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第1章
50冒険者ギルド①
しおりを挟むレオラムは王都にある冒険者ギルドにやってきていた。
あらゆる職種の仕事が常に募集され、酒場と宿が併設されており、どの時間帯も常に人の出入りが多いギルドである。
夜は冷え始めたとはいえ、日中はまだ暑い。
勇者には道中もあれこれ話しかけられ、それに答えるのが面倒で逆に質問していたら、意外と会話が成り立つようになっていた。
一年一緒にいたのに、パーティーを抜けてからの方が話しているのがなんとも皮肉な話である。
その中であれこれ話していると面倒になって敬称を付けるのをやめたら、なぜか機嫌がよくなったりと、勇者のご機嫌ポイントはよくわからないが、威圧されるよりはマシだろう。
レオラムは、大人気の金髪碧眼美形勇者を見上げた。
曇り空の中僅かにさす光を浴びて金の髪が輝き、切れ長の水色の瞳は物語に出てくるような王子そのものだ。
レオラムにとっては勇者は勇者で、カシュエル殿下の美貌を常に目の当たりにしている今は、その容姿をどうとか今更何も思わないが美丈夫であるとは思う。
「今更ですが、アルフレッドもここに用が?」
「ああ。S級向けの仕事があるのかどうか、あとは聖女同伴にちょうどいい仕事があるかどうかだな。城の方でも当然考えているだろうが、念のためな」
こういうところは、さすがパーティーのリーダーである。
同パーティーだった時は扱いについては良いものではなかったが、危機管理に関しては徹底していたので仲間としてその恩恵は受けていた。
全員の命を預かる者として、あらゆる事態に備えて動いている姿と最強であることは、人が集まる要素である。
「へえ」
「なんだ?」
「そういうところはすごいなと」
「おまっ」
素直に思ったことを告げると、そこでアルフレッドは声を上げ、ああーっと右手で顔を隠した。
何をしているのだかと情緒不安定な勇者は放っておき、レオラムは力を試してるのかと思える重めのギルドの扉を押す。
背後で、「そういうところが」とかぶつくさ言っているが、レオラムは中へと一歩踏み入れた。
あらゆる情報の収集場でもあるので、ここから己の得意分野で活躍できる地方への仕事へと向かう者もいる。
あとは王都を通す仕事は評判に影響がでるので、ぼったくられることも少ない。当然、危険は付き物ではあるが、王都のギルドで活躍できることは、冒険者にとっても憧れであった。
その頂点とも呼べる勇者は、当然目立つ。
今は抜けていてもパーティーメンバーであり通り名もあったレオラムもそうで、まして騎士を連れているとあって、みんなの視線が一斉に集まるのがわかった。
「ここはいつ来ても盛況という感じだな」
「多種多様の情報が手に入りますから余計ですよね」
そういった視線に慣れたレオラムたちはいちいち構っていたら仕方がないので、そのことには触れず人混みの中の方へと歩みを進めた。
本当は騎士たちは外で待機していてもらいたかったが、中でなにかあっては困るので是非とも共にと言われ、少し下がった位置にいる。
彼らの役目は、レオラムの護衛。可能な限り近くにいたいと訴えられては、王城に厄介になっている身では否と突っ撥ねることはできなかった。
さすがに手続きをする間は離れていてもらいたいので、ここで声をかける。
「手続きをするので、他の方の邪魔にならない場所で待っていてもらえますか?」
一歩距離を詰めて見上げると、スキナーとマクベインは心得たと快諾した。
「わかりました。何かあればお声かけください」
「私たちのことは気にせずしたいことをなさってください」
丁寧に礼を取られ、彼らは姿勢良く壁際に立った。王都はまだましだが、荒くれ者も多くいる冒険者の中に、汚れひとつない騎士服姿は目立って仕方がない。
だが、彼らは全く臆した様子もなく、堂々とした姿でレオラムの方を注視していた。
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