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タイトル回収

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「お前か?俺の聖女は?」
突然、偉そうな声が後ろから聞こえてきた。
足音は1人分。
もしかして、皇帝がみずから誰も護衛をつけずに来たというのか。

「皇帝陛下!申し訳ありません。この場所は聖女だけが入れる神聖な場所。皇帝陛下であろうとも、立入が禁止されている区域でございます!お下がり下さい。」
怖いだろうにシーラが、レイリエルとマーレットのの間に震えながら立つ。

「別に、そんなしきたりは意味のないものよ。…………シーラは外で待ってて。」
「……は、はい。」
さっきの皇帝陛下に対する態度に、今さら恐怖を感じたのか素直に肩を落として出ていく。
 
「なるほど。なかなか見込みのある侍女だ。ああいう気概のある人材は大切にするといい。」
「……私はの私のものであって貴方のものでは無いはずですが、聖女なのは確かです。」
さっきの不遜な挨拶の返事を、後ろ姿のまま、少しピリピリとした声です。

「そうだな。言い方が悪かった。」
意外にもすぐに謝られて、ゆっくりと振り返ると、そこには、今まで会いたくても会えなかった皇帝が腕を組み立っていた。

7才にここに来てから初めて会う同世代の男性だ。
あまりの美しい雄々しさにマーレットの目が徐々に見開く。
後ろで一つに結んだ長い髪は艷やかな黒髪で、切れ長な綺麗な形の目は濃い紫の色をしていて、夜の闇のようだ。
……それに加え、整いすぎているくらいの美しいの顔と、恵まれた体格に見とれてしまう。

マーレットは、その神々しいオーラに負けないように、皇帝の側まで歩き、30センチは高いだろうレイリェルの顔に背伸びをして顔を近づける。
こっちだって聖女だと、キッと、強い目で見つめる。
すると、さらに、レイリェルは顔を近づけ、横柄な話し方をしてきた。
少しでも動いたらふれそうな距離に、下がろうとするが負けた気がしてさらに上を見てにらむ。

「男がめずらしいか?そんなに見つめて。」
睨むつもりが、じっと見つめてしまった。

仕方がないのだ。
前の聖女が門番の男と駆け落ちしたばっかりに、まわりの人は私には同世代の男性とは誰も会わせてくれなかった。
結婚範囲内の年齢の男性は、この塔に来る前にジョルジュと会ったのが最後だ。
「見つめてません!にらんでるんです。」
「……面白いやつだな。見た目は儚げなのに、これは詐欺だろう?まあ、手紙は多少、自己主張が強かったが……。」

なんなのだろうか。
いきなり、初対面で悪口を言うなんて。
かっこいいけど、外見は最高だけど!

……レイリエルも、手紙通り不遜でそっけないのに!と言おうと思ったが寸前で止まれた。
これじゃ、子供の喧嘩だ。
でも、モヤモヤがおさまらず、ついつい、負けん気が出てきてしまって反論してしまった。

「前の聖女は、騎士と駆け落ちしたって聞いたわ。だから、だから、しょうがなく私が選ばれたのよね。だから気に入らなくても、我慢して下さいませ!」
「………誤解してないか?俺はあの時には、事前に説明を受けているし、逃げられてはいない。同意の上だ。それに俺はお前が婚約者で、喜んでいる。もう、我慢などしない。」

そう言って、ふわりと頭につばの大きい帽子を乗せられた。
「明日から、表向きは外遊。事実上は婚前旅行に行くぞ。支度をしておけ。」

不遜な態度にあきれつつ、やっと自由に外へ出られることにドキドキがとまらなくなっていた。

聖女のしきたりで唯一嬉しいのが、16才になった時の婚前旅行が1年間もあることだ。
しかも、魔法が使える皇帝陛下に勝てる人はいないので、護衛もいらない。
最初の第一印象は悪かったけど、私が婚約者である事を喜んでくれているという嘘かもしれないの優しさに胸が高鳴る。
私は何て、単純なんだろうと思いつつも、顔がにやけてきてしまう。

気恥ずかしさを隠すように、マーレットは、さっきの聖花をクロードの胸元にさした。





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