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第4話
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「困ったことになったぞ…」
父上に呼び出されたというのに、その父上がどうして困ったのか説明もせず、困った困ったと言うばかりだった。
そのような無駄なことをされると俺だって困ってしまう。
「ですからどうしたのですか?」
「困った……」
父上もだめだな。
そんな頼りない人間が当主だなんてギラルロイ伯爵家にとっては害だろう。
できるだけ早くに家督を譲ってもらわないとギラルロイ伯爵家が危ういな。
家のためには父上には悪いかもしれないが仕方のないことだ。
だが父上がそう簡単に家督を譲るとは思えない。
まったく頭が痛くなりそうだ。
困ったのは俺のほうだと言いたいが、言ったところで不興を買うだけだ。
「ヘインリード公爵閣下がお前の隠し子のことを問題視している。どうして伝えなかったのかと言われたので相手とはもう話がついていると伝えたのに理解されなかった。これ以上どうしろというのか…」
「そうでしたか……」
当家のことにまで口出しするなんて干渉しすぎだろう。
もしかしたらギラルロイ伯爵家の力を弱めようとする謀略かもしれない。
あるいはモーラン伯爵家の味方をしただけかもしれない。
いずれにせよヘインリード公爵閣下は味方ではないということだな。
「きっとヘインリード公爵閣下はこちらがどういった釈明をしようとも聞き入れる気はないのだろう。恐らくはお前の廃嫡か何かを望んでいるはずだ」
「廃…嫡……!?まさか!いくら公爵閣下とはいえ、それは干渉しすぎです!」
「だがそうでもしない限りは当家に非があると決めつけるだろう。その結果はどうなる?他の日和見するような貴族家がみんな敵に回ってしまうかもしれないぞ?」
「ですが…」
いつの間にかに当家が存亡の危機に陥っていただと!?
父上だって家の存続を選ぶはず。
ということは…俺を捨てるということ。
俺だってギラルロイ伯爵家が滅ぶようなことにはなってほしくない。
俺一人が責任を取ることで家が存続するなら悪くない犠牲だ。
誇りあるギラルロイ伯爵家の一員として、犠牲になるのも仕方ない。
……どれだけ不本意であろうとも、ここは俺が飲み込むしかない場面だ。
「わかりました。俺を一家から追放してください。そうすればヘインリード公爵閣下も文句を言えないでしょう。もし文句を言うようなら嫡男の追放だけで良しとしない公爵閣下のほうが非難の対象になります」
「すまない、ディーンズ…。これもギラルロイ家のためだ」
もうこれ以上俺が何か言うべきではない。
父上の決意を鈍らせるわけにもいかないし、俺にできることは速やかに準備をして家から去るだけだ。
ヘインリード公爵閣下がここまで強く干渉してくるのはセシーリアが何かやったに決まっている。
くそっ、忌々しい。
せめて文句の一つでも言ってやろうか。
まあそんなことで反省したり罪悪感を抱くような女ではないだろうけどな。
こうして俺はギラルロイ伯爵家の嫡男としての立場だけではなく、貴族の身分も失い一家から追放されることになった。
だが金だけは十分に持たせてくれた。
それが精いっぱいの支援だったのだろう。
父上も苦渋の決断だった。
こんなことになったのは全部セシーリアのせいだ。
いつか絶対に後悔させてやる。
父上に呼び出されたというのに、その父上がどうして困ったのか説明もせず、困った困ったと言うばかりだった。
そのような無駄なことをされると俺だって困ってしまう。
「ですからどうしたのですか?」
「困った……」
父上もだめだな。
そんな頼りない人間が当主だなんてギラルロイ伯爵家にとっては害だろう。
できるだけ早くに家督を譲ってもらわないとギラルロイ伯爵家が危ういな。
家のためには父上には悪いかもしれないが仕方のないことだ。
だが父上がそう簡単に家督を譲るとは思えない。
まったく頭が痛くなりそうだ。
困ったのは俺のほうだと言いたいが、言ったところで不興を買うだけだ。
「ヘインリード公爵閣下がお前の隠し子のことを問題視している。どうして伝えなかったのかと言われたので相手とはもう話がついていると伝えたのに理解されなかった。これ以上どうしろというのか…」
「そうでしたか……」
当家のことにまで口出しするなんて干渉しすぎだろう。
もしかしたらギラルロイ伯爵家の力を弱めようとする謀略かもしれない。
あるいはモーラン伯爵家の味方をしただけかもしれない。
いずれにせよヘインリード公爵閣下は味方ではないということだな。
「きっとヘインリード公爵閣下はこちらがどういった釈明をしようとも聞き入れる気はないのだろう。恐らくはお前の廃嫡か何かを望んでいるはずだ」
「廃…嫡……!?まさか!いくら公爵閣下とはいえ、それは干渉しすぎです!」
「だがそうでもしない限りは当家に非があると決めつけるだろう。その結果はどうなる?他の日和見するような貴族家がみんな敵に回ってしまうかもしれないぞ?」
「ですが…」
いつの間にかに当家が存亡の危機に陥っていただと!?
父上だって家の存続を選ぶはず。
ということは…俺を捨てるということ。
俺だってギラルロイ伯爵家が滅ぶようなことにはなってほしくない。
俺一人が責任を取ることで家が存続するなら悪くない犠牲だ。
誇りあるギラルロイ伯爵家の一員として、犠牲になるのも仕方ない。
……どれだけ不本意であろうとも、ここは俺が飲み込むしかない場面だ。
「わかりました。俺を一家から追放してください。そうすればヘインリード公爵閣下も文句を言えないでしょう。もし文句を言うようなら嫡男の追放だけで良しとしない公爵閣下のほうが非難の対象になります」
「すまない、ディーンズ…。これもギラルロイ家のためだ」
もうこれ以上俺が何か言うべきではない。
父上の決意を鈍らせるわけにもいかないし、俺にできることは速やかに準備をして家から去るだけだ。
ヘインリード公爵閣下がここまで強く干渉してくるのはセシーリアが何かやったに決まっている。
くそっ、忌々しい。
せめて文句の一つでも言ってやろうか。
まあそんなことで反省したり罪悪感を抱くような女ではないだろうけどな。
こうして俺はギラルロイ伯爵家の嫡男としての立場だけではなく、貴族の身分も失い一家から追放されることになった。
だが金だけは十分に持たせてくれた。
それが精いっぱいの支援だったのだろう。
父上も苦渋の決断だった。
こんなことになったのは全部セシーリアのせいだ。
いつか絶対に後悔させてやる。
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