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うぞうぞわらわら
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さて、目の前に横たわるゾンビ…っぽい男をじっくり観察していると、何点かおかしな事に気が付いた。
まず目につくのが、獣に右腕の肘から先を喰い千切られているというのに、出血がほとんど見られない事。
生きているのか分からないのだから、当然と言えば当然なのだが、痛がる様子も一切見られない。
これは先ほどまでの偵察でも確認してはいたのだが、生きている生物であれば考えられない事だ。
喰い千切られた腕の断面を観察してみると、筋肉なのかどうかわからないが、とにかく肉がピクピクとしている。
医学の知識は、学校での生物で学習した事と家庭の医学程度しかないので、これだけでは何とも言えない。
さらに、瞳孔が開き切っている。まるで暗闇の猫の瞳の様だ。
この部屋がいくら薄暗いとは言っても、これもおかしい。
しかも、さっきからずっと瞬きすらしていない。
次に男の着衣。
豪華な衣服という訳ではないのだが、薄汚れてはいるが、非常にしっかりとした仕立てだ。
これは、この男の身分が高いか、それなりの収入を得ている者だと推測できる。
髪と頭皮を見れば、それも一目瞭然だ。
ほとんどフケも無く、べたついてもいない髪と、皮脂が溜まっていない頭皮は、そこそこの頻度で神を洗っている証拠だ。
リリアさんが、半開きであった口を開け、鼻にも手を当てて確認したのだが、呼吸もしていない。
触診では、手首に脈は全く触れなかったらしいのだが、その代わりに何か変な拍動というか感触があるという。
俺が知る地球のゾンビは、噛みついたりする事で、相手をウィルス感染させるタイプだったんだが…こいつは動かない。
一体、こいつの正体は何だろう?
「衣服を着ている状態での検視では、異常である事はわかりましたが、それ以上の情報は有りませんね」
まあ、視るだけじゃね。
「確認出来る事は、着衣に大きな乱れはなく、汚れ等から判断するに、死後数日といったところでしょうか。死後硬直が無いので、死後80~90時間以上は経過していると考えるのが妥当です」
…何か難しい事言いだしたぞ、こいつ。
「腕の咬創の断面と逆の腕の状態から察するに、噛み千切られた時点で何らかのウィルスが感染しているとは考えにくいですね…血液がほぼ凝固してますので、ウィルスが全身に回る事はないでしょう」
えっと…俺がこの男を見た意味ってあるのか?
「では、次に着衣を取り去り、身体の内部を観察いたしましょう」
それって…切り開くんだよな?
「では、失礼して…でやっ!」
どっから取り出したのか、いつかのサラのボディー交換の時にも見た、刃渡り30cmは有ろうかという、巨大なサバイバルナイフをその手に握っていた。
気合一閃、一振りで男の衣服がばっさりと真っ二つになった。
「ふむ…この男は、大きさは普通ですが…仮性〇茎ですね」
「そこはほっといてやれ!」
こいつは、どこに注目してんだよ!
「つまり、火星人です」
「それはいいから!」
さっきまでの真面目な雰囲気はどこ行ったんだ!
「はあ…心にゆとりは必要ですよ?」
「うるせー! いいからさっさと進めろ!」
俺が怒ってるのをちらりと見た後、ブツブツ言いながらもサバイバルナイフを持つ手を動かし始めた。
ってか、それで腹も掻っ捌く気かよ!
