結婚式間近に発覚した隠し子の存在。裏切っただけでも問題なのに、何が悪いのか理解できないような人とは結婚できません!

田太 優

文字の大きさ
上 下
4 / 9

第4話

しおりを挟む
「困ったことになったぞ…」

父上に呼び出されたというのに、その父上がどうして困ったのか説明もせず、困った困ったと言うばかりだった。
そのような無駄なことをされると俺だって困ってしまう。

「ですからどうしたのですか?」
「困った……」

父上もだめだな。
そんな頼りない人間が当主だなんてギラルロイ伯爵家にとっては害だろう。
できるだけ早くに家督を譲ってもらわないとギラルロイ伯爵家が危ういな。
家のためには父上には悪いかもしれないが仕方のないことだ。
だが父上がそう簡単に家督を譲るとは思えない。
まったく頭が痛くなりそうだ。
困ったのは俺のほうだと言いたいが、言ったところで不興を買うだけだ。

「ヘインリード公爵閣下がお前の隠し子のことを問題視している。どうして伝えなかったのかと言われたので相手とはもう話がついていると伝えたのに理解されなかった。これ以上どうしろというのか…」
「そうでしたか……」

当家のことにまで口出しするなんて干渉しすぎだろう。
もしかしたらギラルロイ伯爵家の力を弱めようとする謀略かもしれない。
あるいはモーラン伯爵家の味方をしただけかもしれない。
いずれにせよヘインリード公爵閣下は味方ではないということだな。

「きっとヘインリード公爵閣下はこちらがどういった釈明をしようとも聞き入れる気はないのだろう。恐らくはお前の廃嫡か何かを望んでいるはずだ」
「廃…嫡……!?まさか!いくら公爵閣下とはいえ、それは干渉しすぎです!」
「だがそうでもしない限りは当家に非があると決めつけるだろう。その結果はどうなる?他の日和見するような貴族家がみんな敵に回ってしまうかもしれないぞ?」
「ですが…」

いつの間にかに当家が存亡の危機に陥っていただと!?
父上だって家の存続を選ぶはず。
ということは…俺を捨てるということ。

俺だってギラルロイ伯爵家が滅ぶようなことにはなってほしくない。
俺一人が責任を取ることで家が存続するなら悪くない犠牲だ。
誇りあるギラルロイ伯爵家の一員として、犠牲になるのも仕方ない。
……どれだけ不本意であろうとも、ここは俺が飲み込むしかない場面だ。

「わかりました。俺を一家から追放してください。そうすればヘインリード公爵閣下も文句を言えないでしょう。もし文句を言うようなら嫡男の追放だけで良しとしない公爵閣下のほうが非難の対象になります」
「すまない、ディーンズ…。これもギラルロイ家のためだ」

もうこれ以上俺が何か言うべきではない。
父上の決意を鈍らせるわけにもいかないし、俺にできることは速やかに準備をして家から去るだけだ。

ヘインリード公爵閣下がここまで強く干渉してくるのはセシーリアが何かやったに決まっている。
くそっ、忌々しい。
せめて文句の一つでも言ってやろうか。
まあそんなことで反省したり罪悪感を抱くような女ではないだろうけどな。

こうして俺はギラルロイ伯爵家の嫡男としての立場だけではなく、貴族の身分も失い一家から追放されることになった。
だが金だけは十分に持たせてくれた。
それが精いっぱいの支援だったのだろう。
父上も苦渋の決断だった。
こんなことになったのは全部セシーリアのせいだ。
いつか絶対に後悔させてやる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元婚約者が愛おしい

碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。 留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。 フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。 リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。 フラン王子目線の物語です。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい

和泉鷹央
恋愛
 王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。  そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。 「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」 「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」 「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」 「えっ……!?」 「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」  しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。  でも、コンスタンスは見てしまった。  朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……  他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】旦那様、お飾りですか?

紫崎 藍華
恋愛
結婚し新たな生活に期待を抱いていた妻のコリーナに夫のレックスは告げた。 社交の場では立派な妻であるように、と。 そして家庭では大切にするつもりはないことも。 幸せな家庭を夢見ていたコリーナの希望は打ち砕かれた。 そしてお飾りの妻として立派に振る舞う生活が始まった。

【完結】あなたから、言われるくらいなら。

たまこ
恋愛
 侯爵令嬢アマンダの婚約者ジェレミーは、三か月前編入してきた平民出身のクララとばかり逢瀬を重ねている。アマンダはいつ婚約破棄を言い渡されるのか、恐々していたが、ジェレミーから言われた言葉とは……。 2023.4.25 HOTランキング36位/24hランキング30位 ありがとうございました!

愛する人の手を取るために

碧水 遥
恋愛
「何が茶会だ、ドレスだ、アクセサリーだ!!そんなちゃらちゃら遊んでいる女など、私に相応しくない!!」  わたくしは……あなたをお支えしてきたつもりでした。でも……必要なかったのですね……。

私には婚約者がいた

れもんぴーる
恋愛
私には優秀な魔法使いの婚約者がいる。彼の仕事が忙しくて会えない時間が多くなり、その間私は花の世話をして過ごす。ある日、彼の恋人を名乗る女性から婚約を解消してと手紙が・・・。私は大切な花の世話を忘れるほど嘆き悲しむ。すると彼は・・・? *かなりショートストーリーです。長編にするつもりで書き始めたのに、なぜか主人公の一人語り風になり、書き直そうにもこれでしか納まりませんでした。不思議な力が(#^^#) *なろうにも投稿しています

知らない男に婚約破棄を言い渡された私~マジで誰だよ!?~

京月
恋愛
 それは突然だった。ルーゼス学園の卒業式でいきなり目の前に現れた一人の学生。隣には派手な格好をした女性を侍らしている。「マリー・アーカルテ、君とは婚約破棄だ」→「マジで誰!?」

処理中です...