42 / 80
一章
42
しおりを挟む
舞踏会まで後二週間となって、学院内のざわめきもひときわ大きくなっていた。
わたくしたちは授業のダンスで足を踏み合って笑い転げたり、頭の上に本を置いてまっすぐ歩く練習で何冊詰めるか競う、などして忙しくも楽しい毎日を送っている。
今日は昼食の時間を使って、木陰を陣取り、お茶会ならぬちっちゃなお食事会を開いていた。
メメットが開会にひと声あげる。
「さて、見知った方もいらっしゃるけど、まず各々自己紹介しましょう!」
ぱん!と両手を合わせると彼女は続けて自己紹介をした。
「私はメメット=シルヴァーナ、公爵家の次女よ。婚約者は募集中だから、舞踏会パートナーは、級友のよしみでフレッド=バーグナーに頼んでまーす」
言い終わるやいなや乾杯はすませてあったので、彼女はもきゅもきゅと御飯を食べ始める。
「私はマリアンヌ=ボヌルバです。侯爵家長女です! パートナーはメルティアーラ様のお陰もあって、アルレイド=キルシュ様と出る予定です!!」
マリアは何故かぽぽぽぽぽと頬を染めわたくしを見つめ続けている。
それを受けた形でわたくしが次に口を開いた。
「わたくしは悪名高い踏ん付け令嬢、メルティアーラ=エルンスタですわ! もう数えて十三回程殿方をぐりぐりしてますの」
できる限り高飛車に、表情も家で何回も練習したにやり、という感じになるよう努める。
「….ぶはっ!」
メメットが御飯を吹いた。
うん、仕上げは上々ね。
令嬢としてはしたないという言葉は置いておく、だってやっぱり気のおけない友人との語らいは、笑い合っていたいんだもの。
わたくしはしてやったりとイイ笑顔になりながら続ける。
「婚約者は踏ん付けてペラペラになってしまって、ダンスが踊れませんの。今回は代打で、年下の婚約者のいらっしゃるケンウィット=ガルツァーにパートナーをしてもらいますわ」
言い切ってツンとすます。
今度はマリアが紅茶を吹くまいと、口をすぼませ頬がまるで冬眠前のリスの様だ。
リリッサがくすくす笑いながら、次はわたくしの番ですわね、と口を開いた。
「リリッサ=ヴァニラテですわ。男爵家の次女でございますの。ガイアーク=ルミナリク様と婚約してまして、今度の舞踏会も一緒に行く予定ですわ」
そうふんわりと笑いながらドレスももう出来てますのと、併せて話す。
それから暫くドレス談義に花が咲いた。
ひとしきり話しきると、マリアがそれにしてもと話題を変えた。
「私噂って根も葉もないことも多いのかもって、メルティアーラ様の噂を聞き続けて実感しました。恋の噂とか好きだったんですけどーー思ってもみないことが正解みたいに言われるって、なんか、悔しいし悲しいものですね」
「私は自分のだったらむしろ楽しんじゃうかな~、逆手に取れそうな情報はうまく活用!」
令嬢らしからぬことをメメットが言う。
マリアが、抜け目がなくって素敵……と何だか敬いがすごい。
「……最初はちょっかいをかけてきた殿下を振った、っていうだけでしたのに……あれよあれよと、唆したのはメルティだ、っていうものから、最近はガルツァー様が毒牙にかかった、ですものねぇーーわたくしも、怖いなって、思いますわ」
そう言って、リリッサは、気弱げに微笑んだ。
わたくしたちは授業のダンスで足を踏み合って笑い転げたり、頭の上に本を置いてまっすぐ歩く練習で何冊詰めるか競う、などして忙しくも楽しい毎日を送っている。
今日は昼食の時間を使って、木陰を陣取り、お茶会ならぬちっちゃなお食事会を開いていた。
メメットが開会にひと声あげる。
「さて、見知った方もいらっしゃるけど、まず各々自己紹介しましょう!」
ぱん!と両手を合わせると彼女は続けて自己紹介をした。
「私はメメット=シルヴァーナ、公爵家の次女よ。婚約者は募集中だから、舞踏会パートナーは、級友のよしみでフレッド=バーグナーに頼んでまーす」
言い終わるやいなや乾杯はすませてあったので、彼女はもきゅもきゅと御飯を食べ始める。
「私はマリアンヌ=ボヌルバです。侯爵家長女です! パートナーはメルティアーラ様のお陰もあって、アルレイド=キルシュ様と出る予定です!!」
マリアは何故かぽぽぽぽぽと頬を染めわたくしを見つめ続けている。
それを受けた形でわたくしが次に口を開いた。
