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第二章 王国動乱
嫉妬
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お出かけに興奮する、子供達の足は速い。
一行はいつの間にかかなりの遠出しており、王都クイーンズガーデンの外れにまでやってきていた。
「むむむ・・・」
そんなクイーンズガーデン郊外に、ジョンの不満そうな声が響く。
その様子は先ほどまで同年代の友人が出来た事で、あれほど上機嫌だった彼を思うと意外な事だろう。
しかしその理由は、彼の視線の先を見ればすぐに理解出来るものであった。
「い、痛いんだな!あ、あんまり、引っ張らないでおくれよぉ」
「あはははっ、ごめんごめん!ほら、次はあの建物を見に行こー!」
「んー?あ、あのでっけぇ建物だか?わ、分かったぞぉ」
「えっ?ちょ、ちょっと待ってヌーボ!まだちゃんと掴まって・・・きゃあああ!!?」
そこにはジョンの召使の大男ヌーボの姿と、彼の肩の上に乗って楽しそうにはしゃいでいるネロとプティの姿があった。
「余は王なのだぞ!それなのにあのような者に夢中になりおって!大体あの者は余の召使なのだ!!それなのに・・・気に入らぬ、気に入らぬぞ!!」
身体が大きく力持ち、そして優しくのんびりとした性格のヌーボが、ネロとプティの目に留まるまでには、それほどの時間は掛からなかった。
そしてその大きな身体が、彼女達にとってアトラクションへと変わるまでには、更に短い時間しか掛からなかった。
それから彼は二人にすっかり気に入られ、ここまで来るまで間何をするにも彼とくっついているほどになっていたのだった。
「駄目駄目!ここは王族以外立ち入り禁止なの!!さぁ、帰った帰った!」
「ちぇー、何だよー。ちょっとぐらいいいじゃん!」
「ざ、残念だな」
二人にすっかり懐かれ、大人気のヌーボに嫉妬するジョン。
そんな彼の耳に、冷たく怒鳴りつける兵士の声が聞こえてきていた。
そちらへと顔を向ければ、何やらやたらと大きな塔のような建物から追い払われているネロ達の姿があった。
「あれは・・・ふ、ふふーん!どうやら余の出番のようだな!」
彼女達の姿、取り分けその向こう側の建物を目にしては、ジョンは何やら急に元気になると、そちらへと胸を張って歩いていく。
「ん?どーしたんだジョン、そっちに行っても追い返されるだけだぞ?」
「だ、駄目だよジョン君!怒られちゃうよ?」
こちらに向かって歩き、自分達の横を通り過ぎては先ほど彼女達が追い返されたばかりの建物へと進んでいくジョンに、ネロとプティの二人はそれぞれに引き留めようとしている。
「何だ、また来たのか?ちっ、こんなところ滅多に人なんて来ないってのに・・・駄目駄目!さっきも言っただろ、ここは王族の方にしか・・・!?」
建物へと近づいてくるジョンの姿に、そこを警備している衛兵は面倒臭そうに近寄っていく。
そして彼を追い返そうとした衛兵は、その顔をまじまじと見詰めると、突然血の気が引いていき真っ青な顔色へと変わっていた。
「し、失礼いたしました!!どうぞお通りください!!」
「うむ、ご苦労」
それもその筈だろう、彼は王族以外立ち入り禁止の建物の警備をしているのだ。
そこに王族、それどころか現国王であるジョンがやってくれば、そうした態度を取らざるを得ない。
「ふふーん、どうだ!これが余の実力である!!」
ジョンにひれ伏し道を譲る衛兵の姿に、彼は振り返るとネロとプティに向かって勝ち誇って見せている。
「わー・・・凄い凄ーい!!ねぇねぇ、どうやったの!?どうやったの、ジョン!?」
「そうだ!ジョン君は王様だもんね、だからここに入ってもいいんだ!はー・・・ジョン君は凄いなー」
そんなジョンの下に、その目をキラキラと輝かせたネロとプティの二人がやって来る。
「ふはははっ!そうであろうそうであろう!ここはな『おこもりの塔』と言って、王位継承の儀を行う場所なのだ!本来は王族の者にしか立ち入る事は許されていないのだが・・・今日は特別に、お前達にも立ち入る事を許そう!どうだ、余は凄かろう!」
