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661巨大魔道具
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敵は塔の方へは来る様子も無く、ヨハンさんも簡単な事くらいは自分で出来る様になってきている。
酷い怪我だったとはいえ、後遺症は残らないみたいだ。
俺達の場所からは外の状況は分からず、どちらにしろ毒が消えるまでは動きようが無い。
「この城の動力源が切れませんかね。
せめて、もう少し魔法が使えれば、色々とやれる事が有るのですが。」
魔力を放出しても1割にも満たない。
全力を出せば、普通の魔道師位には成るかもしれないが、それはやっていられない。
ヤマトも姿を隠すのが限界で、通路の方で待機して貰っている。
「それは無理ですね。1ヶ月以上は、この状態を維持出来ると聞いています。」
「普段から、この状態では無いのですか。」
「非常時にだけ、王族が城の力を解放します。
今なら、城を囲むシールドも普段の数倍の強度を持っているはずですよ。」
それだけの魔力を蓄えられるなんて、どんなシステムなんだ。
ドレーヌ夫人の話では駆動装置はこの塔の地下に在り、装置を動かせるのも、扉を開けられるのも国王だけらしい。
「待ってください。その駆動装置の有る部屋には何か有るのでは。」
「それ以上は分かりません。私は中に入った事が無いので。
ただ、一度城の力を解放してしまうと、部屋への扉も魔力を動力源とするので開いたままに成っているはずです。」
もし、ナターシャ達の目的がその部屋の中に有るとすれば、
戦争を仕掛けようとしたり、サリナ姫の誘拐、貴族に反乱を起こさせた理由も納得できる。
『全てが部屋への扉を開かせるためじゃったら、既に目的は達成させているじゃろう。』
グリムも同じ事を考えたみたいだ。
いや、そうだとすると
「剣君、斧ちゃん、どうした。何か気になる事でも有るのか。」
シュミト公爵が聞いて来るが、先に気になった事を尋ねてみる。
「元貴族達の処刑の時、城の力は解放されなかったのですか。」
「あの騒ぎの時は、国王は死刑場に居た。力を解放させるのは無理だろう。
今回は戦争が起きそうになった後での王子のパーティのために、事前に装置を起動させている。」
もし、そこまで計画的に動いていたとすると・・・
シュミト公爵にナターシャ達が駆動装置の部屋を狙ったのではないかという推測を話してみた。
「前回の襲撃には参戦していた3人が居ないとなると、その可能性も有るか。
確かに、戦争という事態が起きなければ部屋の扉を開く事は無かっただろう。
しかし、我々にあの毒を撒いた通路を通り抜ける方法は有るのか。」
シュミト公爵が言う通り俺達はあの通路を通り抜ける事は出来ない。
解毒剤は有っても、毒を浴び続けては無事ではいられない。
そして、魔法が使えるのならともかく、今の状態では他に方法が無いことを話す。
「なら、塔を出た後の事を検討しておいた方が良いだろう。
ドレーヌ様、国王様に口添えをして2人に塔の内部を見せて頂くことは出来ないでしょうか。」
「あの部屋は、王族しか入る事を許されていません。
出来る限りの事はしますが、王族の血を引いているだけの私では難しいかも知れません。」
いざという時、サリナ姫にも力を貸してもらう事も考えておいた方が良いかもしれないな。
「しかし、この城は遺跡なんですよね。
未だに稼働しているなんて凄いです。
古代のテクノロジーって、人知を超えていますよ。」
俺は手のひらに集めた魔力が消えていくのを繰り返していた。
「少し違うわね。この城が遺跡では無くて、遺跡の場所に城を建てています。
遺跡だった場所は、私達の居る中央の柱と5隅の塔だけ。
それを元に城が建てられています。」
「ドレーヌ夫人は遺跡に詳しいですね。」
「昔は、考古学者になるのが夢でしたから。
と言っても、自由に外に出る事も出来ずに一番近い遺跡として城を色々と調べていた位ですが。」
昔を懐かしむように、目を閉じるドレーヌ夫人。
「サリナ姫のお母様がお存命だった時は、良く城に来てサリナ様に遺跡の話をしてあげたのよ。
姫様は、それはもう目をキラキラさせてね。
良く、遺跡の話をする様に強請られたのよ。」
その頃のサリナ姫なら可愛かっただろうな。
「6つの塔だけでも凄く大きな遺跡ですよね。
城と一体化していた訳で無ければ、この遺跡は何の目的で建てられたのか。」
「それは面白い疑問ね。でも、残念ながら分からないわ。
ただ、城が後から建てられたのならシールドを張る為では無いと思います。」
張られているシールドは、地面まで届いていない。
城が後から付け加えられたのであれば、確かに別の目的が有った方が合理的な考えだ。
現存している資料には、中央の塔と周囲に5本の塔が立っている状態から城を作った経緯だけが書かれているらしい。
「この部屋は塔の外側にあるけど、内側はどうなっているんだろうな。」
浩司の言う通り、この塔の中はどうなっているのだろうか。
「当時の国王、お父様にも聞いてみたけど、教えて貰えなかったわ。
ただ、塔に登っても内側への入口は見つからなかったので、塔全体が大きな魔道具なのかも知れないわね」
