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J&M商会
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ジェイムズは世界を回って新規拠点の立ち上げ、仕入先と販路の開拓を担当、マイケルは本国に残って事業の基盤固めを担当。生まれも育ちも異なる二人だが、事業に関する歯車はぴたりと合い、J&M商会は順調に業績を伸ばしている。一癖も二癖もある変人だとお互いを斬り付け合う仲だが、それぞれの領域には一切口出しせず、全幅の信頼を置いているからだろう。
「黙って立ってりゃ、いかにもなお貴族様面のあんたは、金持ち連中向けのいい看板にもなるしな」
生まれるべくして貴族に生まれたような男なのに、ジェイムズは堅苦しい上流社会というものがまったく肌に合わない。表面上は進取の気風に富んでいるように見えて、根底では呆れるほどに保守的で黴臭い母国にも執着がない。ひとところに落ち着くことを好まず、新しい土地、見知らぬ地平で出会う人々、見たこともない品々を求めて放浪しているうちに月日は過ぎ、半分冗談で始めたような会社は英国でも屈指の商社になっていた。
「当分ロンドンにいるんだろうな、ジェイムズ」
「黙って立ってりゃ、いかにもなお貴族様面のあんたは、金持ち連中向けのいい看板にもなるしな」
生まれるべくして貴族に生まれたような男なのに、ジェイムズは堅苦しい上流社会というものがまったく肌に合わない。表面上は進取の気風に富んでいるように見えて、根底では呆れるほどに保守的で黴臭い母国にも執着がない。ひとところに落ち着くことを好まず、新しい土地、見知らぬ地平で出会う人々、見たこともない品々を求めて放浪しているうちに月日は過ぎ、半分冗談で始めたような会社は英国でも屈指の商社になっていた。
「当分ロンドンにいるんだろうな、ジェイムズ」
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