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生七話 ロリコンと秘密の部屋の鍵

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「痛たたたたっ!」

 ロリコン殴りすぎて、拳の皮がめくれて血だらけになっている。
 あんな奴に綺麗な手が傷物にされてしまった。

「はっ‼︎ ヤバイ‼︎」

 今は手の心配よりも先にする事があった。
 ロリコンでも殺したら犯罪になる。客が来る前に死体を早く隠さないといけない。
 冷蔵庫だと腐るので、フライパンに冷凍庫になるように命じた。

「うぐっ、うぐっ!」

 ロリコンを触るのは嫌だけど仕方ない。
 ズルズル引き摺って、大型冷凍庫の中に持ち上げ入れ込んだ。

「ふぅー、これで誰にも見つからないぞ♪」

 包丁小にして、絶対に見つからない左胸の中にしまった。
 死体が見つからなければ何も問題ない。完全犯罪成立だ。

(さてと……)

 多分、個人経営だから誰も雇っていない。
 とりあえず入り口の扉に臨時休業の札でも掲げていれば、時間稼ぎは出来る。
 必要な物を見つけたら、私もさっさとこのロリコンホイホイハウスから脱出しよう。
 店の奥に見える扉に向かった。

「んっ、んっ、あれ? 鍵が掛かってる?」

 取っ手を掴んで前後に押して引いたけど、扉が開かない。
 扉に鍵穴があるから、ロリコンが常に鍵を閉めているみたいだ。
 余程大事な物か、見られたくないものを隠しているらしい。
 これはもう見るしかない。薬貰う、ついでに全部処分してやる。

 鍵を探してカウンターの周りを調べてみた。
 鍵は無かったけど、お金があったので、迷惑料として財布に銀貨二枚だけ貰っておいた。
 全部盗んだら失踪事件から強盗事件になってしまう。迂闊な真似は出来ない。

(うーん、やっぱりロリコンが持ってるよね)

 まあ、探して見つからないなら、肌身離さず持っていると考えるのが普通だ。
 胸から包丁小、冷凍庫と流れるように取り出して、冷凍庫の中のロリコンを見た。

「たたたたた助けて……!」
「えっと、鍵、鍵……」

 ガチガチ歯を鳴らして震えるロリコンと目が合ってしまった。
 だけど、気にせずに服のポケットを調べていく。

「あっ! あったあった!」
「待って——」

 バタン! 服の内側に四本の鍵がぶら下がっている鍵束を見つけたので、冷凍庫の扉を閉めた。
 これで薬を取りに行ける。適当に鍵穴に鍵を入れて、どれが正解か調べていく。
 ガチャリと二本目で正解の鍵を引き当てた。扉を開けると……

「うわぁー、何これ⁉︎」

 何か知らない骨とか草とか皮とか角とか、とにかく沢山の素材がテーブルや棚に乱雑に置かれている。
 コンビニぐらいの広さしかないけど、この中から探し物を見つけるのは苦労しそうだ。
 ロリコンを釈放して訊いた方が早そうだけど、偽の薬を渡されたら大変だ。
 ここは覚えている錠剤の形と色と味で探してみよう。

「だ、誰ですか……?」
「はっ‼︎ 誰⁉︎」
「ひいいい!」

 誰もいないと思って油断した。怯えるような女性の小さな声が聞こえた。
 いくつかある白い布カーテンの仕切りの向こう側に人影が見える。
 仲間、敵、奥さん、恋人、従業員と、色々頭に浮かんだけどやる事は一つだ。
 姿を見られたらやるしかない。ラナさん助けてないのに捕まるわけにはいかない。
 包丁中を二本構えると、カーテンに見える人影の動きを警戒しつつ進んでいく。
 バンダナと一緒だ。女でも容赦しない。邪魔するなら倒すしかない。

 バサァ‼︎ 勢いよくカーテンを捲った。

「動くなあ‼︎」
「きゃあッ‼︎ こ、殺さないでえ‼︎ 何でも言うこと聞くから‼︎」
「……へぇっ?」

 カーテンの向こう側には裸の少女が顔を守るように立っていた。
 艶のある紫髪のショートヘアで、顔立ちと体型は中学二年生ぐらいに見える。
 胸は高校生二年の私よりも明らかにデカい。Bはあると思う。許されない事だ。

 そして、手足には鉄の枷(かせ)を付けられ、枷の間には鎖が繋がっている。
 あのロリコン、もう許されない。家に秘密の奴隷少女を飼っていた。
 しかも、奴隷少女で物足りないからと、ペトラまで飼おうとしていた。
 これはもう骨の髄まで完全に凍らせるしかない。

「こほん、もう大丈夫だよ。私、俺はロリコンの仲間じゃないから。すぐに家に帰してあげるからね」
「あぅぅ、あぅぅ……」

 とりあえず、ロリコンの始末は後回しにして、裸の少女を助けるのが先だ。
 胸に包丁二本をしまうと、軽く咳払いして笑顔で近づいていく。
 少女は怯えているけど、多分、鍵束の残りの鍵が少女の手足の枷を外す鍵だと思う。
 気にせずに手の枷を外して、次に跪いて足の枷を外した。

「これでもう自由だよ。好きな所に行ける。君は自由だ」
「あ、ありがとうございます。……でも、私には帰る家も場所もないんです。あの男に小さな頃に拾われて、今日まで仕事を手伝って生きてきました。うぅぅぅ……し、仕事以外もあの男が望む事は嫌な事も全部しました」
「……ちょっと待てて」
「うぅぅ……?」

 裸でどんな嫌な事をさせられていたのか聞かなくても分かる。少女が思い出して流す涙だけで充分だ。
 話を止めさせると左胸から包丁小、冷凍庫と取り出して、蓋を開けた。
 そして、中に見えるロリコンの顔を全力で殴りつけた。

「セィッ‼︎」
「ごがぁ……っ!」
「痛っっ、硬いなぁー!」

 ちょっと凍っているのか殴った拳が痛い。
 でも、ロリコンはまだ生きている。
 少女の気が晴れるまで殴れる命は残っている。

「泣くよりも怒った方がいいよ。そっちの方がずっといい。この男が嫌いなら、好きなだけ殴ればいい。言っただろう? 君は自由だって」

 もう一本包丁小を左胸から取り出すと、フライパンに変えて少女に渡した。
 涙の数だけ強くなれるなら、もう君は無敵だ。何も怖いものはない。
 さあ、二人で共犯者になろう。
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