強力な結界を張り続ける、巨大な魔道具か。
古代のテクノロジーは凄い。
酷い怪我だったとはいえ、後遺症は残らないみたいだ。
俺達の場所からは外の状況は分からず、どちらにしろ毒が消えるまでは動きようが無い。
「この城の動力源が切れませんかね。
せめて、もう少し魔法が使えれば、色々とやれる事が有るのですが。」
魔力を放出しても1割にも満たない。
全力を出せば、普通の魔道師位には成るかもしれないが、それはやっていられない。
ヤマトも姿を隠すのが限界で、通路の方で待機して貰っている。
「それは無理ですね。1ヶ月以上は、この状態を維持出来ると聞いています。」
「普段から、この状態では無いのですか。」
「非常時にだけ、王族が城の力を解放します。
今なら、城を囲むシールドも普段の数倍の強度を持っているはずですよ。」
それだけの魔力を蓄えられるなんて、どんなシステムなんだ。
ドレーヌ夫人の話では駆動装置はこの塔の地下に在り、装置を動かせるのも、扉を開けられるのも国王だけらしい。
「待ってください。その駆動装置の有る部屋には何か有るのでは。」
「それ以上は分かりません。私は中に入った事が無いので。
ただ、一度城の力を解放してしまうと、部屋への扉も魔力を動力源とするので開いたままに成っているはずです。」
もし、ナターシャ達の目的がその部屋の中に有るとすれば、
戦争を仕掛けようとしたり、サリナ姫の誘拐、貴族に反乱を起こさせた理由も納得できる。
『全てが部屋への扉を開かせるためじゃったら、既に目的は達成させているじゃろう。』
グリムも同じ事を考えたみたいだ。
いや、そうだとすると
「剣君、斧ちゃん、どうした。何か気になる事でも有るのか。」
シュミト公爵が聞いて来るが、先に気になった事を尋ねてみる。
「元貴族達の処刑の時、城の力は解放されなかったのですか。」
「あの騒ぎの時は、国王は死刑場に居た。力を解放させるのは無理だろう。
今回は戦争が起きそうになった後での王子のパーティのために、事前に装置を起動させている。」
もし、そこまで計画的に動いていたとすると・・・
シュミト公爵にナターシャ達が駆動装置の部屋を狙ったのではないかという推測を話してみた。
「前回の襲撃には参戦していた3人が居ないとなると、その可能性も有るか。
確かに、戦争という事態が起きなければ部屋の扉を開く事は無かっただろう。
しかし、我々にあの毒を撒いた通路を通り抜ける方法は有るのか。」
シュミト公爵が言う通り俺達はあの通路を通り抜ける事は出来ない。
解毒剤は有っても、毒を浴び続けては無事ではいられない。
そして、魔法が使えるのならともかく、今の状態では他に方法が無いことを話す。
「なら、塔を出た後の事を検討しておいた方が良いだろう。
ドレーヌ様、国王様に口添えをして2人に塔の内部を見せて頂くことは出来ないでしょうか。」
「あの部屋は、王族しか入る事を許されていません。
出来る限りの事はしますが、王族の血を引いているだけの私では難しいかも知れません。」
いざという時、サリナ姫にも力を貸してもらう事も考えておいた方が良いかもしれないな。
「しかし、この城は遺跡なんですよね。
未だに稼働しているなんて凄いです。
古代のテクノロジーって、人知を超えていますよ。」
俺は手のひらに集めた魔力が消えていくのを繰り返していた。
「少し違うわね。この城が遺跡では無くて、遺跡の場所に城を建てています。
遺跡だった場所は、私達の居る中央の柱と5隅の塔だけ。
それを元に城が建てられています。」
「ドレーヌ夫人は遺跡に詳しいですね。」
「昔は、考古学者になるのが夢でしたから。
と言っても、自由に外に出る事も出来ずに一番近い遺跡として城を色々と調べていた位ですが。」
昔を懐かしむように、目を閉じるドレーヌ夫人。
「サリナ姫のお母様がお存命だった時は、良く城に来てサリナ様に遺跡の話をしてあげたのよ。
姫様は、それはもう目をキラキラさせてね。
良く、遺跡の話をする様に強請られたのよ。」
その頃のサリナ姫なら可愛かっただろうな。
「6つの塔だけでも凄く大きな遺跡ですよね。
城と一体化していた訳で無ければ、この遺跡は何の目的で建てられたのか。」
「それは面白い疑問ね。でも、残念ながら分からないわ。
ただ、城が後から建てられたのならシールドを張る為では無いと思います。」
張られているシールドは、地面まで届いていない。
城が後から付け加えられたのであれば、確かに別の目的が有った方が合理的な考えだ。
現存している資料には、中央の塔と周囲に5本の塔が立っている状態から城を作った経緯だけが書かれているらしい。
「この部屋は塔の外側にあるけど、内側はどうなっているんだろうな。」
浩司の言う通り、この塔の中はどうなっているのだろうか。
「当時の国王、お父様にも聞いてみたけど、教えて貰えなかったわ。
ただ、塔に登っても内側への入口は見つからなかったので、塔全体が大きな魔道具なのかも知れないわね」
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古代のテクノロジーは凄い。
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