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84.第七部隊に与えられた任務
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第七部隊に与えられた任務である魔物討伐は、動ける者たちでこなした。足の速いリケラが引き攣れてきた巨大な地蛇を、オナガとカマラ、アトリ、それにヤガンで倒す。
「ヤガンの奴、戦いになると動けるようになるのは本能なんか?」
昔から戦闘狂の気があったヤガンは、魔物を前にすると嬌声を上げて突っ込んでいく。その様子を眺めながら、オナガはぽつりと呟いた。
初めは身体能力が落ちていることを考慮せずに突撃していくヤガンに焦ったオナガだったが、戦闘感覚が優れているのか、意外と何とかなっていたので放っておくことにした。
弱体化していると理解していても、どこかでヤガンだから大丈夫だろうという思いが抜けないようだ。
「あーあ、服が汚れちゃったわ。ねえ、オナガ、一緒に水浴びしない?」
「リケラとしんちゃい」
「釣れないわねえ。でもそこがいいかも?」
妖しく微笑むアトリに肩を落としつつ、第六部隊に連絡して討伐した地蛇を回収してもらう。
「オナガー」
「なんじゃ? リケラ」
「カマラがね、武器を変えたほうが良いんじゃないかって。おっきな武器の方が、魔物には利くよって」
「言われてみればそうじゃね。もう刀にこだわる必要もなかか」
巨大な魔物を相手取るのに、刀ではどうしても分が悪い。蕊山に戻ることが無いのであれば、武器を制限する理由はない。
剣鬼の才を持つオナガはこのままでいいとしても、他の隊員たちには別の武器を用意したほうが良さそうだ。
さっそく魔物討伐をしていた第六や第二部隊の隊長たちの下に足を運び、魔物討伐に適した武器を聞いて取り寄せることにした。
そんな日々が一年ほど過ぎたある日、第七部隊に新入隊員がやって来た。
「はて? 増員の申請はしちょらんかったはずなんじゃが?」
新入隊員は本部に増員申請をしておくことで派遣される。他の隊との兼ね合いもあるので、必ずしも希望通りの人員を得られるわけではないが。
首を傾げながら迎え入れたオナガは、やって来た見習い上がりの隊員を見て、あっと声を上げた。
「カルスじゃなかか」
「憶えていてくれたんだ。久しぶり、オナガさん」
冥海に落とされながらも何とか東萼に戻ったオナガを助け、一時期は共に暮らしたカルスだ。
「迷惑だった?」
困惑するオナガの表情を見て、カルスは笑顔を引っ込めて悲しげに俯く。
「そうじゃなか。そうじゃないんじゃが」
第七部隊は捨て場だ。魔物討伐という危険な任務を与えられているのも、オナガたちの力を見込まれてのことではない。
王が危害を加えずとも消滅するようにとの裏がある。
どうしたものかと考えたオナガは、カルスを連れて垠萼へ赴いた。
「カルス、会いに来てくれたのは嬉しか。じゃっどん、第七部隊は普通の部隊じゃなか。俺たちは王に嫌われちょる。第七に入ればお前まで危険に巻き込まれかねん。俺から口添えしちゃる。他に移れ」
「俺、検衛になりたくて入隊したんじゃないよ? オナガさんがいるって聞いたから、入っただけ。それに垠萼で暮らしてたんだから、魔物も追放も平気だよ?」
魔物を恐れることのないカルス。仮に華弁を追放されたとしても、彼にとっては元の生活に戻るだけで、損害はない。
どう説得したものかと困るオナガ。結局オナガの方が折れた。
無理に魔物との戦いに加わらないこと、そしてオナガが付ける稽古を受けること。その二点を約束させた。
後者に関しては、ナグル以外に続けられた隊員がいなかったため、諦めさせるために出した条件だった。
しかしオナガの策略は外れ、カルスは稽古を続け、第七部隊に残留することになる。
その後、カルスがどこからともなく見つけてきたクイナという少女も第七部隊に加わった。
無口でどこか浮世離れ手している彼女は、オナガと同じ神憑きだという。その能力を聞いたオナガは、思わず歓喜の声を上げた。
クイナの能力は『神曲』。オナガが探していた、神子の監視から逃れる力だった。
