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第一章 二度目の国外追放
7 ご機嫌斜めのお嬢様
しおりを挟むふんわりとしたフリルがたっぷりとあしらわれた薄い水色のシャツワンピースに。
水色の刺繍で可愛らしく彩られてしまった、手触りの良い白いカーディガン。
アンクルストラップの付いたポイントトゥの白い可愛らしいパンプス。
そして。
まるでとどめをさす様に、白いレースのリボンでふわふわと癖のあるハニーブロンドを編み込まれしまい。
その姿だけならば。
可憐な花もついほころぶような、可愛らしいお嬢様の出来上がりだ。
そう、その姿だけならば。
服装だけ清楚なお嬢様になってしまったカレンは、とても不満そうにその苛立ちを表す。
足先でタンタンタンタンと華麗なリズムを刻み。
くりっとしたサファイアの瞳は半眼で、ふっくら柔らかな頬はぷくーっと膨らんでいる。
「あら! やっぱり、貴女よく似合うわー! ん、可愛い可愛い!」
「うっざ! くそが! 股がっ……スースーするー! この靴、絶対転ける自信あるわー、まじないわー、防御力皆無じゃんか……これ!」
「喋らなければ、動かなければ可愛いってよく言われない? 貴女」
残念なモノをみる目で嫌みを言ってきた。
「あ?」
カレンはとても短気だった。
そしてストレスもたまっていたし、朝食を食べてからそろそろ十時間ほどがたとうとしていて。
お腹は空いているし、眠くなってきて。
イライラしていた。
全ては分かりやすくご機嫌斜めなカレンに、全然気づかなかったエディの責任である。
そして次の瞬間カレンは、華麗にくるりとエディの足に回し蹴りを決めた!
油断していたとはいえ騎士なのに。
こんな少女に、回し蹴りを決められる騎士……。
「いった! おまっ! ヒールで! ガリって!」
「ふんっ……!」
ぷいーっと、カレンはそっぽを向く。
回し蹴りを決められた太ももをエディはさすりながら、足をもじもじとしているカレンに近づいて。
「……足、大丈夫? 私は普段鍛えてるから、大丈夫だけど貴女……」
「っい……痛い!」
「はあ、貴女馬鹿ね? そこ、座って足見せてみて」
カレンは大人しく言われた通り椅子に座り。
痛みで潤んだ瞳と、ほのかに赤らんだ顔で不満そうに口先を尖らせつつエディを上目遣いで見上げる。
エディの足は見た目は細いが鍛え上げられていて、細く華奢なカレンにはとても硬かった。
「っ……あー腫れてるな。とりあえずここじゃ魔法が使えないから……とりあえず……ほら、冷やすよ?」
エディはタオルを水に浸したものをカレンの足に優しくあてて、冷やす。
……少し腫れてしまったカレンの足首に、その冷たさがしみる。
「んぅ……冷た……い」
「……貴女が蹴ったんでしょう? ほら我慢しなさい、もう、時間がないのに」
「えっ……そんな時間ないの?」
「ええ、国境門までここから転移装置使って一時間はかかるから。貴女の魔力が発現してから結構経つわね? 身体は大丈夫?」
「ん? お腹は空いてるし眠いけど……特に?」
「眠い? こんなに早く貴女って寝るの? それとも目の前がぼやけたりとかする?」
「いや……いつも深夜とか、えと? そういえばふわふわするかな? あと……ちょっとだけ暑い」
エディは剣ダコのできた大きな手で、私のおでこを触り熱を確かめつつ何か考えこんでいる。
触れたエディの手は冷たくてとても気持ちがいい。
「これは、ちょっとばかしまずいわね……? もうここを出ましょう。封印具で余分な魔力が身体か出せてない、これは魔力暴走の兆候よ、このままじゃ魔力暴走を起こしてしまう」
「魔力暴走? それやばいの?」
「……最悪死ぬわ」
死ぬって?
え、こんな微熱で?
「うそん……? え、でも荷物とかまだ……」
「貴女の荷物は後でまとめてアルスに送ってもらうから大丈夫よ、ほら立って? さっさと行くわよ」
「えー! まだ時間なってないよ? あ、まって! 家族とか! まだ誰にも私……お別れしてない!」
「そんな悠長なことしてる時間なんてないの! 床でじたばたうじうじと文句言ってた貴女が悪い! その時間で会いに行けばよかったでしょう?!」
「別にずっと文句言ってた訳じゃないし……! ううっ……! くそ正論嫌いーー! 嫌だ、アルスなんて絶対に行きたくないーー!」
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