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第二章 王国動乱
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「「オーリービーアー、あーそーぼー!!」」
王族や高貴な女性達が使う姫百合の間、その場所に不釣り合いな騒がしい声が響く。
そんな声に対して、その場に行きかう人々からクスクスとした笑い声が漏れていた。
しかしそれらの笑い声は嘲りの色はなく、どこか歓迎するような雰囲気が溢れていた。
「一々大声で呼ばなくても聞こえていますわ!!さっさとお入りになって、あぁ恥ずかしい!」
「「わーい」」
その大声に慌てた様子で扉を開いたのは、金髪の美少女オリビアであった。
彼女は顔を真っ赤に染めながら、扉の前で待っていた二人を招き入れる。
それにお互いの尻尾をパタパタと絡ませながらついて行ったのは、ピンと立った猫の耳とへにゃんと垂れた犬の耳を持った二人の少女であった。
「ふぅ・・・全く、貴方達また来ましたの?これで一体、何日連続だと思って?もう少し他に行くところとかないのかしら?」
その二人の少女、ネロとプティを部屋の中に招き入れたオリビアは、扉を閉めてそこへと背中を預けると、ようやく安心したといった様子で彼女達に嫌味を口にする。
「えー、だってオリビアと遊びたいんだもん!ね、プティ?」
「ねー?」
しかしそんな嫌味も、ネロとプティの二人には通用しない。
彼女達はお互いに頬を触れるような距離で顔を見合わせると、オリビアと遊ぶことより楽しい事はないのだとはっきりと口にする。
「ふ、ふんっ!そ、それなら仕方がないわね!遊んであげない事もないわ!」
「「やったー!」」
二人の真っ直ぐな態度に見事な反撃を食らい頬を真っ赤に染めたオリビアは、腕を組み顔を背け片目を開けては遊んであげなくもないと渋々と口にする。
その言葉にも真っ直ぐに喜ぶ二人の姿に、オリビアは口をむにゃむにゃと動かして溢れそうな感情を押さえているようだった。
「ふふふっ。マーカス、二人にお茶をお出しして?」
「はっ、畏まりました」
そんな三人の微笑ましいやり取りを目にして、リリーナは口元を押さえながら微笑みを漏らしている。
彼女が一声掛けると、部屋の隅で控えていた金髪の好青年、マーカスが素早く紅茶をいれ始めていた。
「マーカスくーん、ボクにはお菓子もねー。甘い焼き菓子がいいなー」
「あ、私はクリームがいっぱい乗った奴がいいな。えへへ、いいかなマーカス君?」
リリーナが待っているテーブルへと素早く移動した二人は、そこに紅茶を用意しているマーカスに更なる注文を付けている。
「・・・あんた達、ある意味凄いわね。あれでもあいつ、オブライエン家の御曹司なのよ?怖かったりしないの?」
そんな二人の遠慮のない態度に、オリビアは遅れて席につきながら呆れた表情を見せている。
「えー?だってマーカス君とはもう友達だしー。それにねー、マーカス君は実は―――」
二人から馴れ馴れしい態度を取られても、マーカスは困ったように微笑むばかり。
その態度はネロの言葉を裏付けていたが、彼女はそれ以外に理由があるのだと仄めかす。
「だ、駄目だよネロ!それは言っちゃ駄目だって、おとーさんが!」
「あ、そうだった!うっかりしちゃってた、ごめんごめん!」
ネロが口にしようとしていた何か、それを彼女の隣に座っていたプティが慌てて止めている。
それに何かを思い出し平謝りしているネロに、プティは頬を膨らませると可愛らしく怒って見せていた。
「・・・?まぁ、何でもいいけど。それより、今日は何をして遊びますの?こう何日も続いて来られると、やる事もなくなってしまいますわ」
「うーん、そうだなー・・・だったら外に遊びに行こうよ!」
「わー、楽しそう!私も賛成だな。ね、いいでしょオリビア?そうしようよ」
二人のやり取りに不思議そうに首を傾げたオリビアは、それをどうせいつものよく分からないやり取りだと決めつけると、二人に何をして遊ぶのかと尋ねる。
それにマーカスが運んできた焼き菓子を摘まみながら頭を捻ったネロは、外にお出かけしようと提案していた。