とはいえ思った程の効果は無く、神子の監視からは逃れられるようだが、神子の支配を無効化するまでは至らないようだ。
それでも垠萼まで行かずとも内々の話をできるようになったことは大きいだろう。
「ヤガンの奴、戦いになると動けるようになるのは本能なんか?」
昔から戦闘狂の気があったヤガンは、魔物を前にすると嬌声を上げて突っ込んでいく。その様子を眺めながら、オナガはぽつりと呟いた。
初めは身体能力が落ちていることを考慮せずに突撃していくヤガンに焦ったオナガだったが、戦闘感覚が優れているのか、意外と何とかなっていたので放っておくことにした。
弱体化していると理解していても、どこかでヤガンだから大丈夫だろうという思いが抜けないようだ。
「あーあ、服が汚れちゃったわ。ねえ、オナガ、一緒に水浴びしない?」
「リケラとしんちゃい」
「釣れないわねえ。でもそこがいいかも?」
妖しく微笑むアトリに肩を落としつつ、第六部隊に連絡して討伐した地蛇を回収してもらう。
「オナガー」
「なんじゃ? リケラ」
「カマラがね、武器を変えたほうが良いんじゃないかって。おっきな武器の方が、魔物には利くよって」
「言われてみればそうじゃね。もう刀にこだわる必要もなかか」
巨大な魔物を相手取るのに、刀ではどうしても分が悪い。蕊山に戻ることが無いのであれば、武器を制限する理由はない。
剣鬼の才を持つオナガはこのままでいいとしても、他の隊員たちには別の武器を用意したほうが良さそうだ。
さっそく魔物討伐をしていた第六や第二部隊の隊長たちの下に足を運び、魔物討伐に適した武器を聞いて取り寄せることにした。
そんな日々が一年ほど過ぎたある日、第七部隊に新入隊員がやって来た。
「はて? 増員の申請はしちょらんかったはずなんじゃが?」
新入隊員は本部に増員申請をしておくことで派遣される。他の隊との兼ね合いもあるので、必ずしも希望通りの人員を得られるわけではないが。
首を傾げながら迎え入れたオナガは、やって来た見習い上がりの隊員を見て、あっと声を上げた。
「カルスじゃなかか」
「憶えていてくれたんだ。久しぶり、オナガさん」
冥海に落とされながらも何とか東萼に戻ったオナガを助け、一時期は共に暮らしたカルスだ。
「迷惑だった?」
困惑するオナガの表情を見て、カルスは笑顔を引っ込めて悲しげに俯く。
「そうじゃなか。そうじゃないんじゃが」
第七部隊は捨て場だ。魔物討伐という危険な任務を与えられているのも、オナガたちの力を見込まれてのことではない。
王が危害を加えずとも消滅するようにとの裏がある。
どうしたものかと考えたオナガは、カルスを連れて垠萼へ赴いた。
「カルス、会いに来てくれたのは嬉しか。じゃっどん、第七部隊は普通の部隊じゃなか。俺たちは王に嫌われちょる。第七に入ればお前まで危険に巻き込まれかねん。俺から口添えしちゃる。他に移れ」
「俺、検衛になりたくて入隊したんじゃないよ? オナガさんがいるって聞いたから、入っただけ。それに垠萼で暮らしてたんだから、魔物も追放も平気だよ?」
魔物を恐れることのないカルス。仮に華弁を追放されたとしても、彼にとっては元の生活に戻るだけで、損害はない。
どう説得したものかと困るオナガ。結局オナガの方が折れた。
無理に魔物との戦いに加わらないこと、そしてオナガが付ける稽古を受けること。その二点を約束させた。
後者に関しては、ナグル以外に続けられた隊員がいなかったため、諦めさせるために出した条件だった。
しかしオナガの策略は外れ、カルスは稽古を続け、第七部隊に残留することになる。
その後、カルスがどこからともなく見つけてきたクイナという少女も第七部隊に加わった。
無口でどこか浮世離れ手している彼女は、オナガと同じ神憑きだという。その能力を聞いたオナガは、思わず歓喜の声を上げた。
クイナの能力は『神曲』。オナガが探していた、神子の監視から逃れる力だった。
とはいえ思った程の効果は無く、神子の監視からは逃れられるようだが、神子の支配を無効化するまでは至らないようだ。
それでも垠萼まで行かずとも内々の話をできるようになったことは大きいだろう。
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