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第1章
67情の色*②
しおりを挟む互いの高ぶりを触れ合わせ、カシュエル殿下は艶かしい息をつくと後ろに手を滑らせた。レオラムの肉つきの薄い尻をきゅっと持ち上げると、すっと縁を撫でられる。
カシュエル殿下の手練手管に酔わされてきたレオラムだが、お尻に触れられるのはまだ抵抗がある。
だけど、少しずつ丁寧に快感を感じる場所を探し出されいじられてきたそこは、縁を撫でるだけでぞわりと嫌悪とも期待とも言えない感覚に襲われる。
香油を垂らした長い指が、つぷりと入り込んできた。
違和感は始めだけで、後ろで指が動くと同時に前も触れられ、すぐに思考は蕩けていく。
「ほら、もっと気持ちよくなろう。レオラムの好きなところはここ」
「あっ、……ん、そこは」
「うん。かしこいレオラムはここが気持ちいいって覚えてるよね。もっとさすってって腰が動いてる」
「それは前が気持ちよくて」
「そうなの? じゃ、前を触るの止めて後ろだけで気持ちいいって覚えていかないと」
「それは、ちょっと、いや、かなと」
「嫌じゃないよ。レオのここは私を受け入れて気持ちよくなるのだから」
惚けていた頭で会話をしていたが、最後のカシュエル殿下の言葉で覚醒する。
──受け入れて?
えっ、受け入れるって言った?
半ば閉じかけていた瞼を開けて視線だけで問うと、にっこと眩しいほどの笑みを浮かべられた。
ちゅっと、今更のように頬や瞼へと可愛らしいキスが送られ、最後に唇を奪われる。
息ごと奪うようなキスの後、指の数を増やされ、これからくる太さを教え込むように丁寧に広げられていく。
互いのものを押し付け合い、くちゅりと水音が部屋の中に響き、行為の方へと思考が引きずられる。
違和感が気持ちいいに変わり、物足りなくなって、この先に進みたいのか進みたくないのかそれさえも判然としない。
「レオ。私を受け入れて」
「ああ、たくさんこぼして。かわい」
「ここは私の手が気持ちいいと言っている」
「レオが欲しい」
「レオも欲しくない?」
そんな中、高ぶりを握られ昇りつめるには足りない緩さで上下に動かされ、耳元でたくさん甘く囁かれ口づけを降らせながら、着々と後ろを解される。
身体は受け入れる準備ができつつあり、あとは心だけ。それも、ぐらぐらと揺れている。
「ほんとうにするの、ですか?」
日々、身体を重ねてそれなりのことをしていて、はっきり拒否もせず、最終的に行き着くそれを考えなかったなんて言わないし、今更知らないふりをするつもりはない。
気持ちよいのは好きだし、情を注がれ熱を分けられ大切に思われていると感じさせられ、カシュエル殿下にならとはどこかで思ってもいた。
別に大事にとっておきたいとかでもないし、そもそも誰かとこういう行為をするとも思っていなかった。思っていなかったが、同性であり奪われる側というのは意外というか、やはり衝撃はある。
それでも性別というよりは、大事に思ってくれているだろうカシュエル殿下にならいいかって、欲しがってくれるのなら惜しむものでもないかと思うのだ。
だけど、いざそれを示されると緊張する。
今まで丁寧でゆっくりだったのに王子らしくなく性急な気もするが、どのようなタイミングであったとしても、何か思うことがあってのことだとしても、注がれる情は依然と変わらないように思えた。
「レオが欲しい。愛してる」
「あっ」
言葉とともに、王子のものを当てがわれる。
「レオ。いいよね?」
焼き焦がすような視線に、このまま捕らわれてみたくなった。
何より、愛してるの言葉がレオラムを拘束する。
態度で示され言葉で示され、向けられた情の色がはっきりと見え、ぐらぐら揺れていた気持ちがゆっくりと凪いでいった。
このまま身体を預けても後悔はしないとはっきり思え、レオラムは恥じらいながら小さく頷いた。
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