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後日談
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「アーシュお義姉様。どうかなさいましたか?」
リラがエドワルドと共に現れ、アシュリーに声を掛ける。
「リラ様。大した事では有りません。少し場の雰囲気に気圧されてしまっただけですわ。これ程規模の大きな夜会は初めてですから。年越しの夜会でも、規模が大きく人が多いと思っていましたが、社交シーズンは比べ物にならない程に人の数が多いのですね」
地方では、近隣の貴族が集まりはするが、密集地では無いので、多くても数十人規模が殆どだ。
例外として、あの顔の広い子爵が主催する時は、百人近く集まる事も有るようだが、地方でそれ程集まる事は無いだろう。
その為情報収集しようにも、地方の他愛無い情報ばかりで、王都の情報が入ったとしても、既にその流行が終わっていたりする事が多々有る。
地方の貴族で王都の最新情報を持っているのは金持ちか、王都に強力なツテが有るかだろう。
アシュリーからすれば、王都はお伽噺のような場所だったのだ。
それが今や、国の中枢を担う家柄に嫁ぐ事になるとは、世の中何が起こるか分からない物だと、アシュリーは思っている。
「アーシュには、私もリラも居るのだから、大丈夫だよ。それに何より、国王夫妻が私達の婚姻を認めて下さっているのだから、それに否を唱える事は、家臣として有るまじき事だよ」
それは既に、婚姻許可証を手にしている事を、暗に教えているような物だ。
「それは知りませんでした。おめでとう御座いますジーン兄様、アーシュお義姉様。陛下のご意向に逆らう者は、エヴァンス家の名に懸けて、徹底的に排除して下さいませ。わたくしも、微力ながらお手伝いさせて頂きますわ」
リラがジーンの言葉に、追い討ちを掛けるように、遠巻きながらも聞き耳を立てていた貴族達に聴こえる声で言う。
勿論、外用の無表情で。
だがそれは、聞き耳を立て、こちらを窺っていた貴族達にとっては絶大な威力を放っていた。
リラにその気は無かっただろうが、それはリラを溺愛しているクルルフォーン公爵も、確実に敵に回ると宣言しているような物だ。
リラが手伝うと言うのに、静観だけするようなエドワルドでは無いのだから、当然の事と言えるだろう。
「有難うリラ。勿論、エヴァンス家の名に恥じないように、全力で排除する事を誓うよ。私とて、漸く見付けた理想の花嫁に逃げられたくは無いからね。国王夫妻が来たようだ。ファーストダンスが終わったら、私達も踊ろう」
ジーンはアシュリーの手袋に包まれた指先に、軽く口付ける。
周囲から、物凄い嫉妬と憎悪の視線を向けられるが、アシュリーはジーンの甘く優しい視線と微笑に為す術も無く、真っ赤に顔を染め上げるだけだ。
「はい。宜しくお願い致します」
アシュリーはジーンと初めて踊った時の事を思い出しながら、火照った顔でそう答えた。
リラがエドワルドと共に現れ、アシュリーに声を掛ける。
「リラ様。大した事では有りません。少し場の雰囲気に気圧されてしまっただけですわ。これ程規模の大きな夜会は初めてですから。年越しの夜会でも、規模が大きく人が多いと思っていましたが、社交シーズンは比べ物にならない程に人の数が多いのですね」
地方では、近隣の貴族が集まりはするが、密集地では無いので、多くても数十人規模が殆どだ。
例外として、あの顔の広い子爵が主催する時は、百人近く集まる事も有るようだが、地方でそれ程集まる事は無いだろう。
その為情報収集しようにも、地方の他愛無い情報ばかりで、王都の情報が入ったとしても、既にその流行が終わっていたりする事が多々有る。
地方の貴族で王都の最新情報を持っているのは金持ちか、王都に強力なツテが有るかだろう。
アシュリーからすれば、王都はお伽噺のような場所だったのだ。
それが今や、国の中枢を担う家柄に嫁ぐ事になるとは、世の中何が起こるか分からない物だと、アシュリーは思っている。
「アーシュには、私もリラも居るのだから、大丈夫だよ。それに何より、国王夫妻が私達の婚姻を認めて下さっているのだから、それに否を唱える事は、家臣として有るまじき事だよ」
それは既に、婚姻許可証を手にしている事を、暗に教えているような物だ。
「それは知りませんでした。おめでとう御座いますジーン兄様、アーシュお義姉様。陛下のご意向に逆らう者は、エヴァンス家の名に懸けて、徹底的に排除して下さいませ。わたくしも、微力ながらお手伝いさせて頂きますわ」
リラがジーンの言葉に、追い討ちを掛けるように、遠巻きながらも聞き耳を立てていた貴族達に聴こえる声で言う。
勿論、外用の無表情で。
だがそれは、聞き耳を立て、こちらを窺っていた貴族達にとっては絶大な威力を放っていた。
リラにその気は無かっただろうが、それはリラを溺愛しているクルルフォーン公爵も、確実に敵に回ると宣言しているような物だ。
リラが手伝うと言うのに、静観だけするようなエドワルドでは無いのだから、当然の事と言えるだろう。
「有難うリラ。勿論、エヴァンス家の名に恥じないように、全力で排除する事を誓うよ。私とて、漸く見付けた理想の花嫁に逃げられたくは無いからね。国王夫妻が来たようだ。ファーストダンスが終わったら、私達も踊ろう」
ジーンはアシュリーの手袋に包まれた指先に、軽く口付ける。
周囲から、物凄い嫉妬と憎悪の視線を向けられるが、アシュリーはジーンの甘く優しい視線と微笑に為す術も無く、真っ赤に顔を染め上げるだけだ。
「はい。宜しくお願い致します」
アシュリーはジーンと初めて踊った時の事を思い出しながら、火照った顔でそう答えた。
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