「では、解剖を始めます。まず、腹部を縦に切開し、腹腔内部と内臓の確認を…」
言うが早いか、一気に鳩尾から下腹部までを、サバイバルナイフで一直線に切り裂いた。
俺は、瞬間的に目を背けそうになったが、リリアさんの叫び声で、目を離せなくなった…なぜなら、その腹部から…
「うぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
切り裂いた腹から出てきた物は、うぞうぞと動き回る大量の白い蟲。
正確には、カブトムシの幼虫に似た、真っ白なイモムシ。
それが、切り裂いた腹から、うぞうぞわらわらと溢れ出して来る。
「なんじゃこりゃーーー!」
俺も思わず叫び、リリアさんと一緒になって死体から距離をとった。
「…リリアさん…こいつら…なに?」
「そんなの、私が知るわけ無いでしょ?」
そりゃそうだな。
「だよな…でも、こいつらがゾンビの原因?」
「多分としか言えませんが、その可能性は高いですね…きもっ!」
イモムシの動きは、大して早くも無い…というか、本当にカブトムシの幼虫ぐらいの動きでしかない。
なので、俺達が襲われるとかの心配は無さそうなんだが…
「ふぅむ…10匹ほどサンプルとして確保しましょう」
おぅ…リリアさん、勇気あるなあ。
「残りは焼却処分…これって、燃やしたら死ぬんでしょうか?」
「知るか! 妖精さんに頼んで、焼いてもらうよ! リリアさんは、さっさとサンプル分を確保してくれ!」
俺、絶対に触りたくねーからな。
「女を働かして高みの見物とか、貴方様って最低ですねぇ」
「うるせー! 適材適所だよ!」
リリアさんはブツブツ言いながらも、またもやどっからか取り出した鉄製? の小箱に、これまたどっからか取り出したトングで、イモムシを抓んでは箱にポイッと入れていった。
溢れ出たイモムシは、良く見ると切り開いた腹の中に戻ろうとしているのだろうか、うぞうぞと死体に戻り始めた。
これって、もしかしたら…
「リリアさん、もしかしてこいつらって…」
「貴方様も、それを疑いますか…」
この身体が、こいつらの餌?
いやいや、そうじゃ無くって、
今までの事を考えたら…誰でも考えつく事だけど…
「ダンジョン産の、蟲の幼虫じゃなかろーな?」
「その可能性は、かなり高いかと…」
リリアさんでも、そう思うよなあ。
「……だったら、ちょっと確認しなくちゃな……」
俺は、小箱の中でうぞうぞと動く幼虫を見ながら、呟いた。
まず目につくのが、獣に右腕の肘から先を喰い千切られているというのに、出血がほとんど見られない事。
生きているのか分からないのだから、当然と言えば当然なのだが、痛がる様子も一切見られない。
これは先ほどまでの偵察でも確認してはいたのだが、生きている生物であれば考えられない事だ。
喰い千切られた腕の断面を観察してみると、筋肉なのかどうかわからないが、とにかく肉がピクピクとしている。
医学の知識は、学校での生物で学習した事と家庭の医学程度しかないので、これだけでは何とも言えない。
さらに、瞳孔が開き切っている。まるで暗闇の猫の瞳の様だ。
この部屋がいくら薄暗いとは言っても、これもおかしい。
しかも、さっきからずっと瞬きすらしていない。
次に男の着衣。
豪華な衣服という訳ではないのだが、薄汚れてはいるが、非常にしっかりとした仕立てだ。
これは、この男の身分が高いか、それなりの収入を得ている者だと推測できる。
髪と頭皮を見れば、それも一目瞭然だ。
ほとんどフケも無く、べたついてもいない髪と、皮脂が溜まっていない頭皮は、そこそこの頻度で神を洗っている証拠だ。
リリアさんが、半開きであった口を開け、鼻にも手を当てて確認したのだが、呼吸もしていない。
触診では、手首に脈は全く触れなかったらしいのだが、その代わりに何か変な拍動というか感触があるという。
俺が知る地球のゾンビは、噛みついたりする事で、相手をウィルス感染させるタイプだったんだが…こいつは動かない。
一体、こいつの正体は何だろう?
