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第二章 王国動乱
ダブルストレート
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「ほらほらー、そんなのんびり歩いてると置いてっちゃうぞー!」
「ま、待ってよネロー!」
昼下がりの王都クイーンズガーデン、その大通りを黒い耳をピンと立てた少女が駆けていく。
その少女、ネロは挑発的に笑い手を振った先からは、軽く息を乱した様子の白い耳を垂らした少女が一生懸命走ってきていた。
そこまでは、いつもの至って平和な光景であった。
「ま、待つのだネロ!はぁ、はぁ・・・王である余を置いていくことなど、許されておらぬぞ!!こら、待たぬか!!」
しかしその後に続く、もう一つの人影へと目を向ければ話は変わってくる。
その人影は、お忍びという事もあり普段よりもずっと質素な衣装を身に纏っているが、それでも見る人が見れば一目で分かるほどの高質な衣服を身に纏っている幼王ジョンであった。
彼は自分を置いてさっさと先に進もうとしているネロに対して、息を切らせながら必死に待つように呼び掛けていた。
「ジョン君、大丈夫?ほら、一緒に歩こ?」
「う、うむ・・・よきにはからえ」
息も絶え絶えといった様子でその場に膝をついているジョンに、プティが心配して戻ってくるとその顔を覗き込んでいる。
彼女が優しく差し出してきた手にジョンは僅かに頬を赤く染めると、自らの手を取るようにそっと差し出していた。
「ぷぷぷー、王様なんて言ったっててんで駄目じゃん!プティに手を引いてもらうなんて、なっさけなーい!!」
プティに手を引かれているジョンは、彼女に恰好のいい所を見せようとしているのか、先ほどよりもしっかりとした足取りで駆けていた。
そんな二人の姿に少し先に進んだところからわざわざ戻って来たネロは、口元を押さえては馬鹿にしたような笑みを漏らしていた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・余、余を馬鹿にするとは・・・いくらネロといえど、許せぬ、ぞ」
ネロの真っ直ぐな侮辱にジョンは当然言い返そうとするが、彼の体力がそれを許さない。
そんなジョンの前に、彼を制するように手を掲げながらプティが前へと進み出てくる。
「ふーん、そんなこと言っちゃうんだ・・・ネロなんて、あの時私に縋りついて泣いてたくせに」
「っ!?あ、あの時の事を言うのは反則だろー!!」
プティが口にしたあの時とは、ネロが彼女を失ったと思い込み泣き叫んでいた、あの時の事だろう。
流石にあの時の事に触れられるのは恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして近づいてくるネロに、ジャンは何の事か分からないと不思議そうな顔をしていた。
「・・・何の事か分からないが、余の胸ならば貸してやってもよいぞ?」
そして彼は何の事か分からないまま、完璧な返しを放っていた。
「っっっ!!?バーカバーカ!!」
言葉を詰まらせ更に顔を真っ赤に染めたネロは、捨て台詞を吐いては逃げ去っていく。
「何だと!?余を侮辱するかー!!」
「あっ!?待ってよ二人ともー!」
逃げ出したネロを、休んだ事で少しは体力が回復したジョンが追い駆けていく。
突然駆け出した二人に置いていかれたプティも、その後を追ってすぐに駆けだしていた。
「ちょ、ちょっとあんた達・・・相手は王様なのよ?それをそんな態度で・・・だ、駄目でしょ?」
年の頃が近い事もあってか、最初こそ反目し合ったもののすぐに仲良くなった二人とジョン。
そんな三人の遠慮のないやり取りに、それを少し離れた場所から見守っていたオリビアがオロオロと手を震わせていた。
「いいではないですか、お嬢様。ジョンもきっと同年代の友達が欲しかったのです・・・見てください、あの楽しそうな様子を」
どうすればいいのかと右往左往しているオリビアと違い、リリーナはそんな三人の姿を見ても優しく微笑むだけであった。
彼女はジョンの姿を指し示しては、オリビアを安心させようとする。
「・・・あれでも?」
リリーナが指し示した先、そこには追いついてきたジョンを組み敷き、取っ組み合っているネロの姿と、それを必死に止めようとしているプティの姿があった。
「あれは、その・・・マーカス、止めてきてもらえますか?」
「お任せください」
子供のじゃれ合いにしては少し度が過ぎたその姿に、リリーナは困った表情を浮かべると後ろに控えていたマーカスに助力を求める。
その声に応え颯爽と仲裁に向かったマーカスが、ネロとジョンの両方から綺麗に両頬を殴りつけられ、ゆっくりと倒れていく。
その姿に悲鳴を上げる、プティの声だけが昼下がりの大通りに響き渡っていた。