「そうしようって・・・貴方達、分かってますの?今のリリィは王族、王女様なのよ?そんなリリィが、そう易々とお出かけなんて・・・」
「あら、いいじゃないですかお嬢様。構わないわよね、マーカス?」
ネロのアイデアに盛り上がる二人、それに対してオリビアは難色を示していた。
彼女はかつてと違い、リリーナはもうそう簡単に外に出歩いていい身分ではないと口にする。
しかしそんな彼女の懸念は、リリーナ自身に否定されていた。
「はい、お忍びならば構わないと思います。僕がしっかり、皆をお守りいたしますので」
リリーナから同意を求められたマーカスも、それを否定する事はない。
彼は寧ろそうした場こそ自分の存在をアピールする場だと、胸を叩いて安心してくれと示していた。
彼が目の前で繰り広げられるリリーナ達のやり取りに違和感を覚えないのは、彼女達と過ごすうちにその事情をある程度理解したからだろう。
「やったー!じゃあすぐ行こう!ほらほら急いで!!」
「ま、待ってよネロ!まだケーキが、もむもむ・・・」
「あはははっ!プティの顔にお髭が生えちゃった!もらーい!」
リリーナからお出かけの許しが出た事ではしゃぎ、急いで出かけようとするネロ。
それに慌てて残っていたケーキを口に放り込んだプティの口元には、クリームがたっぷりとへばりついている。
その姿に笑い声を上げたネロは、彼女へ顔を近づけるとそのクリームをペロリと舐め取っていた。
「二人とも、少しは落ち着いたらどうなの!?もぅ、仕方のない方ですこと!ほら、リリィも急ぎますわよ!」
クリームを舐め取られたプティは、お返しとばかりにネロの口元についた焼き菓子の欠片を舐め取っている。
そんな二人の騒がしい様子を目にしながら、オリビアを不満そうに頬を膨らませる。
しかし彼女自身も久々のお出かけが楽しみで仕方ないのか、落ち着かない様子で腰を浮かせていた。
「ふふっ、えぇ。少し待ってくださいお嬢様、すぐに行きますから」
オリビアに急かされ、リリーナは微笑みながら席を立つ。
その後ろには、無言のまま控えるマーカスの姿もあった。
そうして皆がすっかりお出かけへの準備を整えていると、今まさに開け放たれようとしていた扉が逆に外側から開かれていた。
「リリーナ姉様、余と遊びに出かけるぞ!!」
そこから現れたのは二人の召使を引き連れた幼王、ジョンであった。
「姉様は、余と遊びに出かけるのだ!」
「うー!リリィはボク達と遊びに行くの!!」
突如現れた幼王ジョン、彼は王族の中でも特に年齢の近く、そのうえ美人で優しいリリーナを慕っていた。
そんな彼が、リリーナをお忍びに誘う事は珍しい事ではない。
リリーナも、そんな彼の誘いをあえて断りはしないだろう。
しかし、今日は事情が違った。
「何だと!?余は王だぞ、その王の命に逆らうのか!?」
「ふーんだ!王が何だってのさ!ボク達の方が先約なんだぞ!だったらボク達と遊びに行くのが筋じゃないのさ!!」
「そ、そーだそーだ!」
幼王ジョンを真正面から睨み付け、ネロは一歩も譲らないと腕を組んでいる。
そのネロに幼王ジョンも一歩も引くことなく、彼女を睨み付ける。
そんな二人の様子に周りはオロオロと戸惑っていたが、プティだけは勇気を振り絞ってネロの味方をしていた。
「あ、あんた達、相手は王様なのよ?その、それぐらいに・・・」
「お、王様。そ、それぐらいにしといてやるんだな。か、可哀そうなんだな」
二人にはそれぞれの身内、オリビアとヌーボから制止の声が届く。
「「うるさい!!」」
しかし、そんな声で止まる二人ではなかった。
その奇妙なほどに揃った制止を振り払う声にも、彼らの対立は収まる事はない。
「なら、こうしましょう。皆でお出かけしては?それなら問題ないでしょう、ね?ジョン、ネロちゃんも」
いつまでも続くかに思われたその対立は、その鶴の一言によって急激に萎んでいく。
その声を発したのは、二人の間に立って手を合わせ、優し気な微笑みを浮かべているリリーナのものであった。
「・・・姉様がそう言うなら」
「うー・・・分かった」
お互いにまだ不満そうながら、納得を口にするジョンとネロの二人。
「「ふんっ!」」
