【完結】あなたと恋がしたい

まこ

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09 何で?

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※首を絞めるシーンがありますので苦手な方はご注意下さい※

「おはよう!」

望月くんと話し合いをした次の日、大学で仲の良い友人達が集まっていたのでいつも通り挨拶をした。

「あれ、彼女と仲直りしたの?」

「え?何で分かったの?」

「明らかに機嫌いいからさ。でも首の跡なくね?」

「いや、実はさぁ……俺が激しいプレイおねだりしてたんだけど、それって飽きられないためだったんだ。けど話し合って、…その…そんな事で飽きるわけないし…本当は激しいプレイ好きじゃなかったって言われたから」

ポリポリと頬を掻きながら打ち明けると、友人達は顔を見合わせてはぁぁ、と盛大な溜息をついた。

「良かったぁぁぁ…彼女が普通の人でぇぇ…」

「流石に千明の体が持たねーだろうから彼女特定して何とかするかって話してたんだよ」

「えぇ…何か心配かけてごめんね?」

「俺らみんな千明が大好きだから辛い思いしてほしくねーの。これからは体大事にしろよー?」

「……!!!あ、あ、ありがとぉぉぉ…っ」

こんなにも素の自分を晒してきたのに、そんな風に言ってもらえる事が嬉しくて号泣すると、友人達は笑いながら頭を撫でてくれた。

「元気になったところでさ、久々に体動かしてーからラウ◯ドワン行かね?」

「おー!行きたい行きたい!千明も行ける?」

「うん、俺も久々に行きたい!」

講義が終わると、俺達は電車に乗ってラウ◯ドワンへ向かった。

突然呼び出しを食らうかもしれないが、前話し合った感じでは断っても問題はなさそうだし。

そう思いながら駅から少し離れた目的地までを歩いていると。

「あれ、望月くんじゃない?」
「うわわぁ、隣の女の子ちょー可愛い」

「え……?」

みんなが視線を向ける方を見ると、そこには女の子と腕を組んで歩く望月くんが見えた。

わざわざどうして電車に乗ってくる様な場所で会っているんだろう。

もしかして俺に見つからないため?
それとも女の子がこの近くに住んでいるの?

今まで誰かと一緒に居るところを見た事がなかったので、頭にはかなりの衝撃が走った。しかも望月くんは一度も俺に見せた事のないとても柔らかい笑みを浮かべていて。今まで感じた事のないようなズキズキとした痛みが走った。

「………っ」

俺が今にも死にそうな顔でその二人を見ていると気付いた友人が、慌て出す。

「も、もしかして…ち、千明の…彼女?」
「…望月くんは千明の彼女って知ってんの…?」

少し誤解が生まれているが、女の子が俺の彼女という事になってしまったようで。

「や……彼女じゃないよ。ていうか望月くんは俺の恋人がどんな人か知らないし、そんなに望月くんと、仲良くないからさ、俺っ」

絞り出た言葉は望月くんを守るためのもの。もちろん友人達はそれを信じてはなさそうだが。

「ごめん……っ、俺、帰るね…っ、あの、本当に望月くんは俺の恋人の事とか知らないから!本当!だからあの人には絶対何もしないでね!」

俺が強くそう告げて走り去った。友人達には悪いけど、一緒に遊べる程俺は強くない。

電車に乗って帰っている途中の事はあまり覚えていないが、家に着いて玄関に崩れ落ちると、ボロボロと涙が零れ落ちた。

俺の事、手放す気なんてないって言ったのに。
この前凄くいい雰囲気だったのに。

──どうして?

