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第五章 残酷な世界
232 根をのばす
しおりを挟む「……カレンお前、いったい……アルフレッドに……それ、何を、……されて……?」
執行官に付いて緊急転移し、最初にカレンを見つけた時は全身に及ぶその無数の裂傷に気を取られて、エディは気付かなかった。
だけど冷静にその無残な姿を観察すれば。
カレンがアルス国王アルフレッドに王城に連れて来られ、そしてここで何をされていたかなんて、そんなことは一目瞭然で。
柔らかなシフォンのドレスは夥しい血液で赤黒く染まり、無残に破られて乱暴に乱されていた。
そして破られて露出させれた肌には、自分がつけた記憶のない無数の跡が残されていて。
エメラルドの瞳は、怒りに染まる。
「……エディ、私は大丈夫だから、ほら剣を下げて?」
カレンはそう言って執行官とエディの前に立ちはだかって防御魔法をアルフレッドに展開し守り続ける。
その顔色は青白く酷く憔悴しきっているし身体はカタカタと小刻みに震えていてエリクサーを飲ませたのに、今にも倒れてしまいそうだった。
「……カレン? アルフレッドにお前が今展開している防御魔法を今すぐ解除しろ、その糞野郎を……殺せない」
「それはちょっと……出来ない相談かな? アルフレッドは絶対に殺させないよ? エディ、アンゲルス二人とも駄目だよ?」
「カレン様、早くその防御魔法解除して下さい、そんな状態でずっと魔法を展開し続けるなんてお身体にに障ります」
エディと執行官がアルフレッドを睨み付けて、今にもぶっ殺さんとばかりに臨戦態勢を維持していて、とてもおっかない。
一国の国王を気軽に殺そうとするなんて野蛮な連中である。
とりあえずその剣を下げろ?
しかもエディお前この国の騎士団長だろ?
そこに躊躇はないのかと問いただしたいが。
うん、全く無さそうである!
それになんか……エディの雰囲気があれだね?
解除しろと二人に言われたところでこの防御魔法は解除するつもりは私にはない。
決めたんだ。
もう誰も私の為に殺させないし、殺さない。
「まあまあ、二人ともちょっとは冷静になろ? 私のこの血はただの魔力暴走の結果であって……」
「カレン? いいから、そこを退け!」
「それは出来ないかな? エディこそ、こんなことやめよ?」
「……お前がどうしてそいつを庇うんだよ! そいつがお前に何をしたのか……わかってんだろ?!」
「アルフレッドを庇うつもりなんて全然無いんだけど、この特権のせいで人間が死ぬのをもう見たくないんだよね、私! そしてこの制裁は自分でするから二人は下がって」
「……わかりましたカレン様、ここは下がりましょう。ですから今すぐ魔法を解除して下さい、顔色が良くない早く治療を」
「……約束、ね?」
「ええ……」
展開していた防御魔法を解除する。
執行官は約束をちゃんと守ってくれるから。
……そして世界が、暗転する。
「っカレン……!」
死の淵で私は気づいた、青天の霹靂のよう私から溢れ出したのはマナだったと。
だから私は、いま生かされている。
マナは命の源だから。
ただ、世界樹が根をのばし私を死の淵から救い上げた時に聞こえた気がするんだよね?
『お前だけ楽になるなんて狡い』って。
狡いってなんだよ、ずるいって?!
お前、やっぱり私の事嫌いだろ?!
私もお前なんか大っ嫌いだよ!
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