二人は再び顔を合わせると不満そうに鼻を鳴らし、わざとらしいほどに顔を背けていた。
王族や高貴な女性達が使う姫百合の間、その場所に不釣り合いな騒がしい声が響く。
そんな声に対して、その場に行きかう人々からクスクスとした笑い声が漏れていた。
しかしそれらの笑い声は嘲りの色はなく、どこか歓迎するような雰囲気が溢れていた。
「一々大声で呼ばなくても聞こえていますわ!!さっさとお入りになって、あぁ恥ずかしい!」
「「わーい」」
その大声に慌てた様子で扉を開いたのは、金髪の美少女オリビアであった。
彼女は顔を真っ赤に染めながら、扉の前で待っていた二人を招き入れる。
それにお互いの尻尾をパタパタと絡ませながらついて行ったのは、ピンと立った猫の耳とへにゃんと垂れた犬の耳を持った二人の少女であった。
「ふぅ・・・全く、貴方達また来ましたの?これで一体、何日連続だと思って?もう少し他に行くところとかないのかしら?」
その二人の少女、ネロとプティを部屋の中に招き入れたオリビアは、扉を閉めてそこへと背中を預けると、ようやく安心したといった様子で彼女達に嫌味を口にする。
「えー、だってオリビアと遊びたいんだもん!ね、プティ?」
「ねー?」
しかしそんな嫌味も、ネロとプティの二人には通用しない。
彼女達はお互いに頬を触れるような距離で顔を見合わせると、オリビアと遊ぶことより楽しい事はないのだとはっきりと口にする。
「ふ、ふんっ!そ、それなら仕方がないわね!遊んであげない事もないわ!」
「「やったー!」」
二人の真っ直ぐな態度に見事な反撃を食らい頬を真っ赤に染めたオリビアは、腕を組み顔を背け片目を開けては遊んであげなくもないと渋々と口にする。
その言葉にも真っ直ぐに喜ぶ二人の姿に、オリビアは口をむにゃむにゃと動かして溢れそうな感情を押さえているようだった。
「ふふふっ。マーカス、二人にお茶をお出しして?」
「はっ、畏まりました」
そんな三人の微笑ましいやり取りを目にして、リリーナは口元を押さえながら微笑みを漏らしている。
彼女が一声掛けると、部屋の隅で控えていた金髪の好青年、マーカスが素早く紅茶をいれ始めていた。
「マーカスくーん、ボクにはお菓子もねー。甘い焼き菓子がいいなー」
「あ、私はクリームがいっぱい乗った奴がいいな。えへへ、いいかなマーカス君?」
リリーナが待っているテーブルへと素早く移動した二人は、そこに紅茶を用意しているマーカスに更なる注文を付けている。
「・・・あんた達、ある意味凄いわね。あれでもあいつ、オブライエン家の御曹司なのよ?怖かったりしないの?」
そんな二人の遠慮のない態度に、オリビアは遅れて席につきながら呆れた表情を見せている。
「えー?だってマーカス君とはもう友達だしー。それにねー、マーカス君は実は―――」
二人から馴れ馴れしい態度を取られても、マーカスは困ったように微笑むばかり。
その態度はネロの言葉を裏付けていたが、彼女はそれ以外に理由があるのだと仄めかす。
「だ、駄目だよネロ!それは言っちゃ駄目だって、おとーさんが!」
「あ、そうだった!うっかりしちゃってた、ごめんごめん!」
ネロが口にしようとしていた何か、それを彼女の隣に座っていたプティが慌てて止めている。
それに何かを思い出し平謝りしているネロに、プティは頬を膨らませると可愛らしく怒って見せていた。
「・・・?まぁ、何でもいいけど。それより、今日は何をして遊びますの?こう何日も続いて来られると、やる事もなくなってしまいますわ」
「うーん、そうだなー・・・だったら外に遊びに行こうよ!」
「わー、楽しそう!私も賛成だな。ね、いいでしょオリビア?そうしようよ」
二人のやり取りに不思議そうに首を傾げたオリビアは、それをどうせいつものよく分からないやり取りだと決めつけると、二人に何をして遊ぶのかと尋ねる。
それにマーカスが運んできた焼き菓子を摘まみながら頭を捻ったネロは、外にお出かけしようと提案していた。
「そうしようって・・・貴方達、分かってますの?今のリリィは王族、王女様なのよ?そんなリリィが、そう易々とお出かけなんて・・・」
「あら、いいじゃないですかお嬢様。構わないわよね、マーカス?」