玄関で倒れ込んだまま動く事の出来ない俺は、涙が枯れるまで泣き続けた。

高校の時、自分の気持ちに気付いたあの日からずっと好きだと言い続けてきたのに。

ついこの間もきちんと伝えたのに。今まで言い過ぎてたから、本気だと思われなくなったんだろうか。

それでも、好きだと示し続けてきたのに。

「……ひどい、よ……ひどいよ、望月くんの、ばかぁ」

ちゃんと好きだとは言われてない。付き合ってもいない。だから文句言える立場じゃないのかもしれないけど、手放す気ないと俺に向き合ってくれたのに俺以外とあんなに楽しそうにしているなんて酷すぎる。

確かに最初は、脅して犯してくるような奴だったから、きっと俺を玩具にする予定だったんだろう。

──けど、今は俺を弄ぶために一緒に居るわけじゃないって…そんな人じゃないと信じていたのに。

嫌いになりたくて色んな理由を並べてみても、やっぱり気持ちの整理が出来なかった。


◇ ◆


【来い】

後日届いたメッセージを見て、ズキズキと心が痛み出した。

女の子と居たので当たり前だが、泣き崩れたその日はメッセージが来なかった。それがまた俺の心を荒ませた。

「……女の子と過ごしても、まだ俺を呼び出すんだ」

そもそも、今までも知らなかっただけで俺と会っていない日はあの子とずっと居たのかもしれない。

最初はペットで良かった。所有物でいいと思った。でもそれは、『俺一人を見てくれていたから』。

「俺以外にも相手が居るって分かった以上、もう一途に好きでは居れないよ。望月くん」

──今日で、もう全部終わりにしよう。

望月くんは俺にとって、生き方を変えてくれた恩人でもあり、初めて好きになった人でもある大切な存在だった。だから、ずっとこれからも傍に居続けたかった。

「…早く、行かなきゃ」

中々動いてくれない体に力を込めて、望月くんの家に向かった。今まで一度も使う事のなかった宝物の彼の家の合鍵を握り締めて。

到着するなり、いつもと変わらない望月くんだったが、俺の雰囲気を見て何かを感じ取ったのかすぐに体を求めてはこなかった。

「何かあった?」

「うん。ちょっとだけ母親と喧嘩しちゃってさ。でも大丈夫!ごめんね」

ニコッと笑って誤魔化しても、中々行動してくれない。

俺以外に誰かが居るって分かっても、やっぱり顔を見たらどうしても求めてしまう。

最後に体を重ねたい。最後に、キスがしたい。最後に、…最後に──。

考えれば考える程、涙が出そうになった俺は、意味の分からない言葉を呟いた。

「ねぇ、望月くん。やっぱり前にした首輪のプレイが恋しくてさ。首輪なんかじゃなくて、望月くんが直接絞めてよ。──俺の首」

そう言うと、目を見開く望月くん。

「お前さ、この前話したよな。俺はそんなプレイ好きじゃないって。お前も好きじゃないって言ってたじゃん」

「うん、言ったね。でも忘れたい事がある時は激しい方が好きなの。ほら、高校の時に俺を救ってくれたようにさ、お願い。失敗してもいいから激しいのしよう?締まりも良くなって気持ち良いはずだよ」

