23時に明かりを消して

秋臣

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23時

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兄貴のアパートは実家から車で1時間くらい。
近くの駐車場に車を停め部屋へ行く。
2階の一番奥が兄貴の部屋だ。
時刻は21時を回っていた。
「やっぱ締め切ってたからあちーな!」
さっきと似たようなこと言って
エアコンをつけつつ、窓も開ける。
「なんか飲むか?」と冷蔵庫を開け、何本かペットボトルを適当に投げてくる。
「俺は支度したら出るから」
「え?なんのために呼んだんだよ」
兄貴がニヤリと笑う。
あ、この顔知ってる。
なんか企んでる時の顔だ。
「山は朝早くから登るから夜のうちに出て向こうで仮眠取るんだよ。何人かサークル仲間拾っていくしな。
コンビニは来る途中にあっただろ?必要なものはそこで買え。風呂とかも適当に入れ。部屋にあるものは好きに使っていいから。
飯代諸々はここに置いておく」と言って 1万円をテーブルに置いた。
「俺は明後日帰るけど、お前らはそれまで居てもいいし電車で帰ってもいいぞ。俺が帰るまでいるなら車を親父に返すついでに乗せていくから好きにしていいよ」
そう言って登山の支度を整える。
「広夢くん、なにがなんだか全然わからないんだけど、どういうこと?」痺れを切らして晃が聞く。
「まあ焦るな。もうすぐ22時か、お前ら、
23時になったら部屋の明かりとテレビを消せ」
「え?」
「わかったか、23時だぞ」
全然わからない。兄貴何言ってる?
デカいリュックを背負い、登山靴を手に兄貴が俺に鍵を手渡す。
「先に帰るなら母さんか親父にスペアキー預けておいてくれ」
「一体どういうことだよ、兄貴!」
じゃあなと手を上げてドアを開けた兄貴は振り向きざまニヤッと笑って
「楽しめ」
そういってドアを閉めた。
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