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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園

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「ってことは大きいのって現実性ないんですか?」
「あぁ。使い手があまりいないだろうし、そんなに大きなものといえば、都市防衛にかけるぐらいで普段は使わないからな。使用頻度が少ないので、基礎ができても覚える優先度は低い」
「へぇ~そうなんだ~」
「私無理だなぁ、飛行できないし上から見ないとかけないでしょ?」
「だよね、私は飛べても魔力あんまりないもん。人間なら一個小隊ぐらい相手にできるけどさぁ、天使はむりだし……」
「えぇあんたはすごいって! 私なんて精霊数人でも限界だよ~」

 うん、例えが物騒だ。

 魔族らしいといえばそうだが、優秀な学生なら人間一個小隊を殲滅できるのか……。

 勇者が一度も魔王に勝てない理由が、このへんにあると思う。

 人間の人口は魔族の十倍以上なのに、領土を奪えた試しがない。

 天界が狙うぐらい種族ごとチートなのだ。

「まあできる人は意外とあっさりやるから、あまり気を落とさなくて大丈夫だ。アゼル……じゃない。現魔王様も歴代同様、さくっと城ごと覆う防御魔法陣を重ねて強化してるぞ」
「いやいや~アディ先生落ち着こ? 魔王様って存在を基準にしたら、あーしら全員スライムだからね?」
「ってかなんで名前の、しかも愛称でお呼びしてんの? まだ死ぬのは早いよ? 大丈夫? 悩みあんならあたしら聞くし」
「死に急ぎたいなら悩み言ってみ? 彼女? 彼氏?」
「……うっかりした……」

 今までバレそうなことがなかったから安心してしまったのか、うっかりアゼル呼びをしてしまい、バキッとチョークが折れた。

 危ない危ない。
 俺はこういう抜けたところがあるのだ。気を付けないと。

 魔王といえば恐ろしいイメージが横行しているのか、死に急ぎだと思われてしまった。

 おかげで質問をしてきた彼女たちに、心配されてしまった俺である。

 大丈夫だ。
 うっかりしただけなんだ。

 彼女たちの話によると、全魔族で誰よりも戦闘力が高いものを選ぶ魔王紋に選ばれた魔王という存在は、強いものに惹かれる全魔族の憧れであり、同時に畏怖の対象である。

 だからこそ、弱さが垣間見えれば失望も大きいということか。

 冗談抜きで魔力の暴力であり、仮に一番と二番がいても、その差は激しい開きがあるのだとか。

 うん。以前アゼルは海軍まるごと反旗を翻しても、勝てると言っていたな。

 ようは単体で最強というわけだ。

 逆に仲間に攻撃が当たらないように気を使ったり、俺を守るだとかの枷があれば、それだけ弱くなる。

 アゼルはアゼルだけで戦うのが一番本人の生存率が高く、無双できるだろう。

 世間知らずという設定が生きて、迂闊な俺に言い聞かせるようにそんなことを語られ、俺はなんともいえない気持ちになった。

 ……アゼルは強いかも知れないが、メンタルはへなちょこなんだぞ?

 あんなにも人間味のある魔族もそうそういないくらい、俺の前では喜怒哀楽がフルスロットル。

 とてもかわいらしい旦那さんなのだが。


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