「わたくしは悪名高い踏ん付け令嬢、メルティアーラ=エルンスタですわ! もう数えて十三回程殿方をぐりぐりしてますの」
できる限り高飛車に、表情も家で何回も練習したにやり、という感じになるよう努める。
「….ぶはっ!」
メメットが御飯を吹いた。
うん、仕上げは上々ね。
令嬢としてはしたないという言葉は置いておく、だってやっぱり気のおけない友人との語らいは、笑い合っていたいんだもの。
わたくしはしてやったりとイイ笑顔になりながら続ける。
「婚約者は踏ん付けてペラペラになってしまって、ダンスが踊れませんの。今回は代打で、年下の婚約者のいらっしゃるケンウィット=ガルツァーにパートナーをしてもらいますわ」
言い切ってツンとすます。
今度はマリアが紅茶を吹くまいと、口をすぼませ頬がまるで冬眠前のリスの様だ。
リリッサがくすくす笑いながら、次はわたくしの番ですわね、と口を開いた。
「リリッサ=ヴァニラテですわ。男爵家の次女でございますの。ガイアーク=ルミナリク様と婚約してまして、今度の舞踏会も一緒に行く予定ですわ」
そうふんわりと笑いながらドレスももう出来てますのと、併せて話す。
それから暫くドレス談義に花が咲いた。
ひとしきり話しきると、マリアがそれにしてもと話題を変えた。
「私噂って根も葉もないことも多いのかもって、メルティアーラ様の噂を聞き続けて実感しました。恋の噂とか好きだったんですけどーー思ってもみないことが正解みたいに言われるって、なんか、悔しいし悲しいものですね」
「私は自分のだったらむしろ楽しんじゃうかな~、逆手に取れそうな情報はうまく活用!」
令嬢らしからぬことをメメットが言う。
マリアが、抜け目がなくって素敵……と何だか敬いがすごい。
「……最初はちょっかいをかけてきた殿下を振った、っていうだけでしたのに……あれよあれよと、唆したのはメルティだ、っていうものから、最近はガルツァー様が毒牙にかかった、ですものねぇーーわたくしも、怖いなって、思いますわ」
そう言って、リリッサは、気弱げに微笑んだ。
0
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜
八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」
侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。
その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。
フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。
そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。
そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。
死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて……
※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。
「優秀すぎて鼻につく」と婚約破棄された公爵令嬢は弟殿下に独占される
杓子ねこ
恋愛
公爵令嬢ソフィア・ファビアスは完璧な淑女だった。
婚約者のギルバートよりはるかに優秀なことを隠し、いずれ夫となり国王となるギルバートを立て、常に控えめにふるまっていた。
にもかかわらず、ある日、婚約破棄を宣言される。
「お前が陰で俺を嘲笑っているのはわかっている! お前のような偏屈な女は、婚約破棄だ!」
どうやらギルバートは男爵令嬢エミリーから真実の愛を吹き込まれたらしい。
事を荒立てまいとするソフィアの態度にギルバートは「申し開きもしない」とさらに激昂するが、そこへ第二王子のルイスが現れる。
「では、ソフィア嬢を俺にください」
ルイスはソフィアを抱きしめ、「やっと手に入れた、愛しい人」と囁き始め……?
※ヒーローがだいぶ暗躍します。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる