22 / 89
22話 それから
しおりを挟む
「あ……うぐ」
体を動かそうとした時、全身に鈍い痛みが走った。
「ここは……家、なのか?」
俺はゆっくりと目を開けた。そこは先程まで居た質素な空間ではなく、俺が訪れた家……瑠魅の家だった。
もしかしたら、さっきの痛みはこの世界に戻ってきた反動、もしくは……寿命を奪われた副反応か。
「んん……」
「っ……瑠魅!」
机を挟んだ逆側から声がした。俺は急いで立ち上がり瑠魅の方へと向かう。
意識が覚醒して若干思考にモヤが掛かっている状態で急に歩いたものだから、机の足に小指をぶつけた。
小指……テメェ絶対にわざとぶつかってんだろ。じゃなきゃこんなに頻繁に当たらねぇって。
俺はそんな愚痴を心の中で零しながら瑠魅にそっと触れる。
「大丈夫か?」
「……蓮、翔?」
「立てそうか?」
「今は無理そう……」
瑠魅はきっとまだ整理しきれていない。俺だってそうだ。さっきのは本当は夢で………神太さんだって……。
「クソッ!」
「………どうしたの、蓮翔?」
「ごめん、瑠魅……ホントにごめん」
俺があの神から提案された時に即決していれば、神太さんが死ぬことは無かった。こんなに瑠魅を悲しませることもなかった。
俺と話したいっていう純粋な思いを踏みにじったあの神には怒りを感じている。
でも、そう感じる度に自分自身の無力さを痛感する。
「蓮翔……気にしないで」
「強がらなくて良い。瑠魅がどれだけ辛いかなんて俺はさっぱり分からない。けど、俺だって辛い。だから
瑠魅はもっと辛いと思う……だから……もう我慢なんてしなくても良いんだ。今だけは……な?」
俺は瑠魅の体ゆっくりと起こして抱きしめた。瑠魅の体温を感じた。瑠魅から女子特有の匂いのほのか感じた。
でも、俺はそんなことを気にする余裕すらなかった。ただ、俺の事をこんなに思ってくれて、こんなに頑張ってくれた彼女を悲しませたままにしたくなかった。
「もう……強がらなくて良いんだよ」
俺はできる限り優しく撫でる声を掛け、瑠魅の髪をそっと撫でる。サラサラとしていて撫でていて心地の良い髪質だった。
「うぅ……お父さん……ごめんなさい……私……」
瑠魅は我慢していた感情が崩壊したように、涙を流しながら言葉を紡いでいった。
「よしよし……」
「うぅ……ごめんなさい、本当に……」
次第に声は小さくなっていく。
更にもう少し経つと完全に声は聞こえなくなった。
俺は瑠魅の顔を覗き込む。すると、どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ。
耳を澄ますと可愛い寝息が聞こえる。
いや、俺は変態か?いや、思春期男子だし仕方がないよな。
「俺だけでも明るく……居ないとだよな。瑠魅を今支えられるのは俺だけだ。俺がしっかりとしないと」
辛いからって泣き叫べば良いってもんじゃない。辛いからこそ前を向かなければ。
神太さんの事を思うなら、ずっと後ろを向いているよりも、無理にでも前を向いて、瑠魅を幸せにしないと。
「………って心でも頭でも分かってんだけどな」
俺の瞳からまた涙が零れる。その一粒の涙が頬を伝って落ちていく。もう、俺の涙腺は涙を止めることはせず、何粒も何粒も俺の目から零れていく。
瑠魅が泣いてる姿を見て、俺もまた泣きそうになった。あの場は何とか耐えることが出来たが、こうして一人で考え事をしてしまうと、どうも思い出してしまうらしい。
「はぁ……俺ってダメだな……なぁ、止まってくれよ、頼むから」
俺は止まることの知らない涙を何度も何度も拭う。
涙を流しながら俺は何度も後悔した。自分の無力さな何度も苛立ちを覚えた。
「瑠魅……楽しい一年間にさせるからな」
そっと瑠魅の頬を撫でる。瑠魅の肌はスベスベでモチモチとしていた。同じ人間とは思えないほどだ。
「………お父さん」
閉じた瞳に一粒の涙を浮かべ、そう呟く。
「………この状態は不味いな」
この状況でかなり不謹慎だが……興奮しちゃいそう。
さすがにこんな状態の女の子を襲うほど落ちぶれていた無いが……それでも俺の煩悩と思春期の妄想が加速しそうだ。
全く……こんな状況で興奮できる俺の思春期君は鋼メンタルすぎはしないか?
