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第一章 二度目の国外追放

6 ハイリスクハイリターン

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「そういばさあ……? どうしてエディがアルスからお迎えにきたの? 私はてっきり一人で寂しく国を追放されるもんなんだと思ってたんだけどな? そしてここから始まる天才錬金術師カレンの壮大な冒険! とか……そんなやつ」

 また人の話を聞いてなかったかコイツ?

 と、げんなりとしたようにエディは語る。

「それもね、さっき自己紹介した時に話したと思うんだけど……? 貴女本当になにも聞いてなかったのね」

「うん、全然聞いてなかった! 興味無くてさ? ごめんね! あははー」

 呆れたと言わんばかりの表情でエディは、散らかっている私の研究室兼私室の片付けと掃除を頼んでないのに勝手にしつつ。

 めんどくさそうに。

 それはそれはめんどくさそうに、また大きな溜め息をついて話始めたから。

 そんなに溜め息ばかりついてると幸せが逃げそうだよって、腹抱えて笑ってたら睨まれた。

 怖っ! 

 騎士の睨み……怖っ!

「さっきも私は話したと思うのだけどね? 魔力を全く持っていなかった人間から、魔力が突然溢れだすなんて異例も異例で、しかも貴女はかの有名な錬金術師様でこの国イクスも対応に困ったらしくてね? 魔法に詳しいアルスに相談してきたのよ。イクスじゃ魔力持ちは魔力封印具装着しなきゃいけない、でも魔力封印具って身体に多大な負担がかかるのよ」

「えっ、コレそんなやべぇやつだったの?! なんかもうどうでもよすぎて何も聞いてなかった!」

 そんなのつけられてたのか。

 今すぐ外したいんだが?

「ええそうよ? 短時間なら大して問題ないけど、長期間の使用は未成年の魔法も使えないような子どもじゃ命に関わる。だからこの国イクスにとっても世界にとっても、貴重な存在の貴女を危険には晒せない、でも法律的にこの国では魔力封印具なしに魔力持ちは居てはいけない。だから元々貴女はうちの国の人間だし、母国だったアルスに貴女の保護を……って話がきてね? それでカレン、私が貴女を保護しに来たのよ」

「まじか、それはお手数お掛けします? でも邪魔だったから嫌われてたから追放ではないのか……ふむ?」

「追放……というか避難? 強制送還じゃない? 元々貴女アルスの貴族だし? だからね、大人しくコレ着なさい?」

 ……それはないと思うけど。

 そしてエディは、フリフリのレースがたっぷりとこれでもかと付いた白と水色のドレスみたいなワンピースを手に持って。

 私の所にじりじりと近づいてくる。

「えっ、そんな少女趣味なブリブリなやつなんて絶対着たくないんだけど? 無理無理!」

「なに言ってるの? このくらいで。全然シンプルでしょ? さすがにそんな格好でアルスに行けるわけないわよ?」

 新しく着直した予備の白のオーバーサイズシャツに黒の半ズボン、そして黒いショートブーツをチラリと見て。

「そんな服って、うわ……ひどっ!? これは錬金術師の正装なんだよ! これにローブ羽織れば完璧なんだから!」

 えっ? 

 と、エディは目を見開き。

 本当に驚いているらしくなぜか心配される。

「え、そのボロ雑巾みたいなのが? 錬金術師って……国に冷遇されてるの?」

「雑巾とかひど! 錬金術師はみんなが憧れる将来安泰系超人気職業だよ! これ、保護の魔方陣が織り込んであってね? 多少の爆発とかなら防げちゃうんだよ!」

 なんかドン引きしてるよ? 

 この騎士様。

「多少の爆発って、それどんな状況よ……?」

 錬金術とはハイリスクハイリターンである。

 だが、それがいい! 燃える! 

 とカレンは思う。

 そう、カレンはギャンブラーだ。

「錬金失敗すると、すごいからね! ほんとに……、うん、この間ね? 錬金防御結界なしの服着て錬金失敗した同業者が爆発四散したって聞いたけど……、生きてるのかな? 死んでるだろうな」

「そ、そうなのね? でもそれはアルスではちょっと、いや、かなーり浮くと思うのよね……?」

 ちょっと動揺させるのには成功したが、やっぱりフリフリは諦めて頂けないらしい。

 頑固者め。

「えー? 浮いてもべつに私は困らんし? うん、大丈夫大丈夫!」

「いや、私が……周りの人間が困るから! せめて外でだけでもまともな服……着て!? お願い」

「いやいや、十分まともだよ? 正装だよ? ひどいー! そんなフリフリ恥ずかしいじゃん! ブリブリロリロリぃ」

「大丈夫よ、あなた自身十分ブリブリなロリロリな容姿してるんだし?」

「だれがロリロリじゃー! 私は小さくない!」

 身長なんて150㎝もあるし! 

 まだのびるし!

 十七歳はまだまだ成長期だ!

「ん……? 十分大きいと思うわよ? 肩こりそうね?」

 その厭らしい目線は私の胸元である。

「えっち! どこみて言ってんのー?! この変態スケベオカマはげー!」

 とりあえずセクハラでこの騎士を訴えたい。

「いや、禿げてないし、とりあえずこれ着ようね?」

 冷静に切り返してくるところが地味にムカつくぞこのオネェ騎士め。

「えっ……ちょっ、それまじ?」

「うん、誰かさんがね、駄々をこねまくってたせいで、時間無いから早くしてね?」


 最悪だ、やっぱりアルスになんて行きたくない。
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