スラスラと出る言葉に、望月くんは怖い顔をしていたが、俺は引き下がらずにずっと激しいプレイを要望した。

最後は望月くんにとって、心に残るプレイをしたい。そして、ずっと望月くんの心の中にあり続けたい。それが俺の仕返しでもある。

「…いいよ、分かった。下脱いでとっとと寝ろよ」

俺が引き下がらないからか、望月くんは観念したように言うと、俺はズボンと下着を脱いでベッドに寝転んだ。

望月くんの香りがするベッドとは、今日でもうお別れ。もう、こうやって俺を見下ろす顔も見れないけれど、俺は最高に幸せだった。

けど、あんな光景を見てしまった以上、俺は隣には居れない。もう一途に愛せない。

「ねぇ、望月くん。早く、シよ?」

何の行動も起こしてくれない望月くんが焦ったくて、望月くんのズボンと下着を脱がせてフェラをした。

こんな雰囲気でも、俺のテクニックのおかげか望月くんはすぐに反応してくれて。フェラをしている最中に自分でナカを解して繋がる所まで持って行った。

「…入れるよ」

普段よりかは慣らしが少ないので窮屈だったが、今の傷ついた心には多少苦しい方が丁度良い。

俺のナカに入る望月くんを感じて、俺を見つめてくれる表情を見て、愛しい気持ちが止まらなくなった。

終わりたくない、離れたくない。ずっと好きだった。だから……望月くんも俺の事を好きになって欲しかった。

ポロポロと流れ出した涙を見られないようにするために抱き付いて、今まで散々伝えてきた愛の言葉をたくさん囁いた。

「望月くん……好き、すきっ……好き、だよ…っ」

そう告げると、ナカにある望月くんのモノはかなり大きくなってくれた。今までにない程に強くしがみついて愛を囁き続けると、望月くんは優しい声色で俺の耳元で囁いた。

「千明」

「!」

初めて呼ばれた下の名前。

正確には一度呼ばれているが、おそらくあれは本当に咄嗟に出ただけだったと思うので、望月くんの意志で呼んでくれたのは初めて。

「…千明」

もう一度俺の名前を呼ぶと、高校の時以来のキスをしてくれた。とても柔らかい唇は気持ち良くて、ずっと重ねていたい。

(…何で、離れようとしてる今日に限って)

何か察したからなのか。性欲処理が出来る俺が消えるのが嫌なのか。そうだとしたら、彼は本当に性格が悪い。

唇が離れると、望月くんは俺の首に手を添えた。軽く添えるだけの指だが、段々と苦しくなってくる。5秒くらいですぐ離されたが、頭がふわふわする感覚は残っている。

「ん…っ、ぁ……」

苦しい感情しか湧かないと思っていたのに、少しだけ気持ち良いのは何故なんだろうか。

「お前が…一時期激しいプレイばっかり求めてくるから好きなんだと思って、色々調べてた」

「…へぇ、そう…なんだ。気持ち良い…ね」

「うん。それより、本当は何があった。本当に母親と何かあったなら今のお前は俺の所には来ないだろ。解決してから来るよな」

「…そう、かもね」

「俺が絡んでるんだよな。俺、何かした?こんなプレイ、本当は求めてないだろ?…何で、こんな事頼んだの。…言えよバカ」

「…」

何でそんなに悲しそうな顔で訊いてくるんだろうか。

不思議に思いながらも、隠す事は出来ないと悟り、全て伝える事にした。

「……望月くん、が」

「うん。俺が何?」

「………お前が」

「──は?」

「お前が昨日…っ、女と歩いてたからだよ!!」

「──は?」

望月くんは同じ事を二度繰り返すと、パッと首から手を離した。すると、昨日の事を思い出したのか小さく口角を上げた。

それがあまりにも腹が立って、俺は思いっきり望月くんを押し倒した。流石にその行動に驚いたのか、望月くんのモノは俺から抜けた。

「…俺、高校の頃からずっとお前が好きだった。それは変わらず伝え続けてきたから、分かってるよね。この前の話し合いは何だったの?──何が『手放す気はない』だよ。ふざけんなよ…っ、もう終わらせようとした日に限ってずっと呼んで欲しかった名前を呼んで、キスまでして…っ、本当に最低だよな。それでも……本気で俺は、お前が好きだったよ。だから、望月くんも、俺の事…好きになって欲しかった」

感情が押さえられずに、望月くんの首に手をかけて泣きながら力を込めると、ガッと手首を掴んできた。

苦しそうにしながら俺の下でもがく姿を見て、我に返り、絞めていた手の力を弱めた。

その隙にドスっと鈍い痛みが俺の腹部を襲った。見ると望月くんの膝が思いっきり鳩尾に食い込んでおり、あまりの苦しさに望月くんの上へ倒れ込んだ。

「…あーびっくりした。死ぬかと思った。お前高校の時からやばい奴だと思ってたけど、変わってないのな」

「る……さい、誰の所為だと…」

「『高校の時から好きだった。望月くんも俺の事を好きになって欲しかった』だっけ?…首絞めて号泣して鼻水垂らしながら言われたら笑えるんだけど」

さっき叫んだ言葉を復唱されてカァッと頬が染まった。

「黙れ…っ、最低、ばか…!!」

「ていうかさ、お前高校の時からずっと傍に居たから俺の性格、大体分かってんだろ。俺が好きでもねー奴とこんなに一緒に居るわけないじゃん。ましてやこの前みたいな話し合いするわけねーだろ」

その言葉が上手く理解出来ずに望月くんを見ると、昨日女の子に見せていたような優しい表情を向けてくれていた。



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