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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
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しおりを挟むそうして和んでいた俺に、ウィニアルトは諦められないのか、「先生!」と手を叩いた。
「先生ならできるよねっ! おおきな魔法陣にお花描ける? 爆発したらお花出るのかな? そうしたら魔法陣スキルは地味じゃなくなると思うのだよ! ふふーん」
おちゃめな口調で胸を張るウィニアルト。
男の夢と希望が詰まっている豊かな胸部が揺れ、そっぽを向いていたクテシアスが必死に視線だけをそちらへ向けている。
こら。あまりじろじろ見るのは、先生感心しないぞ? だがこれも青春──もとい性春なのだろう。
俺は大人なのでそんなに青臭いわけもなく、そっと目線をウィニアルトのあどけない顔にだけ固定して、胸部を見ないようにする。
まぁアゼルの胸筋なら「見てもいいか」と聞いた上で、じっくりと見るんだけどな。
「あはは、そうだな。それなら派手でいいかもしれない。お花は難しいが、おおきな魔法陣なら書けるかな。大きさは、魔力があれば誰でも書ける。後でコツを教えようか?」
「ふおぁ~っ! うん! やっぱりすごいねっ先生すごい! 私授業も先生も好きだなぁ~!」
「!」
「それはとても嬉しい、ありがとう。俺も好きだぞ、ウィニアルト」
「!!」
お互いわかった上での言い合いなので、ウィニアルトは「両想いだねぇあはは!」と溌剌と笑う。
もちろん、クラスの生徒たちはみんな好きだ。
一人一人にいいところがあって、愛着のある生徒たちだからな。
「ぉ、ぉれはちょっとせんせぇが嫌いだぁぁぁ……!」
「? どうした、クテシアス」
「? どうしたの、カイト」
そんな俺達になにやらボソボソと泣き言を漏らしたクテシアスが机に突っ伏したが、よく聞こえなかった。
声をかけてもほっとけとしか反応しないので、仕方なく授業を進める。
どうしたのだろう。
書きかけの魔法陣を黒板に書きながら、首をかしげる。
本当はお花の図形をスイッチにしたかったのかもしれないな。かわいいやつめ。
「さあ、授業に戻ろう。大きな魔法陣についてだが……魔法陣のサイズは、魔力を使えば大きくできる。形を把握するのが難しいので、グラウンドいっぱいというのはおすすめできないが……理論上はインクにあたる魔力が尽きるまで書けるな」
カッカッとチョークを走らせ、自由な口はなるべく意味のある話をしようと動かす。
この話の内容はあくまでサブであり、生徒達の記憶に残れば今後の魔法陣学の授業でも役立つのではないかと思っての、雑学だ。
ちなみに理論上魔力の量が最大サイズとなるが、それはあくまで理論である。
実際にすると、精密性に大いに欠ける魔法陣になってしまうだろう。
大きな陣の形を歪みなく形成するのは、難度が高い。
そうだな……例えばだと、だ。
膨大な魔力と正確な魔力操作の両方を高レベルで持ち合わせた人ならば、陣の巨大化は出来ると思う。
けれどそれは、才能の問題になってくるのだ。
俺だって魔力量は無理矢理訓練で上げただけで多いわけではないので、グラウンドいっぱいの陣を書けば、その日の魔力は尽きるだろう。
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