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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園
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カツカツと黒板にチョークを走らせながら、俺は最後の授業も、いつも通りにこなしていく。
長かったようで短かった一週間の臨時教師も、今日で終わりだ。
そう思うと少しさみしいが、それほど充実した一週間だった。
今日は予定していたとおり、座学が終わった後にグラウンドでこれまでの授業の成果を見る、小テストをすることになっている。
その見本になる魔法陣を黒板に書く俺は、感慨深い気持ちだ。
肉球がプニプニの手や背中から生える翼とも、お別れ。見た目だけなので空は飛べないが、肉球は惜しいな。
「となるので、ここは起動のスイッチとなる図形を描き入れなければならない。スイッチの図形を覚えることも、忘れてはいけないぞ? 後で起動する時にうまくいかないからな」
「せんせぇ~それってなんでもいいワケ?」
「なんでもはだめだ。なんかこう……後でスイッチを押すために手の中で描かなきゃいけないから、簡単そうなものじゃないと。起動の古代文字を書き入れることと、円形に線を引いて繋げるのも必要だ」
俺の説明に「めんどくせえ~」とふてくされながらも、熱心にノートに書き込むクテシアス。
初めは尖り気味だったクテシアスは、接してみれば誰よりも努力家で、俺の話を一番真剣に聞いてくれるいい生徒だ。
確かにクラスの生徒にはしばしば優秀さを驕っていたり、自尊心が高く詰めの甘い子もいるが、概ねが彼のような真面目な者である。
だからこそ、半端な授業をする教師にフラストレーションが溜まっていたみたいだな。
「はーい、私お花描く!」
「はぁ~? だっせぇ!」
スイッチの図形は必要事項を書き込めていれば、余計なものを書き足してもかまわないと説明する。
すると弾けるような明るさと元気のある、愛らしい声が聞こえた。
ペガサス魔族のウィニアルトだ。
彼女は熱心というより感情表現が素直で、いちはやく俺と打ち解けてくれた生徒である。
そして彼女が大好きなクテシアスに、全く気がついていない鈍感さんだ。
今もウィニアルトがにこにこと手をあげた途端、ノートから目を離してすぐに話に食いついた。
これはウィニアルト以外のクラスのみんなが気づいている事案である。
「ださくないよ? かわいいもん、お花。ペガサスはみんなお花好きなの~。カイトも描いてもいいよ!」
「ばっ、か、かかねぇしぃっ!」
「遠慮しなくてもいいんだよ? グラウンドいっぱいにおおきな魔法陣書いてね、そんでお花も描いたら絶対いいよねっ」
「あぁ? そんな大きいのかけるかよぉ。魔力足りねぇし、全体見えないからふにゃふにゃすんだろぉ?」
「えぇ~……」
残念そうな声をあげてしょんぼりとするウィニアルトに、クテシアスはそっぽを向く。
教室のはじとはじでかわいらしいやり取りをする彼らに、俺はついふふふと笑ってしまった。
これが噂の青春。
アオハルというやつだな。
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