「よいっしょっと……」
俺は瑠魅を抱きかかえるようにして、持ち上げる。
「軽っ……。貧弱な俺でも、瑠魅に触ったら折れちゃうんじゃないか?」
俺はどこにあるか分からないベッドに向けて歩き出した。
一応言うが、そういう目的じゃないからな?勘違いするなよ?
~~~~~~~~~~~~
<作者コメント>
ここまで読んでいただきありがとうございます!
拙い文章や表現で分かりにくい部分は多々あると思います。作者自身も何度も読み直して添削はしていたますが、語彙力がたったの五のゴミなので、こんな文章に……面目ありません。
それに、内容がかなり薄いです。読んでいて、端折り過ぎな部分も多々ありました……。重ね重ねになりますが、申し訳ございません。
とりあえずここで一区切りです。あとは普通の恋愛系のお話になります。
一話一話の間隔もかなり空いてしまい、申し訳なく思っています。ですが、これからはちゃんとした恋愛系の話を書けるので、もしかしたら投稿間隔が短くなるかもしれません。
誤字脱字、質問や感想等あれば気軽にコメントお願いします。
長くなりましたが、これからもこの作品を読んでいただければ光栄です。
体を動かそうとした時、全身に鈍い痛みが走った。
「ここは……家、なのか?」
俺はゆっくりと目を開けた。そこは先程まで居た質素な空間ではなく、俺が訪れた家……瑠魅の家だった。
もしかしたら、さっきの痛みはこの世界に戻ってきた反動、もしくは……寿命を奪われた副反応か。
「んん……」
「っ……瑠魅!」
机を挟んだ逆側から声がした。俺は急いで立ち上がり瑠魅の方へと向かう。
意識が覚醒して若干思考にモヤが掛かっている状態で急に歩いたものだから、机の足に小指をぶつけた。
小指……テメェ絶対にわざとぶつかってんだろ。じゃなきゃこんなに頻繁に当たらねぇって。
俺はそんな愚痴を心の中で零しながら瑠魅にそっと触れる。
「大丈夫か?」
「……蓮、翔?」
「立てそうか?」
「今は無理そう……」
瑠魅はきっとまだ整理しきれていない。俺だってそうだ。さっきのは本当は夢で………神太さんだって……。
「クソッ!」
「………どうしたの、蓮翔?」
「ごめん、瑠魅……ホントにごめん」
俺があの神から提案された時に即決していれば、神太さんが死ぬことは無かった。こんなに瑠魅を悲しませることもなかった。
俺と話したいっていう純粋な思いを踏みにじったあの神には怒りを感じている。
でも、そう感じる度に自分自身の無力さを痛感する。
「蓮翔……気にしないで」
「強がらなくて良い。瑠魅がどれだけ辛いかなんて俺はさっぱり分からない。けど、俺だって辛い。だから
瑠魅はもっと辛いと思う……だから……もう我慢なんてしなくても良いんだ。今だけは……な?」
俺は瑠魅の体ゆっくりと起こして抱きしめた。瑠魅の体温を感じた。瑠魅から女子特有の匂いのほのか感じた。
でも、俺はそんなことを気にする余裕すらなかった。ただ、俺の事をこんなに思ってくれて、こんなに頑張ってくれた彼女を悲しませたままにしたくなかった。
「もう……強がらなくて良いんだよ」
俺はできる限り優しく撫でる声を掛け、瑠魅の髪をそっと撫でる。サラサラとしていて撫でていて心地の良い髪質だった。
「うぅ……お父さん……ごめんなさい……私……」
瑠魅は我慢していた感情が崩壊したように、涙を流しながら言葉を紡いでいった。
「よしよし……」
「うぅ……ごめんなさい、本当に……」
次第に声は小さくなっていく。
更にもう少し経つと完全に声は聞こえなくなった。
俺は瑠魅の顔を覗き込む。すると、どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ。
耳を澄ますと可愛い寝息が聞こえる。
いや、俺は変態か?いや、思春期男子だし仕方がないよな。
「俺だけでも明るく……居ないとだよな。瑠魅を今支えられるのは俺だけだ。俺がしっかりとしないと」
辛いからって泣き叫べば良いってもんじゃない。辛いからこそ前を向かなければ。
