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第五章 残酷な世界
226 可愛いお嬢様
しおりを挟む「まじか……」
自分でやっといて言うのも何だけどこれはすごい。
そう、ミアは思った。
妹の恋を応援する為に、どうせならば可愛い格好で彼のもとへ行かせてやろうと姉御肌のミアは考えてカレンの衣装部屋を漁っていた。
そうしているとたまたまカレンの専属メイドリゼッタがやって来て、ならば私もお手伝い致しましょう! と意気投合。
カレンを二人で美しく磨き上げて、一応用意されていた貴族令嬢の普段着のドレスを嫌がる本人に着せて、いつもはしないヘアメイクをすれば。
……そこには傾国の美姫がいた。
姉のミアは、確かに顔は可愛いと子どもの頃から思っていたが、ここまでとは思っていなかった。
そしてリゼッタは、以前にドレスをカレンが着用したときは軽く唇に色を乗せるだけで化粧というほどの事はしなかった。
だが今回つい張り切って薄くだが化粧まで施したら……!
「カレンお嬢様……なんて……お美しい……!」
リゼッタがカレンのその出来上がりに感嘆の息を漏らし、カレンのその美貌を褒め称える。
だが、褒められた本人は。
「なんか……え、ケバくね? というか何故私はドレス着せられてるの?! お姉ちゃん暇なの? というかリゼッタまで……」
嫌そうに鏡に映る自分を見てそんな感想を吐くから。
そういやコイツはこんなんだったなと、姉のミアは先程までの感動を打ち消して馬鹿な妹に言い聞かせる。
「カレン、あんた顔だけは可愛いんだからその言動をちょいと抑えて可愛らしい女の子の態度とってみ? アルスの男って庇護欲そそる女が好きっぽいしあんた向きなのよ、だからあんたの態度次第じゃモテモテになる! がんばれ!」
「ええー……それ無理ぃ……!」
「無理でもやれ馬鹿妹よ! 彼氏を喜ばすんだよ! あの優良物件絶対に逃がすんじゃねぇぞ?! あの彼氏逃がしたらあんたなんて一生独身で孤独死だからな! 普通の男じゃあんたみたいな馬鹿の面倒はみれないんだから!」
「そんなんで、喜ばねぇだろ……」
ぷくーっと頬を膨らませて不貞腐れるカレンのその姿は大変愛らしくて、あの騎士の彼氏もコレにやられたんだろうなと、恋愛経験豊富なミアには容易く想像が出来た。
そしてカレンは嫌そうにしながらも、その左手に婚約指輪をつけて少し頬を赤く染めてエディの元へ向かう。
お昼を過ぎたこの時間ならきっと夜の護衛に備えてガルシア公爵家から貸し与えられた部屋で仮眠しているのだろう。
ふんわりとドレスの裾を揺らしポテポテと部屋から出ていくカレンは完全に恋する少女のそれで、ミアは素直じゃない妹の後ろ姿を見送った。
部屋を出た貴族令嬢のような姿のカレンに、部屋の外で護衛していたイーサンとエルザが驚いて目を丸くする。
「か……カレン様?! そのドレス……うわ、可愛い……」
「っカレン様お美しい! あれ、どちらに……?」
「ん……ちょっと、エディの所。話、あるから……、えと、今は部屋で仮眠してるよね……?」
もじもじと伏せ目がちで頬を赤く染めてカレンがそう言うからイーサンとエルザの二人は、直ぐ様その雰囲気を察知する。
「はい、オースティン団長なら仮眠なさってると思いますよ、お部屋までご案内いたしますね!」
最近カレンとエディの間には大きな溝のようなものが出来ているし元気もないから心配していた。
それは仕方のない事だと思ってはいたが、やっぱりカレンが二人は心配だったので、美しく着飾ってエディの所に自分から行くと聞いてとても嬉しくなった。
カレンには笑っていて欲しいと心の底からそう思っていた、オスカーの事もあって最近は殆ど笑わなくなったカレンを本当に二人は心配していたから。
自慢の可愛い英雄のお嬢様。
カレンの護衛騎士をするのは二人の誇り。
なにも知らないイーサンとエルザの二人は、盲目的に英雄たるカレンを慕ってとても大事にしていた。
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