公爵。
彼がシュミト公爵の部下でなく、良かったと思う。


「私もシュミト公爵も、ここで見た事は決して話しません。
 かと言って、被り物を取る訳にはいかないでしょうね。」

ドレーヌ夫人は申し訳なさそうにする。話題を変えるために質問をする事に。

「ところで、どうして剣君と斧ちゃんの事を知っていたのですか。」

ブルネリ公爵領マスコットキャラとして広めようとしているが、努力の甲斐空しく認知度は低い。
イルミネーションに合わせてブルネリ公爵領に来ていたのだろうか。

「以前にサリナ様が正義の味方のマスコット人形を送ってくれましたの。
 でも、本当に剣君と斧ちゃんが助けに来てくれるなんて思わなかったわ。」

正義の味方では無く、ゆるキャラなんだけどな。
改めてドレーヌ夫人の事を聞くと、王族の血を引いる人だった。
但し、ドレーヌ夫人の母親が元姫で、他の貴族の下に嫁いだので王位継承権はない。


ドレーヌ夫人とシュミト公爵の出会いは、王族主催のパーティだったらしく
まだ少年だったシュミト公爵は既に婚約をしていたドレーヌ夫人に一目ぼれをし

「将来、貴方を守る騎士になります。」

と宣言した事は、貴族の中では有名な話しらしい。
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