「衣服を着ている状態での検視では、異常である事はわかりましたが、それ以上の情報は有りませんね」
まあ、視るだけじゃね。
「確認出来る事は、着衣に大きな乱れはなく、汚れ等から判断するに、死後数日といったところでしょうか。死後硬直が無いので、死後80~90時間以上は経過していると考えるのが妥当です」
…何か難しい事言いだしたぞ、こいつ。
「腕の咬創の断面と逆の腕の状態から察するに、噛み千切られた時点で何らかのウィルスが感染しているとは考えにくいですね…血液がほぼ凝固してますので、ウィルスが全身に回る事はないでしょう」
えっと…俺がこの男を見た意味ってあるのか?
「では、次に着衣を取り去り、身体の内部を観察いたしましょう」
それって…切り開くんだよな?
「では、失礼して…でやっ!」
どっから取り出したのか、いつかのサラのボディー交換の時にも見た、刃渡り30cmは有ろうかという、巨大なサバイバルナイフをその手に握っていた。
気合一閃、一振りで男の衣服がばっさりと真っ二つになった。
「ふむ…この男は、大きさは普通ですが…仮性〇茎ですね」
「そこはほっといてやれ!」
こいつは、どこに注目してんだよ!
「つまり、火星人です」
「それはいいから!」
さっきまでの真面目な雰囲気はどこ行ったんだ!
「はあ…心にゆとりは必要ですよ?」
「うるせー! いいからさっさと進めろ!」
俺が怒ってるのをちらりと見た後、ブツブツ言いながらもサバイバルナイフを持つ手を動かし始めた。
ってか、それで腹も掻っ捌く気かよ!
「では、解剖を始めます。まず、腹部を縦に切開し、腹腔内部と内臓の確認を…」
言うが早いか、一気に鳩尾から下腹部までを、サバイバルナイフで一直線に切り裂いた。
俺は、瞬間的に目を背けそうになったが、リリアさんの叫び声で、目を離せなくなった…なぜなら、その腹部から…
「うぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
切り裂いた腹から出てきた物は、うぞうぞと動き回る大量の白い蟲。
正確には、カブトムシの幼虫に似た、真っ白なイモムシ。
それが、切り裂いた腹から、うぞうぞわらわらと溢れ出して来る。
「なんじゃこりゃーーー!」
俺も思わず叫び、リリアさんと一緒になって死体から距離をとった。
「…リリアさん…こいつら…なに?」
「そんなの、私が知るわけ無いでしょ?」
そりゃそうだな。
「だよな…でも、こいつらがゾンビの原因?」
「多分としか言えませんが、その可能性は高いですね…きもっ!」
イモムシの動きは、大して早くも無い…というか、本当にカブトムシの幼虫ぐらいの動きでしかない。
なので、俺達が襲われるとかの心配は無さそうなんだが…
「ふぅむ…10匹ほどサンプルとして確保しましょう」
おぅ…リリアさん、勇気あるなあ。
「残りは焼却処分…これって、燃やしたら死ぬんでしょうか?」
「知るか! 妖精さんに頼んで、焼いてもらうよ! リリアさんは、さっさとサンプル分を確保してくれ!」
俺、絶対に触りたくねーからな。
「女を働かして高みの見物とか、貴方様って最低ですねぇ」
「うるせー! 適材適所だよ!」
リリアさんはブツブツ言いながらも、またもやどっからか取り出した鉄製? の小箱に、これまたどっからか取り出したトングで、イモムシを抓んでは箱にポイッと入れていった。
溢れ出たイモムシは、良く見ると切り開いた腹の中に戻ろうとしているのだろうか、うぞうぞと死体に戻り始めた。
これって、もしかしたら…
「リリアさん、もしかしてこいつらって…」
「貴方様も、それを疑いますか…」
この身体が、こいつらの餌?
いやいや、そうじゃ無くって、
今までの事を考えたら…誰でも考えつく事だけど…
「ダンジョン産の、蟲の幼虫じゃなかろーな?」
「その可能性は、かなり高いかと…」
リリアさんでも、そう思うよなあ。
「……だったら、ちょっと確認しなくちゃな……」
俺は、小箱の中でうぞうぞと動く幼虫を見ながら、呟いた。
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