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15.王家の秘密

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「ベルトンさん、何を言っているんですか? 俺が国王様の甥っ子なんて、そんな話は聞いたことがありませんよ」
「まあ、先代のアルバーン侯爵夫妻にとっても、不慮の事故でしたからね。あなたに伝えることができなかったのでしょう」
「そ、それは……」

 質問に対する返答に、ルバイトは言葉を詰まらせていた。
 それはベルトンの論に、ある程度納得ができたからなのだろう。事故で亡くなった夫妻が、秘密を抱えたまま亡くなった可能性を、ルバイトは否定できないのだ。

 しかしながら、アリシアとしてはまだまだ疑問があった。
 仮に王家の血が流れていたとして、それをどうして秘匿していたのかがわからなかったのだ。

 だがアリシアは、すぐに思い出していた。
 自分自身が、どういう存在であるのかということを。

「まさか、ルバイト様のお母様は……」
「アリシアさん、鋭いですね。実の所、その通りなのです。ルバイトさんのお母様は、先代の王の隠し子でした。それを今の国王様が知って、アルバーン侯爵に預けることに決めたのです。王家とアルバーン侯爵家に交わされた秘密の約束ですね」
「そ、そんな馬鹿な……」

 冷静になったアリシアに比べて、ルバイトはかなり動揺していた。
 己の意外な出自を知ったのだから無理もないだろう。そう思って、アリシアはベルトンとの話を引き継ぐことにする。

「ルバイト様の出自は理解することができました。しかしながら、それをどうして今知らせに?」
「国王様も悩んでおられました。先代の王の間違いを白日の元に晒すことになりますからね。ただ覚悟したのです。アリシアさんの存在で」
「え?」

 ベルトンとの話を引き継いだアリシアだったが、すぐに固まることになった。
 彼の口から、自分の名前が出てきたからだ。

 今回の件に、アリシアは自分が関わってはいないと思っていた。
 故に予想外のことに、かなり動揺してしまったのである。

「……ベルトンさん、色々ともったいぶるのはあなたの悪い癖ですよ。結局の所、あなたはここに何をしに来たのですか?」
「おっと、そうでしたね。すみません。自覚はしているのですがね……それなら、核心を話すとしましょうか。国王様は、ランベルト侯爵家を潰すつもりなのです」
「な、なんですって……?」

 ベルトンの言葉に、アリシアとルバイトは再び顔を合わせることになった。
 ランベルト侯爵家の名前が出て来るとも、思っていなかったからだ。

 ただ、今までの話を整理していくと見えてくるものがあった。
 それによって、二人はベルトンの方に向き直る。

「アリシアの立場は、国王様の妹、つまり俺の母上と同じ……」
「その私が、ランベルト侯爵家にどういう扱いを受けているかをもしも国王様が知ったとしたら。国王様が、亡き妹さんのことを思っていたとしたら……」
「ええ、概ねお二人の予想通りですよ」

 二人の言葉に対して、ベルトンは笑顔を浮かべていた。
 一見すると穏やかな笑みだが、その笑みがアリシアは少し恐ろしかった。なんというか、その笑顔がひどく残酷に見えたのだ。
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