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第6話
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まったくセシーリアは何様のつもりなんだ?
せっかく俺が尋ねていったというのに使用人が門前払いするなんて酷い。
それに文句を言ったら警備兵まで呼ばれてしまった。
俺は今でこそ平民となってしまったが元貴族であり由緒正しきギラルロイ伯爵家の人間だった。
それなのにそんな扱いをして許されるとでも思っているのか?
やはりセシーリアは酷い女だ。
こんなときは飲んで憂さ晴らしするか。
幸いなことに金は十分にある。
平民向けの不味い酒場で飲むしかないなんて俺も落ちぶれたものだな。
それも全部セシーリアのせいだ。
そのセシーリアと婚約することになったのもヘインリード公爵のせいだ。
どうせ婚約するなら子爵家の令嬢のほうが従順だっただろう。
あえて同じくらいの力関係の貴族家と婚約させたのもヘインリード公爵の陰謀か?
そんなことを考えるときりがない。
まあしばらくは平民としての生活を楽しんでやろうじゃないか。
今までとは違う生活も目新しさはあるからな。
それに平民を観察するのも新鮮な経験だ。
* * * * * * * * * *
平民向けの酒場は品がない。
酒を飲んで騒ぐのは当然であり、娼婦が誘ってくるのも当然だった。
飯も酒も不味いが貴族の社交パーティーとはまた違った品のない噂話も意外に下種で楽しめた。
酔った男なんてくだらない話しかしない。
これが平民というものなのだな。
根拠のない噂話というのも平民にとっては娯楽の一種なのだろう。
そんな噂話の一つに、まさか俺のことがあるなんて驚きだった。
しかも都合良く事実を改ざんしたもので、俺を非難するようなものになっていた。
そもそもあの女には手切れ金も払ってお互いに納得済みだ。
俺が家から追放されたのはギラルロイ家を守るためであり、ヘインリード公爵家からの理不尽な追及を躱すためだった。
それなのに俺が一方的に女と子供を捨てただなんて悪意しかないだろう。
そんな噂を広めるとすればセシーリアか。
セシーリアしかいないよな。
どこまでも俺を追い詰めたいようだ。
そんな冷酷な女と結婚せずに済んだのは幸いだったが、でもまさか俺が平民落ちするとは思わなかった。
やはりセシーリアと関わったのが不幸の始まりだった。
「くそっ、不味い酒がもっと不味くなったじゃないか」
そういえばあの女はどの辺に住んでいたかな?
また抱いてやるのもいいだろう。
その辺の娼婦相手だと病気が怖いし、余計な金を使わないで済むならそのほうがいい。
何しろ十分な手切れ金は支払ったのだから、恩義を感じていれば拒まないだろう。
酒ばかりの日々にも飽きてきたし、久々に顔を見てやろう。
その辺の人間に訊いてみれば家もわかるだろう。
とりあえず目的は決まった。
せっかく俺が尋ねていったというのに使用人が門前払いするなんて酷い。
それに文句を言ったら警備兵まで呼ばれてしまった。
俺は今でこそ平民となってしまったが元貴族であり由緒正しきギラルロイ伯爵家の人間だった。
それなのにそんな扱いをして許されるとでも思っているのか?
やはりセシーリアは酷い女だ。
こんなときは飲んで憂さ晴らしするか。
幸いなことに金は十分にある。
平民向けの不味い酒場で飲むしかないなんて俺も落ちぶれたものだな。
それも全部セシーリアのせいだ。
そのセシーリアと婚約することになったのもヘインリード公爵のせいだ。
どうせ婚約するなら子爵家の令嬢のほうが従順だっただろう。
あえて同じくらいの力関係の貴族家と婚約させたのもヘインリード公爵の陰謀か?
そんなことを考えるときりがない。
まあしばらくは平民としての生活を楽しんでやろうじゃないか。
今までとは違う生活も目新しさはあるからな。
それに平民を観察するのも新鮮な経験だ。
* * * * * * * * * *
平民向けの酒場は品がない。
酒を飲んで騒ぐのは当然であり、娼婦が誘ってくるのも当然だった。
飯も酒も不味いが貴族の社交パーティーとはまた違った品のない噂話も意外に下種で楽しめた。
酔った男なんてくだらない話しかしない。
これが平民というものなのだな。
根拠のない噂話というのも平民にとっては娯楽の一種なのだろう。
そんな噂話の一つに、まさか俺のことがあるなんて驚きだった。
しかも都合良く事実を改ざんしたもので、俺を非難するようなものになっていた。
そもそもあの女には手切れ金も払ってお互いに納得済みだ。
俺が家から追放されたのはギラルロイ家を守るためであり、ヘインリード公爵家からの理不尽な追及を躱すためだった。
それなのに俺が一方的に女と子供を捨てただなんて悪意しかないだろう。
そんな噂を広めるとすればセシーリアか。
セシーリアしかいないよな。
どこまでも俺を追い詰めたいようだ。
そんな冷酷な女と結婚せずに済んだのは幸いだったが、でもまさか俺が平民落ちするとは思わなかった。
やはりセシーリアと関わったのが不幸の始まりだった。
「くそっ、不味い酒がもっと不味くなったじゃないか」
そういえばあの女はどの辺に住んでいたかな?
また抱いてやるのもいいだろう。
その辺の娼婦相手だと病気が怖いし、余計な金を使わないで済むならそのほうがいい。
何しろ十分な手切れ金は支払ったのだから、恩義を感じていれば拒まないだろう。
酒ばかりの日々にも飽きてきたし、久々に顔を見てやろう。
その辺の人間に訊いてみれば家もわかるだろう。
とりあえず目的は決まった。
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