神太さんの事を思うなら、ずっと後ろを向いているよりも、無理にでも前を向いて、瑠魅を幸せにしないと。
「………って心でも頭でも分かってんだけどな」
俺の瞳からまた涙が零れる。その一粒の涙が頬を伝って落ちていく。もう、俺の涙腺は涙を止めることはせず、何粒も何粒も俺の目から零れていく。
瑠魅が泣いてる姿を見て、俺もまた泣きそうになった。あの場は何とか耐えることが出来たが、こうして一人で考え事をしてしまうと、どうも思い出してしまうらしい。
「はぁ……俺ってダメだな……なぁ、止まってくれよ、頼むから」
俺は止まることの知らない涙を何度も何度も拭う。
涙を流しながら俺は何度も後悔した。自分の無力さな何度も苛立ちを覚えた。
「瑠魅……楽しい一年間にさせるからな」
そっと瑠魅の頬を撫でる。瑠魅の肌はスベスベでモチモチとしていた。同じ人間とは思えないほどだ。
「………お父さん」
閉じた瞳に一粒の涙を浮かべ、そう呟く。
「………この状態は不味いな」
この状況でかなり不謹慎だが……興奮しちゃいそう。
さすがにこんな状態の女の子を襲うほど落ちぶれていた無いが……それでも俺の煩悩と思春期の妄想が加速しそうだ。
全く……こんな状況で興奮できる俺の思春期君は鋼メンタルすぎはしないか?
「よいっしょっと……」
俺は瑠魅を抱きかかえるようにして、持ち上げる。
「軽っ……。貧弱な俺でも、瑠魅に触ったら折れちゃうんじゃないか?」
俺はどこにあるか分からないベッドに向けて歩き出した。
一応言うが、そういう目的じゃないからな?勘違いするなよ?
~~~~~~~~~~~~
<作者コメント>
ここまで読んでいただきありがとうございます!
拙い文章や表現で分かりにくい部分は多々あると思います。作者自身も何度も読み直して添削はしていたますが、語彙力がたったの五のゴミなので、こんな文章に……面目ありません。
それに、内容がかなり薄いです。読んでいて、端折り過ぎな部分も多々ありました……。重ね重ねになりますが、申し訳ございません。
とりあえずここで一区切りです。あとは普通の恋愛系のお話になります。
一話一話の間隔もかなり空いてしまい、申し訳なく思っています。ですが、これからはちゃんとした恋愛系の話を書けるので、もしかしたら投稿間隔が短くなるかもしれません。
誤字脱字、質問や感想等あれば気軽にコメントお願いします。
長くなりましたが、これからもこの作品を読んでいただければ光栄です。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
さよなら私のエーデルワイス〜侍女と騎士の初恋〜
佐原香奈
恋愛
小さな村で幼馴染として育ったエマとジャン。小さい頃からジャンは騎士を目指し、エマはそれを応援していた。
ジャンは成人する年、王都で開かれる各地の騎士団採用試験として行われるトーナメント戦に出場するため、村を出た。
一番の夢であった王立騎士団入団は叶えられなかったものの、辺境伯家の騎士団に入団することになったジャンは、胸を張ってエマを迎えに行くために日々鍛錬に励んでいた。
二年後、成人したエマは、ジャンが夢を叶える時に側にいたいと、ジャンの夢の舞台である王立騎士団で侍女として働くことになる。しかし、そこで待ち受けていたのは、美しい女性と頻繁にデートするジャンの姿だった。
私の大好きな彼氏はみんなに優しい
hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。
柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。
そして…
柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。
もうすぐ、お別れの時間です
夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。
親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる