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第四十七話【【過去を癒して】】後

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「冬真、冬真……」

 縋るようにしがみつかれながら、内部を荒らす指を三本へ増やし、充分すぎるほどトロトロになるまでほぐす。

「やっ、もういい……」

 ほぐしているだけでも、何度も達してしまったらしい力也に身をよじられ、冬真は指を止めた。

「入れて冬真……」

 感じすぎてうるんだ瞳で言われ、笑みを返すと指を抜いた。そしてDomらしい優しい支配者の笑みを浮かべた。

「力也Present&Say」【晒して、言え】

 そのコマンドに、力也は体をベッドに倒し両足を大きく広げ、待ちきれないと訴える秘部を晒した。

「冬真のチ●コで俺の中、沢山愛して、癒して……お願い俺のご主人様」
「任せて」

 愛しのSubに愛してほしいと懇願されるほど嬉しいことがあるだろうか?冬真は沸き上がるほどの幸福感に浸りながら、性器を取り出し力也の中に差し入れた。

「ああっ!」

 入れられた瞬間再度絶頂を迎え、ヒクつく中に更に奥深く突き進み、隙間などないぐらいにぴったりとはめ込んだ。

「力也?きつくねぇ?」
「きつくない……温かい……」
「よかった」

 絶頂の余韻でヒクつくのが落ちつくまで、背中に回された手と中の感触を堪能し、落ち着いたのを見計らい額にキスする。

「動くから、一杯気持ちよくなって」
「うん、冬真も」

 その言葉と共につぼめる様に、力を入れ締められ、冬真は眉をしかめた。

「こら」

 悪戯をされたかのように言われ、力也は笑い返した。しかし、その瞬間ズルリと抜かれ一気に差し込まれた。
 腰を激しく打ち付けられる度に、力也の体が跳ねる。離すまいとしっかりと抱きしめ、あわれもない嬉しい悲鳴が漏れる。

(気持ちいい、気持ちいい)

 それだけしか考えられなくなってくる。その瞳から零れ落ちた涙は冬真に舐められ消えていく、快感のあまり力が抜けた両手は掴まれ、腕ごと抱きしめられた。
 耳元で聞こえる激しい息遣いさえも快感を生む。最愛の主人が愛してくれている。その事実がなによりも嬉しい。

「冬真、出して、俺の中に一杯出して」

 忘れられない記憶がある。忘れたい悪夢のような過去がある。それはつらすぎるが故に口にすることもできない。思い出すだけで体が強張るのも、震えることもさっき気づいた。
 大丈夫だと思っていたのに、全然大丈夫じゃなかった。
 大好きなたった一人の人の腕の中だというのに、あんなことになるなんて今でも信じられない。
 あんなのは嫌だった。奴らと冬真は全然違うのに、体は勝手に反応した。
 だから塗り替えて欲しい、しぶとく残る記憶を奪って塗りつぶして欲しい。

「わかった」

 心に痛いほどの懇願を承諾し、その唇に労わる様にキスを返し、望み通り中へと精子をはきだした。その感触に痙攣する内部が落ち着く前に、敏感になっている中を激しく犯す。

「俺の力也、俺以外にはさせない
「うん」
「ずっと守るから、信じて」
「うん……あっ!」
「可愛い、エロい、いいこ力也。愛してる」

 何度も何度も達する力也の中が満たされるまで、入れ込み、ようやく冬真は性器を抜いた。
 力が抜けきった力也は、何度か大きく呼吸を繰り返すとピタッと止まった。

「力也?」

 不自然なまでに、震えも激しい呼吸も止まった力也に驚き覗き込めばその目はトロンと蕩けていた。

「サブスぺか」

 今日は大忙しだと、苦笑し両手を取り背中へと回させる。ポンポンと撫で、いつもの力強さが感じられない体を抱きしめる。

「気持ちよかったな、幸せだったろ」

 そう言えばコクッと首が落ちるように頷いた。そんな力也の頭を撫で何度目かのキスを贈る。

(これはしばらくもどってこなそうだな)

 力也の反応から、しばらくこのままだろうと予想し、冬真は手を伸ばしティッシュを取った。何枚か抜き、力也の秘部へあてる。あてたティッシュはすぐに、ビショビショになり、また新しいのを取り出し、もう一度あてる。
 中に出した物だけじゃなく、力也が出した物も多く、自分の服までどうしょうもない状態になっていた。

(脱げばよかった)
「とうま……」

 甘えるようにすり寄られ、愛しさで満たされながらその頬にキスをする。汗まみれになっている首筋に舌を這わせれば力也はくすぐったそうに笑った。
 調子に乗って首筋だけじゃなく、肩や胸にも舌を這わせキスを落す。その度にくすぐったいのか、力也は体を捩り笑った。

