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第1章
51冒険者ギルド②
しおりを挟むレオラムと騎士たちのやり取りを近くで見ていたアルフレッドが、ぐっと肩に手を置いてきた。
「ふーん。肝が据わってるよな。さすが近衛騎士ってところか」
アルフレッドの中でレオラムの存在がどう変わったのかは知らないが、馴れ馴れしい態度は苦手なのでそっと距離を取ると、ちっと舌打ちされた。
それでも懲りずに乗せてくるので、ギルドまで一緒に来るというノルマはこなしたとレオラムは別れの挨拶くらいはしとくかと口を開いた。
「任務に忠実だとは思います。では、あっちのカウンターに行きますので。お元気で」
勇者にはいちいち断りをいれなくてもいいだろうが、一応、道中は一緒だったからとレオラムなりの歩み寄りであったのだが、思いっきり顔をしかめられる。
「はっ? 何を言っているんだ。帰りも一緒だからな」
「えっ? なんでですか?」
「なんでって、また城に戻るだろ? 俺もしばらく滞在しなければならないし、帰る場所が一緒なのだからいいだろう」
いいだろうって。
何度も言うが、今までのアルフレッドはレオラムを嫌っていた態度をとっていたし、誤解でもなく嫌われていたはずだ。そのため互いの精神衛生上、極力プライベートは関わらず必要最低限でしか共に過ごすことはなかった。
なのに、今は共にいる必要がないのに一緒に行動しようとする。
理由なんてわからないが、どうせアルフレッドもレオラムが何を言ってもよほどの時間のズレがない限りそうするのだろう。
やっぱり権力や自分に自信のある人は振り回すことに慣れすぎていて、レオラムはどうしても流される側になってしまう。
「…………」
言葉もなく黙っていると、アルフレッドは言い含めるように声を張った。
「絶対一緒に帰るからな。先に終わったからと勝手に帰ったりするなよ」
「……」
「レオラム。わかったな」
「……わかったけど」
全く納得いってはいないけれど、最終的に面倒くさくなったレオラムは頷いた。
不服が声音に現れるが、取り繕うこともしなかった。強引さは面白くなくて、敬語を使う気もなくなってきた。
その態度を生意気だと怒ってくれないかなと思ったけど、アルフレッドは何も気にしていなさそうに念を押してくる。
「絶対だからな」
びしりとレオラムの眼前で指を差し、自身が用のあるカウンターへと向かって行った。
レオラムはそれを見送り、小さく溜め息をついた。
イレギュラーなことはあったが、こうしてギルドに着いたのだしと気持ちを切り替える。
受付に向かい、勇者からの入金を一応確認しそれを振り分け送金する手続きをした。
王都のギルドは初めから話が通じやすく風通しが良いので、レオラムも利用しやすい。なので、必要なやり取りは王都ギルドでするようにしていた。
受付嬢とやり取りをしていると、ぬぼぉと熊みたいな男が階段から口髭を撫でながら降りてきた。
レオラムに気づくとこっちまでやって来て、彼女の後ろから片手をカウンターの上に置き乗り出してくる。
茶の白髪交じりの男は、この王都のギルド長であるブランドンだ。
「よお。こっちにもあっちにも連絡がないからどうしてるのかと思った。元気だったか?」
「はい。イレギュラーなことが起こりまして、本来なら戻っているはずだったのですがまだ王都にいます。今日は確認と手配をしに来ました」
「そうか。で、イレギュラーとはあそこでやたらと華のあるやつらのことか?」
そこでカウンター越しにブランドンは、どうしても存在感を放つ護衛二人を見た。
「まあ、それに関係しています」
「近衞騎士とは豪華なメンツだな。おおっと、もしかして勇者も一緒か」
こちらを見るアルフレッドの存在に気づいたブランドンは、考えるように無精髭をざりざりと撫でながら、にやにやとレオラムを見た。
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