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第2章
109衝撃
しおりを挟むレオラムは話を聞き撃沈していた。
──はっ? 王子の秘宝ってなに?
意味がわからない!!
もうすでに王城に広まっているらしいので叫んでも一緒だと思うが、ものすごく叫びたい。
あと、普段正座なんてしないから、痺れてきて動けないんですけど?
前にいるエバンズは平然とした顔をしているから大丈夫なのかも知れないが、レオラムは結構限界だった。
今動いたら、足の感覚がほぼないから絶対にベンチから落ちる醜態を晒す謎の自信があった。
そうなると情けないので、話題も話題でしっかり聞きたかったのもあり、せめて話が終わるまではもう少しだけ我慢しようと今に至る。
そして、まだ話は続いているので、レオラムはもうしばらく我慢しなければならないようだ。
「やっぱり知らなかったんだ。ま、こういうこともあるわよね。どんまい」
「どんまいって。そもそもミコトと行動したから広まったのでは?」
「うん。それも運というやつよねー」
「よねーって」
ミコトはえへっと笑い、わざとらしく私は悪くないわよっと首を傾げて見せる。それ、絶対自覚あるでしょ?
「でも、まあレオラムみたいなタイプに宰相出張ってくるのもなんかわかるわ。レオラムは卑屈ってわけではないからイラッとはしないし、話してみると暗いってわけじゃないしわりかしはっきり発言するけど自己評価低いし、なんかモヤッとするのよね」
えっ、そんな風に思われているんだと地味にショックだ。
他の誰に言われてもそんなに気にしないが、仮にも友情を育もうと言った相手にそれはひどいのではなかろうか。
「モヤッて、それって良いことじゃないよね?」
ちょっと拗ねた気持ちで訊ねると、ミコトはすぱっと即答した。
「そうだけど、イラッととモヤッとは違うから。イラッとするなら関わらないけど、レオラムのは悪いモヤッとじゃなくてなんていうのかなぁ、こっちが何かしたら面白い方に変わるんじゃないかって楽しみも混じってるのよね」
面白いって……。
やっぱりひどい。レオラムはじとりとミコトを睨み上げた。
「やっぱり良いことには聞こえないけど」
「まあ。まあ。不快ではなく楽しみも混じってるから、関わりのある人に与える印象は悪くないってことよ。それに私の場合は殿下の顔を鑑賞できる機会も増えるし、レオラムと仲良くなるのはいろんな意味で美味しいからいいじゃない」
「いいじゃないって……」
最後はミコトらしくて、レオラムは苦笑した。
殿下のことを含め、レオラムと仲良くすることはやめないぞと自分と話しているようで、エバンズたちを牽制しているのだろう。
その証拠に、ミコトはレオラムではなくエバンズの方を見て言っている。
しっかり意図は伝わったのだろうエバンズが、こほんっと咳をした。
「仲良くされることに反対はしません。むしろ、それでお二人のお気持ちが和やかになるのならば大歓迎です。ただ今回はですね、お二人の話の内容ややり取りが問題なのです。自覚はありませんか?」
「ええーっ。楽しく話してただけなのに?」
「やりとり? うーん。スカートのところはちょっとあれかなとは思うけど」
男からしたらというのもあるが、内容は誰が聞いてもちょっと照れてしまうような、居心地が悪いけど気になるというような話ではあったと思う。
訓練も終わったし休憩がてら話しましょうと、ミコトがスカート丈について熱弁しだしたので聞いていたのだが、こちらの女性は冒険者などは様々な格好をすることはあるが基本生足を見せないことに対して、向こうは結構見せることが平気なのだそうだ。
これくらい、と自身のスカートを上げようとするのを嗜めながら、向こうの服装や水着というものがあることなど、水に入るとなると途端に下着同然のような格好も平気になるとか、カルチャーショックだ。
世界が変われば常識が変わる。同じ世界でも、地域や家庭で差異はあるものだが、やはり異世界情報は衝撃だった。
ミコトがスカートを上げた時はレオラムは慌てて下げたりと、周囲はやきもきしたという話なら、レオラムは止めた方なので矛先がこっちに向くのはどうかと思う。
ミコトが発端なのに、エバンズの視線はレオラムに向いている。
レオラムは居心地が悪くて、つつつっとわずかに視線を逸らした。
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