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第二章 王国動乱
マッチポンプ
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「どうしてだ!どうしてうまくいかぬ!!」
人一倍大きな身体を誇るヌーボに乗って移動しているネロとプティは、その大股な歩幅でいつしかこの王都でも寂れた街角、スラム街と呼ばれるような場所にまでやってきていた。
彼女達はそこで運営されているこじんまりとした孤児院を訪問し、そこの子供達と楽しそうに歓声を響かせている。
「王様、もう諦めましょうや。あのウスノロのヌーボって奴は、昔っから妙にガキ共から人気がありまして・・・ほらガキってのは皆、大きい生き物が好きでがしょ?そういうもんでございますから、ありゃもう仕方ねぇでございますよ」
そんなネロとプティ、そしてヌーボの姿を見詰めながら、ジョンが悔しそうに唇を噛みしめている。
彼の横では、彼のもう一人の召使であるガララが必死に彼を慰めようとしていた。
「身体が大きいから好かれるだと?あんな者よりも余の方が、王である余の方がずっと大きな存在ではないか!!」
「いや王様、そういう意味じゃねぇでございまして・・・こりゃ、何を言っても無駄だな」
ガララが口にしたヌーボが子供に好かれる理由に、ジョンは自らの胸を叩いては王である自分の方がずっと大きな存在だと主張している。
そんな彼に困ったようにその薄い頭髪を掻くガララは、彼から顔を背けるとぼそりと諦めを口にしていた。
「ほらほら、びびってんのかよー?」
「や、止めてよ!」
後ろに控えるガララへと振り返ったジョンの背後では、孤児院の子供達がその建物の屋根に上っては、何やら危険な遊びに興じていた。
その男の子にとっては度胸試しの一種に過ぎない遊びはしかし、屋根の端っこという場所を考えればとても危険な火遊びとも言えた。
「あっ!?」
そしてびびっているのかと冗談半分に押した手の平も、そうした不安定な足場では足を滑らせる切欠になってしまう。
屋根の上に集まった男の子の一人から胸を押された線の細い男の子は、そのまま足を滑らせ屋根から転げ落ちていく。
「ネ、ネロ!あれ!!」
「え?何、プティ?折角いい所だったのに・・・っ!?危ない!!」
押された勢いのためか屋根から転げ落ちた男の子は、意外なほどに大きな放物線を描いて落下していく。
それはその下で遊んでいたネロやプティの近くにまで飛んできていたが、それでも彼女達の手が届くことはない。
「う、う、うおおおおぉぉぉぉん!!」
その時、戸惑うような、詰まったような間の抜けた雄叫びが轟き、次いで巨大な影が疾風のように通り過ぎていった。
「「ヌーボ!!」」
少女達の驚く、そして喜ぶ声が響き、ヌーボの丸太のような腕が落ちてきた男の子の身体を受け止める。
「おぉ?あわ、あわあわわ!?」
「ひっ!?」
男の子を寸での処で受け止めたヌーボは、その勢いにバランスを崩してトコトコと後ずさっていく。
それはいつかジョンの目の前にまでやってきており、突然背後に現れたヌーボの巨大な影に、ジョンは振り返ると怯えた表情を浮かべていた。
「はふぅ・・・あ、危ない所だったんだな」
ジョンの目の前で何とかバランスを取り戻したヌーボは、安堵の吐息を漏らすと腕の中の男の子に優しく声を掛ける。
「す、凄ーい凄ーい!!凄いよ、ヌーボ!!」
「うん、凄かった!格好良かったよ、ヌーボ!!」
「へ、へへへ・・・お、おら、凄かったのか?む、夢中で、よ、よく憶えてないんだな」
今だ状況がよく分かっていない様子の男の子を地面へと下ろしてやっているヌーボに、ネロとプティの二人が歓声を上げながら近づいてくる。
そんな二人に、ヌーボはそのツルツルの頭を撫でながら恥ずかしそうにはにかんでいた。
「・・・そうか、その手があったか」
ヌーボの周りには男の子を心配する子供達と、ヌーボを称賛する子供達が集まってくる。
それらの中にあっても、少し背の高いネロとプティの声は良く響いた。
そんな彼女達の姿を少し離れた場所で眺めながら、ジョンはそう呟く。
「ガララ、耳を貸せ」
リリーナが駆け寄り、放心状態の男の子の手当てを行っている。
マーカスはその異常な身体能力で屋根を駆け上り、そこに残っていた男の子達を厳しく叱りつけていた。
そんな彼らにチラリと視線を向けながら、ジョンはガララを呼び寄せてはその尖った耳へと耳打ちする。
「へ?何ですかい急に・・・へ!?しょ、本気ですかい王様!?」
「あぁ、余は本気だ。どうせ近くに護衛の兵が隠れているのだろう?彼らにそこらの連中を適当に襲わせるのだ。それを余が収めれば・・・くくく、そうすればあの二人も余を認めるであろう」
耳打ちされた内容に、驚くガララ。
ジョンはそんな彼にニヤリと笑うと、自らの考えを改めて口にする。
それは、自作自演の救出劇を演じるというものであった。
「王様、言いつけには従いますがね・・・あっしは賛成してないって事は憶えておいてくださいよ!」
ジョンの命令に不満そうな表情を見せながらも、ガララはその命令を実行するためにその場から駆け出していく。
「あぁ、もううんざりだ!いつか、いつか絶対逃げ出してやる」
ジョンから遠ざかりその声が届かない距離になって、ガララはそう呟く。
その顔には、強い決意の色が浮かんでいた。
「あぁ、好きにするがいい。ふふふ、これで・・・これできっと、全てうまくいくのだ」
