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しおりを挟むモルと一緒にリビングダイニングへと戻ると、厳つい男達に囲まれていた凌と水神が床に伏せっているのが垣間見えた。
何度も殴られ、制裁を加えられたのだろう。男達の足の隙間から見える床に付いた両手が震え、血糊がその甲にべったりと付いている。当初より少し場所を移動したんだろう。辺りの床が血塗れ、所々血飛沫のようなものまで残っている。
「当然の報いッスよ」
竦んで足を止めた僕に、モルが話し掛ける。
「元々上納金が払えなくて苦労してた組だったにも関わらず、突然ハブり良くなったンすよ。悪い噂もあったんで、潜入するようリュウさんに頼まれてたんッス」
「……」
「家庭に問題を抱えてたり、人間関係に悩んだり。学校でも家でも居場所がなく、世間に馴染めないような半端な女子高生に優しく声掛けて、味方のフリして手懐けてたんッス。で、完全に相手を信用させて、周りに誰もいなくなった所で……裏モノ撮って、顧客に売り捌いてたンすよ」
「……」
信用させて……
そのやり口に、ゾクッと寒気がする。
「……でも、まさか……姫まで──」
そう漏らしながら眉根を寄せ、睨み付けるように凌を見据える。その横顔は、向日葵のような明るい笑顔を見せるモルとは対照的に映る。
「帰りましょうか! 家まで送るッス」
僕の視線に気付き、此方に顔を向けたモルが、パッと明るい笑顔を見せる。
「………ないよ。帰る場所なんて」
凌が用意してくれた、アパート以外……
口から溢れた声は、酷く震えていて。本当に僕は、頼りなくて情けない。
自立、出来てると思ってた。
こんな僕でも、人並みの日常を送れるんだとばかり。
だけど。其れ等は全部……凌が作り上げた、幻──
「えっ。……でも、姫には実家があるからって、リュウさんが……」
驚いたように眼をしばたかせていたモルが、何かに気付いたように目を見開くと、慌ててポケットから携帯を取り出す。
「……ちょっと待って下さい。リュウさんに、確認してみるッスから!」
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