「・・・困りましたね」
その様子にリリーナは頬に手を当てては、おっとりとそう呟いていた。
「ま、待ってよネロー!」
昼下がりの王都クイーンズガーデン、その大通りを黒い耳をピンと立てた少女が駆けていく。
その少女、ネロは挑発的に笑い手を振った先からは、軽く息を乱した様子の白い耳を垂らした少女が一生懸命走ってきていた。
そこまでは、いつもの至って平和な光景であった。
「ま、待つのだネロ!はぁ、はぁ・・・王である余を置いていくことなど、許されておらぬぞ!!こら、待たぬか!!」
しかしその後に続く、もう一つの人影へと目を向ければ話は変わってくる。
その人影は、お忍びという事もあり普段よりもずっと質素な衣装を身に纏っているが、それでも見る人が見れば一目で分かるほどの高質な衣服を身に纏っている幼王ジョンであった。
彼は自分を置いてさっさと先に進もうとしているネロに対して、息を切らせながら必死に待つように呼び掛けていた。
「ジョン君、大丈夫?ほら、一緒に歩こ?」
「う、うむ・・・よきにはからえ」
息も絶え絶えといった様子でその場に膝をついているジョンに、プティが心配して戻ってくるとその顔を覗き込んでいる。
彼女が優しく差し出してきた手にジョンは僅かに頬を赤く染めると、自らの手を取るようにそっと差し出していた。
「ぷぷぷー、王様なんて言ったっててんで駄目じゃん!プティに手を引いてもらうなんて、なっさけなーい!!」
プティに手を引かれているジョンは、彼女に恰好のいい所を見せようとしているのか、先ほどよりもしっかりとした足取りで駆けていた。
そんな二人の姿に少し先に進んだところからわざわざ戻って来たネロは、口元を押さえては馬鹿にしたような笑みを漏らしていた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・余、余を馬鹿にするとは・・・いくらネロといえど、許せぬ、ぞ」
ネロの真っ直ぐな侮辱にジョンは当然言い返そうとするが、彼の体力がそれを許さない。
そんなジョンの前に、彼を制するように手を掲げながらプティが前へと進み出てくる。
「ふーん、そんなこと言っちゃうんだ・・・ネロなんて、あの時私に縋りついて泣いてたくせに」
「っ!?あ、あの時の事を言うのは反則だろー!!」
プティが口にしたあの時とは、ネロが彼女を失ったと思い込み泣き叫んでいた、あの時の事だろう。
流石にあの時の事に触れられるのは恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして近づいてくるネロに、ジャンは何の事か分からないと不思議そうな顔をしていた。
「・・・何の事か分からないが、余の胸ならば貸してやってもよいぞ?」
そして彼は何の事か分からないまま、完璧な返しを放っていた。
「っっっ!!?バーカバーカ!!」
言葉を詰まらせ更に顔を真っ赤に染めたネロは、捨て台詞を吐いては逃げ去っていく。
「何だと!?余を侮辱するかー!!」
「あっ!?待ってよ二人ともー!」
逃げ出したネロを、休んだ事で少しは体力が回復したジョンが追い駆けていく。
突然駆け出した二人に置いていかれたプティも、その後を追ってすぐに駆けだしていた。
「ちょ、ちょっとあんた達・・・相手は王様なのよ?それをそんな態度で・・・だ、駄目でしょ?」
年の頃が近い事もあってか、最初こそ反目し合ったもののすぐに仲良くなった二人とジョン。
そんな三人の遠慮のないやり取りに、それを少し離れた場所から見守っていたオリビアがオロオロと手を震わせていた。
「いいではないですか、お嬢様。ジョンもきっと同年代の友達が欲しかったのです・・・見てください、あの楽しそうな様子を」
どうすればいいのかと右往左往しているオリビアと違い、リリーナはそんな三人の姿を見ても優しく微笑むだけであった。
彼女はジョンの姿を指し示しては、オリビアを安心させようとする。
「・・・あれでも?」
リリーナが指し示した先、そこには追いついてきたジョンを組み敷き、取っ組み合っているネロの姿と、それを必死に止めようとしているプティの姿があった。
「あれは、その・・・マーカス、止めてきてもらえますか?」
「お任せください」
子供のじゃれ合いにしては少し度が過ぎたその姿に、リリーナは困った表情を浮かべると後ろに控えていたマーカスに助力を求める。
その声に応え颯爽と仲裁に向かったマーカスが、ネロとジョンの両方から綺麗に両頬を殴りつけられ、ゆっくりと倒れていく。
その姿に悲鳴を上げる、プティの声だけが昼下がりの大通りに響き渡っていた。
「・・・困りましたね」
その様子にリリーナは頬に手を当てては、おっとりとそう呟いていた。
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