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第1章
66情の色*①
しおりを挟むシーツの上に押し倒され、指を絡められ覗き込まれのしかかられる。
目を丸くして見上げると、ひっそりとカシュエル殿下は微笑んだ。
「レオラム」
低く、それでいて鮮やかに響く声で名を呼ばれ、レオラムの心臓はとくりと鳴る。
真っ直ぐにレオラムへと届けとばかりの声音は、自分だけが欲しいのだと、必要だと訴えられているようだ。
最初は勘違い、思い上がりだと思ったそれらは、毎日注ぎ込まれては勘違いでは済まされない。さすがに、レオラムもそれには気づいていた。だからこそ、絆され流される。
カシュエル殿下のそういった熱は、自由を制限されるようで息苦しいと思うのに、心地よさを感じて困ってしまう。
「殿下……」
「名前を呼んで」
こつんと額を合わせ吐息がかかる位置で懇願され、レオラムは宝石のような双眸と睫毛の先までもが美しい王子の視線に囚われた。
燃えるような熱い眼差しでレオラムを射抜きながらも、どこか頼りなげな哀しい表情にも見えて、レオラムは戸惑う。
「カシュエル殿下」
「今は二人きりだよ」
「……カシュー」
「そう。忘れてはいけない」
絡まる指に力が入りきつく両手を拘束されたまま呼び直すと、そっと顔が近づいて唇を奪われた。
いつもなら頬や鼻先へと戯れるようにレオラムの緊張を解すようなキスから始まるのに、いきなりのそれにレオラムは目を見張る。
柔らかな感触はいつもと変わらないのに、順序だとか、いつもはとかそんなことが気になった。
「はぁっ」
「レオ」
息継ぎもろくにさせてもらえず、下唇を食まれた。すぐに舌が差し込まれ舐めまわされ、口内を支配され角度を変えてくる執拗なキスに翻弄される。
いつもと違う、よくわからない迫り来る圧から逃げなければと思うのに、快楽に弱い身体はあっという間に熱くなっていく。
「んぅっ」
「ね、レオ、逃げてはいけない」
性急な追い上げに小さく首を振ると、上唇を噛まれかちっと歯がぶつかる。
キスの余韻に濡れた唇がいつもより赤く、真剣な目で言われ、どくりと心臓が音を立てる。艶めかしく激しい情動を向けられ、こくりと喉を鳴らした。
「逃げようなんて……」
「でも、馬車を手配した」
「それは、」
レオラム的にはいつ手配しても大丈夫なようにしておいて欲しいと伝えたくらいであるが、先ほど嗜められたばかりなので、カシュエル殿下の言い分も理解はできる。
確かに待ってと言われていたのに、聞かずに行動したことは悪かったとは思う。
言葉を濁すと、両頬を撫で無遠慮に服を剥ぎ取られた。
「レオラムが帰りたいことへの気持ちをないがしろにしたいわけではないんだよ。でも、心配なんだ」
裸にされ目を細めて腕を労わるように撫でていた手が、お腹へと移動する。
するすると這い上がっていく長い指が、小さな乳首をくにくにとこねきゅっと摘む。そのまま、濡れた唇が小さく開き、ぱくりと音を立ててちゅるっと吸われた。
「あっ」
声を出すと、さらに快感を引き出そうと指は這い回り、唇はあっちこっちとレオラムの弱い場所を辿りひとつひとつ確かめるように吸って痕を残していく。
身体が疼き出し、たまらずもぞりと足を動かすと首筋に強く吸い付かれた。ちくりと刺すような痛みの後、ざらりと舐められてレオラムはのけぞる。
「気持ちいいよね。私に触れられて反応してる」
カシュエル殿下も全て脱ぎ捨て、整った身体のラインを惜しげもなく晒し、その上でそり勃ったものを擦り付けてきた。
ごまかしきれない、むしろ隠すつもりのない高ぶりが二人の肌をかすめ、それだけで煽られ先端からじわりと雫が溢れる。
腰を揺らされ、互いの肌が絡み合うように抱きしめられ、頬を上気させながらレオラムは小さく息を飲んだ。
気持ちがいい。だけど、違う。
いつもなら多少の焦らしはあるがどれも気持ちが良いように触れてくれるのに、ゆっくりと腰を撫でたりするだけで物足りない。
直接触れられなくてレオラムが腰を揺らすと、くすりと優美に微笑んだ王子はぷくりと硬くなった乳首をぐにっと押しつぶしてきた。
「後でね。余計なことを考えないでいいよう、もっと私なしではいけないようにしようね。ほら、腰を上げて」
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