ストリップショー

ぽんたろう

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初日

始まりは小さなボタンのかけ違いから

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場の雰囲気を読んだり、うまく立ち回ったり、そういったことに極端に弱い人間がいる。
川本亜希はまさにその典型だろう。
整った顔立ちにスラッとした体型、それだけでも彼女は充分に目立つ存在のはずだが、そうならないのは生来の内気さにある。

後天的にも修正できるような気質ではあるが、大学も女子大に入り、その傾向には拍車がかかりつつあった。だから、なんとなく入ったテニスサークルでの初めての夏合宿は、彼女にとっては不安以外の感情を運んでくるものではなかったのだ。

亜希の危惧した通り、酒の入った宴会は女子だけの空間特有の、妖しい雰囲気に包まれていった。サークルの部長、森里香織は新入生にはブラジャー禁止令を出していて、女同士、浴衣をめくったり、はだけさせたりして、じゃれ合うような姦しい空間がすっかり出来上がっていった。そんな中でポツンと、その雰囲気に馴染めない亜希は、たしかに浮いていた。

「どうしたの?」
亜希に対して、香織が話しかけたのは、気まぐれに過ぎない。いや、集団のボスとして、群れからはぐれそうな新顔に配慮したといえたのかもしれない。
「あ、こういう雰囲気苦手で…」
「女同士だし、こういう時は楽しみましょうよ」
そう言って、胸に手を伸ばした香織の手を、亜希は反射的に払ってしまったのだ。
「あ、あの。」
蚊の鳴くような声で、出した亜希の声は、周囲の喧騒に紛れて香織には届かない。香織のスキンシップは特定の誰かに向けられるものではなく、いわゆる親愛の証のようなものだ。これを払うというのは、ボスへの否定だ。香織の顔が一気に険しくなる。
「そんなにムキにならなくてもいいじゃない。それとも、このサークルが嫌いかしら?」
「い、いえ…」

はっきりしない態度は香織をむしろ苛つかせた。
「しかもあなた、ブラ着けてるのね。このサークルの慣例で、1年は夏合宿最初の夜はブラ禁止なんだけど、聞いてなかったかしら?」
亜希はその説明を聞いていたが、習慣的にブラジャーを着用してしまっていたのだ。これが、更に事態を悪化させる。

「そういうのって部の一体感を乱すのよね。今すぐ、外してもらえるかしら?」
もうすでに、不穏な空気に気づいた数名が、このやりとりに注目していた。内気な亜希には辛い状況だ。

「すみません。じゃあ、部屋で外して来ます。」
「今、ここでよ」

拒否を許さない、冷たい声色で香織は宣言した。
「脱ぎなさい。なんなら手伝ってあげるから。」
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