「凄い凄ーい!!ねぇ、入ってもいい?」
「ん?構わないぞ」
「わーい!」
「ま、待ってよー」
二人の称賛にさらに気を良くしたジョンは、そこが「おこもりの塔」という王位継承に関わる場所である事を説明していくれる。
本来であれば王族にしか立ち入ることの許されていないその場所に、彼が立ち入りの許可を与えると、真っ先にネロがそこに駆け込んでいき、プティが慌ててそれを追い駆ける。
「はー・・・ひろーい。ねぇ、王位継承って事はさぁ、ジョンもここでその儀式をしたの?」
おこもりの塔の内部へと入りその広大な空間を見上げているネロは、そのまま倒れそうになってしまった身体をプティに支えてもらいながら、そんな素朴な疑問をジョンへと投げかける。
「ん?余はしておらんぞ」
「えー、何でー?王位継承の儀式なんでしょー?」
「ふふん、ここで行う儀式は古い儀式でな、とっくに廃れたものなのだ。そんな儀式を今更する必要があるのは王位を継ぐ正当性が足りないような者ぐらいでな、余のような正真正銘の王には必要ないのだ。だからやらなかったのだぞ」
「ふーん、そうなんだ」
おこもりの塔での王位継承の儀式、それは古い儀式でありジョンのような正当な王は今更わざわざやるようなものではなかった。
それを自慢げに口にするジョンに、ネロは気のない返事を返す。
「よし、見たいのならばその儀式をやる奥の間を見せてやってもよいぞ!ほら、あの扉を抜ければそこが・・・」
自らの王としての権威を見せつけ上機嫌なジョンは、奥にある古ぼけた巨大な扉を指し示し、そこを見せてやろうと二人に声を掛ける。
「ほら、ヌーボ!もっと高く上げて、良く見えない!」
「こ、これでいいかぁ?」
「次は私ね!私の番だから!」
しかしその先に二人の姿はなく、彼女達はヌーボに抱きかかえられては高い所からこの建物を見るのに夢中になっている様子だけが、この建物の隅っこで繰り広げられていた。
「・・・ここに入れたのは、余のお陰なのだぞ」
その姿に、ジョンは苛立ちを募らせる。
そんなジョンの姿を、彼のもう一人の召使であるガララがハラハラとした不安そうな表情で見詰めていた。
一行はいつの間にかかなりの遠出しており、王都クイーンズガーデンの外れにまでやってきていた。
「むむむ・・・」
そんなクイーンズガーデン郊外に、ジョンの不満そうな声が響く。
その様子は先ほどまで同年代の友人が出来た事で、あれほど上機嫌だった彼を思うと意外な事だろう。
しかしその理由は、彼の視線の先を見ればすぐに理解出来るものであった。
「い、痛いんだな!あ、あんまり、引っ張らないでおくれよぉ」
「あはははっ、ごめんごめん!ほら、次はあの建物を見に行こー!」
「んー?あ、あのでっけぇ建物だか?わ、分かったぞぉ」
「えっ?ちょ、ちょっと待ってヌーボ!まだちゃんと掴まって・・・きゃあああ!!?」
そこにはジョンの召使の大男ヌーボの姿と、彼の肩の上に乗って楽しそうにはしゃいでいるネロとプティの姿があった。
「余は王なのだぞ!それなのにあのような者に夢中になりおって!大体あの者は余の召使なのだ!!それなのに・・・気に入らぬ、気に入らぬぞ!!」
身体が大きく力持ち、そして優しくのんびりとした性格のヌーボが、ネロとプティの目に留まるまでには、それほどの時間は掛からなかった。
そしてその大きな身体が、彼女達にとってアトラクションへと変わるまでには、更に短い時間しか掛からなかった。
それから彼は二人にすっかり気に入られ、ここまで来るまで間何をするにも彼とくっついているほどになっていたのだった。
「駄目駄目!ここは王族以外立ち入り禁止なの!!さぁ、帰った帰った!」
「ちぇー、何だよー。ちょっとぐらいいいじゃん!」
「ざ、残念だな」
二人にすっかり懐かれ、大人気のヌーボに嫉妬するジョン。
そんな彼の耳に、冷たく怒鳴りつける兵士の声が聞こえてきていた。
そちらへと顔を向ければ、何やらやたらと大きな塔のような建物から追い払われているネロ達の姿があった。
「あれは・・・ふ、ふふーん!どうやら余の出番のようだな!」
