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イシス王国&ドルイド王国編

移動中の談笑

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【移動中の馬車内】
優輝の同郷である魔女の有栖に、ボロカスに言われた彼の話で笑っている一行。だが決して優輝を馬鹿にしている訳ではない。ただ笑える材料が欲しかったのだ、それほどイシス王国防衛戦が過酷だった
メンバーはフレメイル兄妹と、アドルと三姉妹、異世界勇者の優輝とアサシンのミクイ

「そう言えば優輝さん…例のダークエルフは連れて来なかったのかい?」

かつて何度か彼女と衝突したカルーアは、彼女の姿が見当たらないので質問した

「ミントスは俺を庇ってくれた時に負った背中の裂傷が完治していないから、イシスで治療を受けてもらってるんだ」

「なるほど…その代わりにアサシンのミクイさんが同行してますのね…」

サーシャにしては珍しい反応だ

「サーシャちゃんが求愛してくれたら…昼間でもミクイは襲いますよ!」

「ε٩(๑>ω<)۶зもう!変態さんですの!」

「サーシャが苦手な人って、珍しいねぇ」

性的な事に開放的なサーシャは、相手が男女であろうと気に入った相手にはアプローチしていくのだが…相手から一方的に求愛されるのは苦手のようだ
アリスも末っ子の見慣れない姿に、興味を覚えていた


「そうそうカルーアさん、【渇望の魔女】の得意魔法【七精守護霊(ハーロウィーン)】が使えるんだってね。凄いね、どうやって習得したの?」

「ボクも前々から気になってたよ、たしか孤児院に入ってたり、Bランク冒険者に育てられてたから、極大魔法をいつ覚えたのかと…」

地球から来た優輝も魔法剣士であるアドルも、カルーアがその若さで極大魔法の中でも最上位にあたる【七精守護霊】を使える事に驚いている様だ

「その事かい?…本当は「他種族には非公開」だと産みの母親…つまり、リリアさんが転移しようとしている身体で生きてた人。わたしのお母さんから聞いた話なんだけど…
わたし達ハイエルフは、先代の知識や記憶を受け継げる能力があるらしいんだ。生まれた時から身に付いている物や、本人の成長に併せて記憶に刻まれてくる物など色々だけどね」

「便利ですね!なんか羨ましい…そだ!【消去の魔女】が使ってたあの【天陣】て魔法を見て、何か理解出来ました?」

「あぁ、アレか…あの魔法は凄いね!そもそも魔法かどうかも分からないけど…アレは凄まじい魔力増幅装置の役割を果たしていたみたいだね」

「すまんな!頭の良くない俺にも分かるように説明してくれないか?」

「そうだね…下級魔法を使うのに必要な魔法力をアレに通すと、上位魔法が発動できる感じに増大してくれるみたいなんだよ」

「うーん、イマイチよく分からんな…」

かなり分かりやすい説明だったが、イマイチ頭の良くないドレイクには理解できていない

「ドレイクさんにもわかりやすく言うと…優輝が天陣の作用を受けると…ドレイクさんみたいな強さになる!って感じよ」
 

「おお、マジか!?そりゃスゲーな!」

「なぁミクイ…分かりやすいけど、俺は凄く複雑な気分だよ…」

結局、またしても優輝がカラカワれる対象になっていた。今までたどたどしい口調だったミクイが、最近は一転して気持ち良く話していた



【嘆きノ森】
アリスとアドルが1度通りスノーウーマンを倒した事で、アリスが氷結のスキルを身に付けた場所にやって来た

「……ココって前に通った時は、スノーウーマン以外にも沢山の魔物が居たけど…今日は全然見ないねぇ…」

「そうなのかい?」

アリスの発言に返事したカルーア。更にミンクが、その質問に対する回答を言った

「理由は簡単!今日はドレイクと私が居るんだもの。魔物も敵わない強者を前に、隠れてるんでしょうね♪」

「そうなんだよなぁ、俺達で魔物討伐に何度か出掛けたが…魔物と遭遇した事なんて1回しかないんだよな。つまらんが…俺達がそれだけ強いって事だから仕方ねーな、ガーハッハッハッ!」

「なるほどね、臥龍の一族の中でも最強の2人の存在に、魔物も思わず隠れるんだね…それを考えるとボクはまだまだだな…」

以前アドルとアリスで、通過しようとした時は魔物に襲われたのだが、今回はフレメイル兄妹が居るから魔物は恐れて現れない。アドルとドレイクの強さの差が、嫌でもハッキリ理解できた。そんな時…

「あら?あそこに小さな魔物が居ますの!」

サーシャが遠くに小さな人影を見つけた

「んぁ?…あぁアレは魔物じゃねーよ」

「ドワーフ族の亜種のモワーフ族ですわ。背丈はドワーフより少し小さく、大量のもふもふ毛並みが特徴ですよ」

嘆きノ森を抜ける頃、身長70cm程のもふもふした可愛い3人がドレイク達に手を振っている

「お帰りなさい、ドレイク様、ミンク様!」x3

どうやら3人はフレメイル兄妹を迎えに来たようだ。ドレイクは3人を一気に抱き抱えると、そのまま馬車に乗せた

「へぇ、モワーフ族 可愛いですの!」

「ほら、お前たち挨拶しろ」

「モワーフ族のマモフです」
「ミモフでしゅ」
「メモフだよ」

見た目や喋り方からミモフが女の子で、他の2人は男の子の様だ

「ね、ねぇ…なでなでして良いぃ?」

「良いですよ」

アリスはマモフをモフモフすると、蕩(とろ)ける様な笑顔を浮かべた

「そ、そんなに良いのかい姉さん…あの、わたしも良いかな?」

「良いでしゅ!」

ミモフを撫で撫でした途端、普段のカルーアからは考えられない甘い声を出した

「もふる?」

うずうずしているサーシャに、メモフの方から誘ってきてくれた

「ふわぁ…モフモフで気持ち良いです…のひゃあっ!?」

サーシャも最高の毛並みを味わったが、最後に驚きの声が出た。サーシャはプルプル震えている

「ミクイさんでしたよね…止めてって言いましたの!」

サーシャは後方に頭突きを入れた。が、ヒラリと、目に見えない何者かが回避した

「もぉー!優輝さんのお連れさんでしょ、ちゃんと管理して欲しいですの!」

「そ、そんな事言ったって…見えないんだから、どうしろって言うんだよ…」

そんな言い訳をした優輝だったが、アドルが無造作に何も無い筈の空間に手を伸ばした
「ガシッ!」
アドルに首根っこを掴まれたミクイが現れた

「イタズラばかりしてちゃ駄目だよ」

「ぐぬぅ、やるなイシスの勇者…」

優輝は見えないから仕方ないと言ったが、アドルは姿の無い気配を察知して捕まえた

「まぁ、俺も出来るがな」

「ミンクもよ」

またしても実力不足を認識させられた優輝だった。遮る者が現れない馬車は順調に【ドルアーガ王国】へ向かう



続く
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