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第5話
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ヘインリード公爵閣下から連絡があり、ギラルロイ伯爵家はディーンズの身分を剥奪し家から追放したと知らされた。
「まるでトカゲの尻尾切りじゃない。ディーンズを身代わりにして責任の追及を逃れるつもりね…」
客観的にはディーンズに責任取らせたことになる。
身分を失い家から追放され平民として生きることになるなら十分すぎるほどの処分だと判断されるはず。
これ以上の処分を求めればヘインリード公爵家が批判されてしまうかもしれない。
そうなればこれ以上私に協力することはないだろうし、後々まで禍根を残すことになりそう。
ギラルロイ伯爵が一枚上手だったことは認めてあげる。
「ディーンズの処分は外部に周知されているの?」
「いえ、そのような話はまったく広まっていません」
控えていた執事が答えた。
彼は当家の使用人たちを統括する立場であり、配下には諜報員もいるので情報が集まってくる。
諜報員たちの報告が根拠なのだろうから、ギラルロイ伯爵家は事態を広めずに評判を下げないようにしたのだと思う。
逆に考えれば評価を下げたくないということ。
それが弱みね。
ヘインリード公爵閣下はもう十分だと考えているかもしれない。
いくら公爵閣下に非があるといっても、これ以上私から要望を伝えると逆に私を疎ましく思うかもしれない。
ここが引き際だと思う。
でもディーンズとギラルロイ伯爵家への制裁が終わったわけではない。
「ヘインリード公爵閣下にも会わないといけないわね。日程の都合は任せるわ。それと…諜報員を使って平民たちに噂を流して。隠し子の存在が明らかになったことでディーンズが責任を取らされて平民落ちしたことを」
「はっ」
諜報員たちは情報収集が主な任務だけど、こういう場合には工作員にもなる。
会話の中に意図的に流したい噂を含めれば諜報と同時に工作もできるから。
少しは真実を広めてあげないとね。
ディーンズがしたことを平民がどう判断するか見物だわ。
ギラルロイ伯爵家がその程度の処分で済ませるなら、足りない分は平民に判断してもらう。
相手が平民だからと子供を作って放置するような男が平民落ちしたと知ればどうなるのかしら?
その時だった。
メイドが来客を知らせてきた。
「失礼します、セシーリアお嬢様。ディーンズ様が訪ねてまいりましたがどうなさいますか?」
やはりディーンズが平民したことは周知しないといけないと思った。
まだヘインリード公爵閣下の報告を受けたばかりだから知らないことを責めることはできないけど、あんな男に様付けする必要はなく、メイドに非がないことは理解しているけど不愉快だった。
「ディーンズが平民落ちしたようだから今後は様付けなんて不要よ。それと平民が訪ねてきても会う必要なんてないわ。適当に追い返してちょうだい。もし抵抗するようなら警備兵でも何でも使って追い出しなさい」
「かしこまりました」
メイドは一礼して下がって行った。
ディーンズのことだから謝罪ではなく私を責めるために来たのだろう。
身分を失ったというのにモーラン伯爵家の令嬢である私に無礼を働けばどうなるのか想像できなかったのだろうか。
謝罪しても許さないし、責められたら侮辱罪で処刑してしまうかもしれない。
でもそんなことをすれば狭量だと非難されるかもしれないし、最初から追い返してしまえば一番面倒がない。
まったく…どこまでも私に迷惑をかけ続けるのね。
もう少し追い込まないと反省できないのかもしれない。
きっと反省なんてしないけど。
「まるでトカゲの尻尾切りじゃない。ディーンズを身代わりにして責任の追及を逃れるつもりね…」
客観的にはディーンズに責任取らせたことになる。
身分を失い家から追放され平民として生きることになるなら十分すぎるほどの処分だと判断されるはず。
これ以上の処分を求めればヘインリード公爵家が批判されてしまうかもしれない。
そうなればこれ以上私に協力することはないだろうし、後々まで禍根を残すことになりそう。
ギラルロイ伯爵が一枚上手だったことは認めてあげる。
「ディーンズの処分は外部に周知されているの?」
「いえ、そのような話はまったく広まっていません」
控えていた執事が答えた。
彼は当家の使用人たちを統括する立場であり、配下には諜報員もいるので情報が集まってくる。
諜報員たちの報告が根拠なのだろうから、ギラルロイ伯爵家は事態を広めずに評判を下げないようにしたのだと思う。
逆に考えれば評価を下げたくないということ。
それが弱みね。
ヘインリード公爵閣下はもう十分だと考えているかもしれない。
いくら公爵閣下に非があるといっても、これ以上私から要望を伝えると逆に私を疎ましく思うかもしれない。
ここが引き際だと思う。
でもディーンズとギラルロイ伯爵家への制裁が終わったわけではない。
「ヘインリード公爵閣下にも会わないといけないわね。日程の都合は任せるわ。それと…諜報員を使って平民たちに噂を流して。隠し子の存在が明らかになったことでディーンズが責任を取らされて平民落ちしたことを」
「はっ」
諜報員たちは情報収集が主な任務だけど、こういう場合には工作員にもなる。
会話の中に意図的に流したい噂を含めれば諜報と同時に工作もできるから。
少しは真実を広めてあげないとね。
ディーンズがしたことを平民がどう判断するか見物だわ。
ギラルロイ伯爵家がその程度の処分で済ませるなら、足りない分は平民に判断してもらう。
相手が平民だからと子供を作って放置するような男が平民落ちしたと知ればどうなるのかしら?
その時だった。
メイドが来客を知らせてきた。
「失礼します、セシーリアお嬢様。ディーンズ様が訪ねてまいりましたがどうなさいますか?」
やはりディーンズが平民したことは周知しないといけないと思った。
まだヘインリード公爵閣下の報告を受けたばかりだから知らないことを責めることはできないけど、あんな男に様付けする必要はなく、メイドに非がないことは理解しているけど不愉快だった。
「ディーンズが平民落ちしたようだから今後は様付けなんて不要よ。それと平民が訪ねてきても会う必要なんてないわ。適当に追い返してちょうだい。もし抵抗するようなら警備兵でも何でも使って追い出しなさい」
「かしこまりました」
メイドは一礼して下がって行った。
ディーンズのことだから謝罪ではなく私を責めるために来たのだろう。
身分を失ったというのにモーラン伯爵家の令嬢である私に無礼を働けばどうなるのか想像できなかったのだろうか。
謝罪しても許さないし、責められたら侮辱罪で処刑してしまうかもしれない。
でもそんなことをすれば狭量だと非難されるかもしれないし、最初から追い返してしまえば一番面倒がない。
まったく…どこまでも私に迷惑をかけ続けるのね。
もう少し追い込まないと反省できないのかもしれない。
きっと反省なんてしないけど。
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