彼女達の姿、取り分けその向こう側の建物を目にしては、ジョンは何やら急に元気になると、そちらへと胸を張って歩いていく。
「ん?どーしたんだジョン、そっちに行っても追い返されるだけだぞ?」
「だ、駄目だよジョン君!怒られちゃうよ?」
こちらに向かって歩き、自分達の横を通り過ぎては先ほど彼女達が追い返されたばかりの建物へと進んでいくジョンに、ネロとプティの二人はそれぞれに引き留めようとしている。
「何だ、また来たのか?ちっ、こんなところ滅多に人なんて来ないってのに・・・駄目駄目!さっきも言っただろ、ここは王族の方にしか・・・!?」
建物へと近づいてくるジョンの姿に、そこを警備している衛兵は面倒臭そうに近寄っていく。
そして彼を追い返そうとした衛兵は、その顔をまじまじと見詰めると、突然血の気が引いていき真っ青な顔色へと変わっていた。
「し、失礼いたしました!!どうぞお通りください!!」
「うむ、ご苦労」
それもその筈だろう、彼は王族以外立ち入り禁止の建物の警備をしているのだ。
そこに王族、それどころか現国王であるジョンがやってくれば、そうした態度を取らざるを得ない。
「ふふーん、どうだ!これが余の実力である!!」
ジョンにひれ伏し道を譲る衛兵の姿に、彼は振り返るとネロとプティに向かって勝ち誇って見せている。
「わー・・・凄い凄ーい!!ねぇねぇ、どうやったの!?どうやったの、ジョン!?」
「そうだ!ジョン君は王様だもんね、だからここに入ってもいいんだ!はー・・・ジョン君は凄いなー」
そんなジョンの下に、その目をキラキラと輝かせたネロとプティの二人がやって来る。
「ふはははっ!そうであろうそうであろう!ここはな『おこもりの塔』と言って、王位継承の儀を行う場所なのだ!本来は王族の者にしか立ち入る事は許されていないのだが・・・今日は特別に、お前達にも立ち入る事を許そう!どうだ、余は凄かろう!」
「凄い凄ーい!!ねぇ、入ってもいい?」
「ん?構わないぞ」
「わーい!」
「ま、待ってよー」
二人の称賛にさらに気を良くしたジョンは、そこが「おこもりの塔」という王位継承に関わる場所である事を説明していくれる。
本来であれば王族にしか立ち入ることの許されていないその場所に、彼が立ち入りの許可を与えると、真っ先にネロがそこに駆け込んでいき、プティが慌ててそれを追い駆ける。
「はー・・・ひろーい。ねぇ、王位継承って事はさぁ、ジョンもここでその儀式をしたの?」
おこもりの塔の内部へと入りその広大な空間を見上げているネロは、そのまま倒れそうになってしまった身体をプティに支えてもらいながら、そんな素朴な疑問をジョンへと投げかける。
「ん?余はしておらんぞ」
「えー、何でー?王位継承の儀式なんでしょー?」
「ふふん、ここで行う儀式は古い儀式でな、とっくに廃れたものなのだ。そんな儀式を今更する必要があるのは王位を継ぐ正当性が足りないような者ぐらいでな、余のような正真正銘の王には必要ないのだ。だからやらなかったのだぞ」
「ふーん、そうなんだ」
おこもりの塔での王位継承の儀式、それは古い儀式でありジョンのような正当な王は今更わざわざやるようなものではなかった。
それを自慢げに口にするジョンに、ネロは気のない返事を返す。
「よし、見たいのならばその儀式をやる奥の間を見せてやってもよいぞ!ほら、あの扉を抜ければそこが・・・」
自らの王としての権威を見せつけ上機嫌なジョンは、奥にある古ぼけた巨大な扉を指し示し、そこを見せてやろうと二人に声を掛ける。
「ほら、ヌーボ!もっと高く上げて、良く見えない!」
「こ、これでいいかぁ?」
「次は私ね!私の番だから!」
しかしその先に二人の姿はなく、彼女達はヌーボに抱きかかえられては高い所からこの建物を見るのに夢中になっている様子だけが、この建物の隅っこで繰り広げられていた。
「・・・ここに入れたのは、余のお陰なのだぞ」
その姿に、ジョンは苛立ちを募らせる。
そんなジョンの姿を、彼のもう一人の召使であるガララがハラハラとした不安そうな表情で見詰めていた。
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