そんなガララの決意など知りもせずに、彼を見送るジョンは一人呟く。
その口元には、どこか邪悪に歪んだ笑みが浮かんでいた。
人一倍大きな身体を誇るヌーボに乗って移動しているネロとプティは、その大股な歩幅でいつしかこの王都でも寂れた街角、スラム街と呼ばれるような場所にまでやってきていた。
彼女達はそこで運営されているこじんまりとした孤児院を訪問し、そこの子供達と楽しそうに歓声を響かせている。
「王様、もう諦めましょうや。あのウスノロのヌーボって奴は、昔っから妙にガキ共から人気がありまして・・・ほらガキってのは皆、大きい生き物が好きでがしょ?そういうもんでございますから、ありゃもう仕方ねぇでございますよ」
そんなネロとプティ、そしてヌーボの姿を見詰めながら、ジョンが悔しそうに唇を噛みしめている。
彼の横では、彼のもう一人の召使であるガララが必死に彼を慰めようとしていた。
「身体が大きいから好かれるだと?あんな者よりも余の方が、王である余の方がずっと大きな存在ではないか!!」
「いや王様、そういう意味じゃねぇでございまして・・・こりゃ、何を言っても無駄だな」
ガララが口にしたヌーボが子供に好かれる理由に、ジョンは自らの胸を叩いては王である自分の方がずっと大きな存在だと主張している。
そんな彼に困ったようにその薄い頭髪を掻くガララは、彼から顔を背けるとぼそりと諦めを口にしていた。
「ほらほら、びびってんのかよー?」
「や、止めてよ!」
後ろに控えるガララへと振り返ったジョンの背後では、孤児院の子供達がその建物の屋根に上っては、何やら危険な遊びに興じていた。
その男の子にとっては度胸試しの一種に過ぎない遊びはしかし、屋根の端っこという場所を考えればとても危険な火遊びとも言えた。
「あっ!?」
そしてびびっているのかと冗談半分に押した手の平も、そうした不安定な足場では足を滑らせる切欠になってしまう。
屋根の上に集まった男の子の一人から胸を押された線の細い男の子は、そのまま足を滑らせ屋根から転げ落ちていく。
「ネ、ネロ!あれ!!」
「え?何、プティ?折角いい所だったのに・・・っ!?危ない!!」
押された勢いのためか屋根から転げ落ちた男の子は、意外なほどに大きな放物線を描いて落下していく。
それはその下で遊んでいたネロやプティの近くにまで飛んできていたが、それでも彼女達の手が届くことはない。
「う、う、うおおおおぉぉぉぉん!!」
その時、戸惑うような、詰まったような間の抜けた雄叫びが轟き、次いで巨大な影が疾風のように通り過ぎていった。
「「ヌーボ!!」」
少女達の驚く、そして喜ぶ声が響き、ヌーボの丸太のような腕が落ちてきた男の子の身体を受け止める。
「おぉ?あわ、あわあわわ!?」
「ひっ!?」
男の子を寸での処で受け止めたヌーボは、その勢いにバランスを崩してトコトコと後ずさっていく。
それはいつかジョンの目の前にまでやってきており、突然背後に現れたヌーボの巨大な影に、ジョンは振り返ると怯えた表情を浮かべていた。
「はふぅ・・・あ、危ない所だったんだな」
ジョンの目の前で何とかバランスを取り戻したヌーボは、安堵の吐息を漏らすと腕の中の男の子に優しく声を掛ける。
「す、凄ーい凄ーい!!凄いよ、ヌーボ!!」
「うん、凄かった!格好良かったよ、ヌーボ!!」
「へ、へへへ・・・お、おら、凄かったのか?む、夢中で、よ、よく憶えてないんだな」
今だ状況がよく分かっていない様子の男の子を地面へと下ろしてやっているヌーボに、ネロとプティの二人が歓声を上げながら近づいてくる。
そんな二人に、ヌーボはそのツルツルの頭を撫でながら恥ずかしそうにはにかんでいた。
「・・・そうか、その手があったか」
ヌーボの周りには男の子を心配する子供達と、ヌーボを称賛する子供達が集まってくる。
それらの中にあっても、少し背の高いネロとプティの声は良く響いた。
そんな彼女達の姿を少し離れた場所で眺めながら、ジョンはそう呟く。
「ガララ、耳を貸せ」
リリーナが駆け寄り、放心状態の男の子の手当てを行っている。
マーカスはその異常な身体能力で屋根を駆け上り、そこに残っていた男の子達を厳しく叱りつけていた。
そんな彼らにチラリと視線を向けながら、ジョンはガララを呼び寄せてはその尖った耳へと耳打ちする。
「へ?何ですかい急に・・・へ!?しょ、本気ですかい王様!?」
「あぁ、余は本気だ。どうせ近くに護衛の兵が隠れているのだろう?彼らにそこらの連中を適当に襲わせるのだ。それを余が収めれば・・・くくく、そうすればあの二人も余を認めるであろう」
耳打ちされた内容に、驚くガララ。
ジョンはそんな彼にニヤリと笑うと、自らの考えを改めて口にする。
それは、自作自演の救出劇を演じるというものであった。
「王様、言いつけには従いますがね・・・あっしは賛成してないって事は憶えておいてくださいよ!」
ジョンの命令に不満そうな表情を見せながらも、ガララはその命令を実行するためにその場から駆け出していく。
「あぁ、もううんざりだ!いつか、いつか絶対逃げ出してやる」
ジョンから遠ざかりその声が届かない距離になって、ガララはそう呟く。
その顔には、強い決意の色が浮かんでいた。
「あぁ、好きにするがいい。ふふふ、これで・・・これできっと、全てうまくいくのだ」
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