「まったく、甘やかされてこんなに嬉しそうなのに」

 頑張ってくれようとするのは嬉しいけど、それを肯定してほしいわけじゃない。言いなりなんかもっとダメだ。
 Domの言いなりになるのが幸せってSubもいるが、力也は生き生きと自由に生きているほうがずっといい。
 冬真は自分の言いなりになるSubが欲しかったから力也を手に入れたわけではなく、あんな失礼なことをしたDomに怯まず、謝罪も許し、普通に接してくる姿に惹かれた。
 例え振られたってきっと好意は持ったままだろう。

「そこんとこわかってるのか?」

 相変わらず、ぼんやりとしたまま無邪気な笑みを浮かべる姿に苦笑し、ピアスを施した乳首へともう一度キスを贈る。

「痛くなくてよかった」
「とうま~」

 そうしていると今度は力也が、少し体を起こし冬真の頭を掴んだ。

「うん?」

 何をするのかと思えば、先ほど冬真がピアスにキスをしたように、左耳のピアスを舐めた。

「お返し」
「ありがと」

お礼を言えば、まるで悪戯好きな幼子のような笑い声が返ってきた。甘えているともいえるが、まどろみのなか遊んでいるほうが近い。
 力也は基本的に遊ぶのが好きだ。普段はもちろん、Playでも完全に自我がきかなくなるよりも、ふざけ合っている時のほうがしょうに合うのだろう。

「お返しのお返し」

 傷は塞がってはいるものの、筋のように傷跡のところだけ浮き上がった皮膚へと舌をなぞるように滑らせれば、身をよじり笑った。

「痛いの、痛いの飛んでけ」

 舌で舐めながら、子供のころに聞いたおまじないを唱える。“ついでに十倍二十倍になって傷をつけた奴のところまで飛んでいけ”そんな想いを込めながら冬真は傷痕の一本一本に舌を這わせ、キスを贈った。

 ずっとこうしていたいが、このままだと時間がどんどん経ってしまう。ベッドはとてもこのまま眠れる物じゃないし、服もぐちゃぐちゃ、なによりも力也の中に出してしまったものをどうにかしなければならない。
 とくに今日は求めるままにいつもより多く出した。腹痛になるかもしれないし、早めにしっかり処理をしたほうがいいだろう。

「力也?シャワー行きたいんだけど」

 その言葉にも力也はコクッと頷きはするものの動かない。冬真は、ぼんやりしたままの力也と攻防の末ベッドの端まで移動し力也を立たせて風呂に向かうことになんとか成功した。

「UP」【立て】

 そう命じれば、力也は立ち上がった。続けてついてくるように命じ、風呂に行くと壁に押し付けた。

「力也、尻突き出したままStay」【待て】

 両尻タブを広げ、グチュグチュに濡れている秘部に手を触れ、広げると中をかき出す。
 かき出しても、かき出しても出てくることに、我ながら“ガキか”と笑い、刺激するようにシャワーを当てる。

「あっ……ああん……」

かき出しながらお湯を当てれば、艶めく声が力也から漏れだし、散々やったのにまたやりたくなる。

「まだ出したかったら出していいから」

 洗われているだけで、また達した力也だが、綺麗になる頃になってやっと瞳がいつもの力強さを取り戻した。

「あれ?」
「おかえり」
「またサブスぺ入ってた?」

 頷かれ、記憶を探るがいつからサブスペースにはいったか思い出せない。本当に入りやすくなっているのかもしれない。

「中、全部だしちゃったか」
「腹壊すだろ」
「慣れてんだから大丈夫なのに」
「力也さっき言ってたの聞いてた?」

 咎めるような口調に変わり、力也は口を噤むと冬真の方へ向いた。

「大事にしたいっていっただろ?」
「言った」
「だから、こっちのケアもさせて」

 そう言われ、それ以上はなにも言えずに力也は頷いた。“Good Boy”という誉め言葉と共にキスを贈られ、あっさりとその身を冬真へ預けた。

 冬真の手つきも声もどこまでも優しく、本当に大事にされているとしか感じられない。
 嫌な思い出だけの傷も、第三者的に見れば酷い過去も、すべてを否定することなく、力也が必死に生きてきた証として冬真は受け入れた。
 力也のすべてを自分の物に、Domらしい独占欲と強い愛情で、過去を癒す。
 どんなに時間がかかっても、力也が少しでも楽でいられるように。
 “こんな目に合わせたやつを絶対に許せない”そんな恐ろしいほどの憎しみは欠片も出さずに。
 にっこりと優しい笑顔で、蕩けるほどの愛情を注ぐ。
 
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