余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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23話 自覚

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「えぇ……町下さんは家庭の事情で少しの間お休みのことです」

  ゴールデンウィークが開けた初日。先生が教室の前でそんな話をした。

  俺はゴールデンウィーク初日からあんな事があり、どうも遊ぼうという気が起こらなかったため、結局家でグウタラしていた。

  瑠魅も少しの間一人になりたいと言っていたので、結局ゴールデンウィーク中は一度も家に行ってない。

  まぁ、俺が瑠魅の声を聞きたくて夜中に毎日電話掛けてたけど……。まぁ、ゴールデンウィークの終盤では元気になっていたし、そこまで心配するような状況じゃない……はずだ。

「心配だな。大丈夫だと思うか?」

「海斗……なんか久々だな」

「そりゃな。いつもなら一週間以上合わないなんて有り得ないからな。で、体調はもう大丈夫なのか?」

「まだ、ちょっと治ってないけど、大丈夫だ」

  精神的に参ってる理由をそのまま告げる訳にはいかなかったから、風邪に掛かったと言っておいた。

  実際に次の日に熱出たし嘘では無い。精神的に疲労していたせいだと思う。

「俺、お見舞い行こうかな」

「そう、だな。行ってみるか」

  俺も瑠魅には会いたいし。はぁ……好きだって本人の前で言えれば良いんだけどな。

  どうも瑠魅の俺に向けるものは、恋愛とは違うもの……強いて言えば親愛?

  多分、今告白したところで答えは分かりきってる。瑠魅は優しいからワンチャンあるかもだけど……それは違う気がする。

  まだ、百パーセント成功すると言えないこの状況で告白はしたくない……。チキンと言われようとも告白する勇気が出ねぇんだよ。

「二人とも、瑠魅ちゃんの家に行くの?」

  そう声を掛けてきたのは冬華だった。

「バイトは良いのか?」

「ん?だって私の家がやってるお店だしね。ただのお小遣い稼ぎだから大丈夫だよ」

「そうか。で、海斗も大丈夫なのか?お前だってあそこでバイトしてるだろ?」

「まぁ、一日ぐらいな大丈夫だろ」

「そうか?なら良いけど」

  俺は席を立ってズボンのポケットに手を突っ込み、ポケットの中でスマホを握って教室を出た。

  この学校は基本的にスマホを持ってきても良いし、昼休みなら自由に使って良いとすらなってる。

  でも、昼まで待てない。まだ一時間目すらもやってないのに、瑠魅の声が聞きたいなんてな。

  これが依存か。だとしたらかなりヤバいな。

  まぁ、冗談は置いておこう。瑠魅の声を聞きたいの確かだけど、今すぐという訳でもない。

  ただ、ちょっとした要件があるだけだ。今の瑠魅は前に比べて元気になったけど、人とちゃんと会話ができるか分からないからな。

  瑠魅の家に行っても良いかどうかすらも分からない。さすがに許可なく行けないからな。

  俺はトイレの個室に入ってポケットから手を出した。

  俺は瑠魅のスマホに電話をかけた。

『……もしもし?』

  たったの三コールで電話に出てくれた。どうやら休みと言えど寝てはいないようだ。

  俺だったらもっと寝てるんだけどな。さすがは瑠魅だな。

「今日さ。瑠魅の家に行っても良いかな?」

『ん……良いよ』

「そうだ。他にも連れて行って良いかな?」

『………ワガママ言っても良い?』

「なに?」

   急にどうしたのだろうか?やはり、大人数となると厳しいのかな?

  それとも、何か買ってきて欲しいとかかな?

『蓮翔一人じゃ……ダメ?』

「っ……!!」

  グハッ!!そんな甘えるような声を至近距離で聞いたら……幸せすぎて死ぬ。

『まだ他の人とはしっかりと会話できそうになくて……』

「う、うん。そういう事なら……」

  なんだが、本当に瑠魅は変わったな。

~~~~~~~~~~~~

  次回は、これからも登場する人物たち(全員が主要人物ではありません)の登場人物紹介も一緒に投稿します。

  登場人物紹介に関しましては、作者が登場人物の確認などを行うためです。登場人物の特徴を忘れていたりすると、読みにくいと思うので……。

  なお、物語には一切関与しませんので、読まなくても大丈夫です。

  誤字脱字、質問や感想等ありましたら気軽にコメントお願いします。
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