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J&M商会
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滅多にその主を迎えることのない社長室の自席にどっかりと座り込んで、マイケルの報告を聞いているのかいないのか、珍しくジェイムズは黙り込んだままだ。
ここで「人の話を聞け!」と怒鳴るほどマイケルは短慮ではないし、二人の付き合いも短くはない。
仕事をしていないように見えて、実は洩らさず報告を聞いており、積まれた書類も素早く目を通して吟味し、必要であれば指示を飛ばす。それが一々適切で、時に突拍子がないと思えても結果的に奏功するあたり、ジェイムズの経営者としての手腕は一流だった。深考せずとも最適解を導く頭脳と勘所は、天才的と言っても差し支えない。誰もが認める敏腕社長ではあるが、仕事をしているように見えて興味のあることを追求しているに過ぎない問題児を社長に据えていることが、J&M商会の最大の泣きどころだった。
気がつくと根無し草のようにふらりと異国へ消えている社長を、今回こそロンドンに縛り付けておかなければ。
これまで幾度も辛酸を舐めてきた副社長の声は低く鋭く、鼻息は荒い。
ここで「人の話を聞け!」と怒鳴るほどマイケルは短慮ではないし、二人の付き合いも短くはない。
仕事をしていないように見えて、実は洩らさず報告を聞いており、積まれた書類も素早く目を通して吟味し、必要であれば指示を飛ばす。それが一々適切で、時に突拍子がないと思えても結果的に奏功するあたり、ジェイムズの経営者としての手腕は一流だった。深考せずとも最適解を導く頭脳と勘所は、天才的と言っても差し支えない。誰もが認める敏腕社長ではあるが、仕事をしているように見えて興味のあることを追求しているに過ぎない問題児を社長に据えていることが、J&M商会の最大の泣きどころだった。
気がつくと根無し草のようにふらりと異国へ消えている社長を、今回こそロンドンに縛り付けておかなければ。
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