ネロのアイデアに盛り上がる二人、それに対してオリビアは難色を示していた。
彼女はかつてと違い、リリーナはもうそう簡単に外に出歩いていい身分ではないと口にする。
しかしそんな彼女の懸念は、リリーナ自身に否定されていた。
「はい、お忍びならば構わないと思います。僕がしっかり、皆をお守りいたしますので」
リリーナから同意を求められたマーカスも、それを否定する事はない。
彼は寧ろそうした場こそ自分の存在をアピールする場だと、胸を叩いて安心してくれと示していた。
彼が目の前で繰り広げられるリリーナ達のやり取りに違和感を覚えないのは、彼女達と過ごすうちにその事情をある程度理解したからだろう。
「やったー!じゃあすぐ行こう!ほらほら急いで!!」
「ま、待ってよネロ!まだケーキが、もむもむ・・・」
「あはははっ!プティの顔にお髭が生えちゃった!もらーい!」
リリーナからお出かけの許しが出た事ではしゃぎ、急いで出かけようとするネロ。
それに慌てて残っていたケーキを口に放り込んだプティの口元には、クリームがたっぷりとへばりついている。
その姿に笑い声を上げたネロは、彼女へ顔を近づけるとそのクリームをペロリと舐め取っていた。
「二人とも、少しは落ち着いたらどうなの!?もぅ、仕方のない方ですこと!ほら、リリィも急ぎますわよ!」
クリームを舐め取られたプティは、お返しとばかりにネロの口元についた焼き菓子の欠片を舐め取っている。
そんな二人の騒がしい様子を目にしながら、オリビアを不満そうに頬を膨らませる。
しかし彼女自身も久々のお出かけが楽しみで仕方ないのか、落ち着かない様子で腰を浮かせていた。
「ふふっ、えぇ。少し待ってくださいお嬢様、すぐに行きますから」
オリビアに急かされ、リリーナは微笑みながら席を立つ。
その後ろには、無言のまま控えるマーカスの姿もあった。
そうして皆がすっかりお出かけへの準備を整えていると、今まさに開け放たれようとしていた扉が逆に外側から開かれていた。
「リリーナ姉様、余と遊びに出かけるぞ!!」
そこから現れたのは二人の召使を引き連れた幼王、ジョンであった。
「姉様は、余と遊びに出かけるのだ!」
「うー!リリィはボク達と遊びに行くの!!」
突如現れた幼王ジョン、彼は王族の中でも特に年齢の近く、そのうえ美人で優しいリリーナを慕っていた。
そんな彼が、リリーナをお忍びに誘う事は珍しい事ではない。
リリーナも、そんな彼の誘いをあえて断りはしないだろう。
しかし、今日は事情が違った。
「何だと!?余は王だぞ、その王の命に逆らうのか!?」
「ふーんだ!王が何だってのさ!ボク達の方が先約なんだぞ!だったらボク達と遊びに行くのが筋じゃないのさ!!」
「そ、そーだそーだ!」
幼王ジョンを真正面から睨み付け、ネロは一歩も譲らないと腕を組んでいる。
そのネロに幼王ジョンも一歩も引くことなく、彼女を睨み付ける。
そんな二人の様子に周りはオロオロと戸惑っていたが、プティだけは勇気を振り絞ってネロの味方をしていた。
「あ、あんた達、相手は王様なのよ?その、それぐらいに・・・」
「お、王様。そ、それぐらいにしといてやるんだな。か、可哀そうなんだな」
二人にはそれぞれの身内、オリビアとヌーボから制止の声が届く。
「「うるさい!!」」
しかし、そんな声で止まる二人ではなかった。
その奇妙なほどに揃った制止を振り払う声にも、彼らの対立は収まる事はない。
「なら、こうしましょう。皆でお出かけしては?それなら問題ないでしょう、ね?ジョン、ネロちゃんも」
いつまでも続くかに思われたその対立は、その鶴の一言によって急激に萎んでいく。
その声を発したのは、二人の間に立って手を合わせ、優し気な微笑みを浮かべているリリーナのものであった。
「・・・姉様がそう言うなら」
「うー・・・分かった」
お互いにまだ不満そうながら、納得を口にするジョンとネロの二人。
「「ふんっ!」」
二人は再び顔を合わせると不満そうに鼻を鳴らし、わざとらしいほどに顔を背けていた。
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