雇われオメガとご主人様

筍とるぞう

文字の大きさ
上 下
27 / 98

第二十七話 ショッピング

しおりを挟む
◆◇◆◆

翌日、シグレさんと僕は、近くのスーパーへ行った。

僕は発情期が近い事もあり、昔から使っている革製のチョーカーをしっかりと首に巻いてきた。

スーパーへは、シグレさんが暫く引きこもっていた事もあり、予定通り歩きで行くことに。

しかも少しだけ遠回りをして行くことになった。

その間、シグレさんは僕に珍しい建物を紹介してくれたり、景色の良い場所など、色々と教えてくれた。


「――で、あそこが時々行くコンビニ。ちょっと珍しい外観でしょ?」


「ほんとですね。カラフルで可愛いし……なんか、ちょっと楽しそうです」


そのコンビニは本当に、あまり見かけないタイプの外観で、僕は思わず目を輝かせてまじまじと見てしまう。

すると、シグレさんは優しい笑みを浮かべて首を傾げた。


「そう?じゃあ今度行ってみよう。あのコンビニ限定のスムージーが美味しいんだよ。セイラもきっと気に入ると思うな」


「す、すむーじー……」


知ってはいるけれど、人生でまだお目にかかったことのない飲み物だ。

僕の家は決して裕福ではなかったので、スムージーのようなちょっとした贅沢品は基本的にNGだった。

だから、シグレさんと一緒に目にするものや建物は本当に新鮮に感じる。

そして、しみじみ思う。


(こんなにいいご主人様と一緒に街を歩けて、楽しくて……時間を忘れそう)


煌めく街並みを眺めながらそう思うと、この上ない幸福感に包まれる。

シグレさんに初めて会った時はまだ警戒心の方が強かったけれど、今ではすっかりそれも無くなっている。

それどころか、僕は……


(……っ)


本心に触れそうになり、慌てて息を呑む。

いや、本心なのだろうか。


(本当に、僕はシグレさんを……好きになった?)


お互い、αとΩである以上、本能的に惹かれ合うのは必然だ。

だからこそ、僕は時間をかけてシグレさんという人を知っていきたいと思う。

本能に翻弄されるだけじゃなくて、ちゃんと気持ちを確かめたいのだ。


(気持ち……)


気持ちを確かめようと思うと、どうしてもN高校の彼の事が浮かんできて、僕はフルフルと頭を振った。


(だめ……っ。今は、シグレさんの事だけを考えて……)


シグレさんに見えないよう、僕はそっと胸に手を当てる。

トクン、トクン、と、鼓動が手に伝わり、暖かな気持ちが胸に広がっていく。


(ああ……やっぱり僕、シグレさんの事……)


「……セイラ―?」


「ひゃあっ!?」


ひょいと顔を覗かれ、僕は大慌てで背筋を伸ばし、胸元から手を離した。

その様子を、シグレさんはぽかんとして眺めている。


「どうしたの?」


「い、いいい、いえ!なんでも、ないです……っ!」


「……?あ、ほら、もうそこがスーパーだから、到着だよ」


「あ……」


ドキドキしつつ前を見ると、そこにはいつも買い物に使っているスーパーがあった。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】どんな君でも君が好き~最強魔術師溺愛に溺れる∼

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:126

テイマー少女の逃亡日記

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:905

お探しの聖女は見つかりませんでした。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:23

嘘を囁いた唇にキスをした。それが最後の会話だった。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:74

意味がわかると怖い話

ホラー / 連載中 24h.ポイント:766pt お気に入り:0

異世界でショッピングモールを経営しよう

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,318pt お気に入り:1,695

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:319pt お気に入り:4,236

龍神様の供物

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:53

処理中です...