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38話 最推しカプと会話

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 サクが解熱した日から彼の元へは頻繁に通っていた。

「サクたああああんんんん!」
「帰れ」

 なにせ何も説明しなくても私の事情とこの世界線を理解しているので気兼ねなく話せる。なにより推しだから会えるだけで嬉しい。

「クラスんは?」
「治癒だっつーて騎士舎にいる。ユースティーツィアが護衛してるから大丈夫だろ」
「本編のようだ……」
「……お前、あの婚約者は?」
「ふっふっふ、聞いてサクたん。初めてかもしれないんだけど、今私一人で!」

 エールはイグニス様に呼ばれて話をしている。で、その間にここに来ていいとイグニス様に了承得て来ている。エールはそれはもう嫌そうにしていたけど、隣の部屋だし相手がサクだから許してくれた。

「エールってばいっつも一緒だから。死亡フラグとそこまで深く付き合いたくないんですけどね~」
「……」

 サクの前でエールの名前を出すのは全部みられて知られているから。ああ本当サクの前だと色々楽だわ。

「お前しょっちゅう死亡フラグつってるけどよ」
「はいはい」
「俺とクラスは?」
「がっつり死亡フラグですけど、最推しカプ尊いが勝っているので不問」

 呆れた顔をする。
 と、すぐに何かに気づいた顔をして、部屋の扉を開けた。そこには今まさに扉を開けようとしたら開いてびっくりしましたな顔をしたクラスが立っている。
 さすが変態、さすがストーカー、ヒロインが来るの分かるんだ!

「クラス、お疲れ」
「うん。サク、お客様? 席外そうか?」
「いい、入って」
「でも」
「あれはクラスがいる方が喜ぶ」

 その通りです!
 遠慮がちにサクの隣に座るクラスを見て眼福ですとも! もっとくっついて!

「なんの話してたの?」
「こいつにとって周りの人間のほとんどが自分を殺してくるとかいう妄想の話だよ」

 それって私の頭がやばい人みたいだけど?
 幸いクラスはそう受け止めていないけど、ことクラスに対してはサクは彼女を徹底的に守ろうとしている。その姿勢はよしだ。

「死亡フラグの中、本編と外伝のカップルを成立させた私を褒めて欲しいんですけど」
「俺とクラスに関しては何もしてねえだろうが」
「クラスをウニバーシタス帝国に呼ぼうよって言ったの私なのに……」
「ありがとうございます」
「えへへ、クラスん可愛いねえ」
「きもいっつってんだろ」

 サクの言葉使いを嗜めて、その次にみてあげようよと言うクラスは本当女神だ。
 ん? みる?

「待って、その力使ったらだめで」
「大丈夫ですよ」

 と、いきなり二人手を繋いだ。全然目の前でいちゃついてくれて構わないけど、だめと言っても聞かずにそのままサクがじっと私をみる。クラスはただにこにこしてるだけだった。

「えっと?」
「あ、私が半分受け持つことでサクの負担を減らすんです。そうすれば繋がって力を使っても大丈夫だって」
「ほお?!」
「精霊王のお墨付きもらってるから、今こうしてみてもサクの身体に負担はないんですよ」

 なにそれ尊っ!
 本編でもやってくれればよかった! いや、今この世界線だから叶う話だった? てかもう二人こんな早くに結ばれてる時点ですごくない? いい世界線になったんじゃない?

「それでサク、どうだったの?」
「ああ、お前の言うとこの死亡フラグか」
「ええ是非」

 でも聖人の力使って未来ってみえたっけ? 未来の知識を仕入れることはできても一個人の未来をみていた描写はなかった。

「まあ話せる範囲になるけど」
「かまいません」

 個人の未来の詳細はそこまでみえないし言えるものでもない。その上で可能な範囲で教えてくれるらしい。

「お前が怯えている奴らの誰もお前を殺そうなんて考えてねえよ」
「それは嬉しい限り」

 お前暢気だなと呆れられた。前のフィクタは神経質だったけどなと加わり、私はひどいと嘆きながら返した。当然無視されるけど。

「お前、自分にとっての死亡フラグばっか気にしてるけど、相手にとっての死亡フラグ考えてんのか?」
「当然。マジア侯爵夫妻とか双子とかイグニス様のことなら、関わり持ったけど細心の注意を払ってて」
「それ以外も注意しとけ」
「え?」
「お前にとっての死亡フラグは相手にとっての死亡フラグになりえるって話だ」
「なにそれ文面だけだと怖いんですけど」

 もしかして本来の悪役に目覚めてしまう的な? 小説の中と同じく誰かを傷つけることはもうしたくない。

「あ、でもサクたん。私が道外しそうな時はスパッと斬ってくれって頼んであるから大丈夫」
「あの婚約者か」
「そうそう。婚約解消して逃げたくてたまらない今だけど、悪役になってしまった時の保険はきちんとかけてるわけ」
「はっ、何が保険だ。断られてるだろうが」
「まあそこはね……」
「いっそ結婚しちまえ」

 サクって意外とお節介というか面倒見いいのは小説で描かれているから知っているけど、なにも私に対して発揮しなくてもいいと思う。

「それは嫌だなあ」
「え、でも御二人は婚約してるんですよね」

 事実書面上はきちんと婚約している。でもあれって便宜上というか、死亡フラグを折る為な要素だった。

「偽装婚約みたいな?」
「え、でもマーロン侯爵は」
「クラス、黙っておけ」
「いいの?」
「それはこいつらが解決することで俺たちが言うことじゃない」

 そうだろ、と私を通り越した先にサクが声をかけた。
 あれノックなんて聞いてないよね、と嫌な予感がしつつもゆっくり振り返る。
 扉が開かれていて、そこには笑いをこらえるイグニスといつもより割り増し微笑んでいるエールがいた。
 これは怒らせたな。
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