28 / 118
28.まったく、何を勘違いしていますの?
しおりを挟む
「まったく、何を勘違いしていますの?」
広場から離れた所で、役者の下へ行くことを諦めたレイランは、不機嫌そうにオナガとカイツを睨み付ける。
「平民たちが華族からの支配を快く思っていないことなど、承知していますわ。芝居などで鬱憤を晴らせるのであれば、責めるどころか推奨したいくらいです」
どうやらオナガたちが勝手に早合点していたようだ。レイランという人物を、見誤っていたとも言える。
「私が気になったのは、先ほどの話の内容です。神々は蕊山で華族と共に暮らしていました。神々にとって垠萼は危険な地。空気を吸うだけで病に伏せる神もいたそうです」
平民たちには知らされていない神の実態に、オナガたちは驚いて顔を見合わせる。セッカも驚いている所を見るに、王族だけに伝わる話なのかもしれない。
「じゃっどんあん話では、神様は垠萼におったち言うちょった」
「だから倒れていたのか?」
「でも、なぜ神様はお一人で垠萼に赴いたのでしょう?」
三人が顔を見合わせて口々に意見を述べる様子を見て、レイランは大きく息を吐き出した。
「ですから、その点について詳しい話を聞きたかったのです。ついでに言えば、オナガ、セッカ。あなたたちならば、先ほどの話にもう一つ奇妙な点があることが分かるのではなくて?」
きょとんと目を丸くして、見つめ合うオナガとセッカ。頭の中で見たばかりの芝居を思い出してみる。
「そういえば、少女は神から祝福を頂いたと設定されていましたけれど、神憑きは生まれながらの能力。後天的に神憑きとなった例はないと伺っております」
「セッカの言う通りよ。もしも後天的に神憑きとなったのであれば、それは重大な発見になるわ」
真剣な表情と声。オナガたちも重要性に気付き始める。
「とは言っても、信憑性は低いと思うよ? 平民の間で語り継がれる話って、祠殿でやっているようなきちんとした精査や管理はされていないから」
「そうだとしても気になるのよ。あの能力」
再び考え込んでしまうレイラン。困ったように顔を見合わせた三人だが、時間は有限である。
「難しい話はまた今度にして、今日は楽しもう?」
カイツの言葉を聞いて渋々思考を切り上げたレイラン。その後はオナガたちの誘いに従って、街の探索を再開した。
「まあ、可愛らしい」
「私はこちらの方が好きね」
魔貝の貝殻や魔鳥の羽で作られた装飾品を扱う店に来ると、セッカとレイランは目を輝かせて夢中になっている。
オナガとカイツがほっと胸をなでおろしていると、チュウヒも合流した。
付近を巡回していた第五部隊の隊員にも協力してもらい、上手く言って今日の上演は切り上げさせ、早々に解散させたらしい。
実情を知って徒労だったことを知ると、壁に手を突いて項垂れた。
「お疲れ様やったな」
「どんまい」
オナガとカイツに慰められるも、表情に張りが戻ってくることは無かった。
買い物を終えたレイランとセッカを伴い、休憩用の広場に向かう。
あちらこちらで地面に寝そべったり、椅子に座って背もたれに付いた髪置きに髪を流して日光に当て、栄養を補給している平民たちの姿が見える。
太陽光に髪を当てて栄養を補給することのないレイランとセッカは、驚きつつも興味津々といった様子で周囲を観察していた。
椅子に座ったオナガたちも、自然と髪置きに髪を流す。
レイランとセッカも好奇心に駆られている様子だが、自分たちの髪を晒せば騒ぎになることは理解している。オナガたちの髪を摘んだり、日に透かしたりするだけで我慢した。
「セッカ、約束じゃ。今日は俺が栄養をやる」
「ありがとう、オナガ」
隣合って座ったオナガとセッカは、自然と掌を合わせる。いつもはセッカから栄養を補充してもらっているが、蕊山の外にいる今は、オナガからセッカへと受け渡す。
広場から離れた所で、役者の下へ行くことを諦めたレイランは、不機嫌そうにオナガとカイツを睨み付ける。
「平民たちが華族からの支配を快く思っていないことなど、承知していますわ。芝居などで鬱憤を晴らせるのであれば、責めるどころか推奨したいくらいです」
どうやらオナガたちが勝手に早合点していたようだ。レイランという人物を、見誤っていたとも言える。
「私が気になったのは、先ほどの話の内容です。神々は蕊山で華族と共に暮らしていました。神々にとって垠萼は危険な地。空気を吸うだけで病に伏せる神もいたそうです」
平民たちには知らされていない神の実態に、オナガたちは驚いて顔を見合わせる。セッカも驚いている所を見るに、王族だけに伝わる話なのかもしれない。
「じゃっどんあん話では、神様は垠萼におったち言うちょった」
「だから倒れていたのか?」
「でも、なぜ神様はお一人で垠萼に赴いたのでしょう?」
三人が顔を見合わせて口々に意見を述べる様子を見て、レイランは大きく息を吐き出した。
「ですから、その点について詳しい話を聞きたかったのです。ついでに言えば、オナガ、セッカ。あなたたちならば、先ほどの話にもう一つ奇妙な点があることが分かるのではなくて?」
きょとんと目を丸くして、見つめ合うオナガとセッカ。頭の中で見たばかりの芝居を思い出してみる。
「そういえば、少女は神から祝福を頂いたと設定されていましたけれど、神憑きは生まれながらの能力。後天的に神憑きとなった例はないと伺っております」
「セッカの言う通りよ。もしも後天的に神憑きとなったのであれば、それは重大な発見になるわ」
真剣な表情と声。オナガたちも重要性に気付き始める。
「とは言っても、信憑性は低いと思うよ? 平民の間で語り継がれる話って、祠殿でやっているようなきちんとした精査や管理はされていないから」
「そうだとしても気になるのよ。あの能力」
再び考え込んでしまうレイラン。困ったように顔を見合わせた三人だが、時間は有限である。
「難しい話はまた今度にして、今日は楽しもう?」
カイツの言葉を聞いて渋々思考を切り上げたレイラン。その後はオナガたちの誘いに従って、街の探索を再開した。
「まあ、可愛らしい」
「私はこちらの方が好きね」
魔貝の貝殻や魔鳥の羽で作られた装飾品を扱う店に来ると、セッカとレイランは目を輝かせて夢中になっている。
オナガとカイツがほっと胸をなでおろしていると、チュウヒも合流した。
付近を巡回していた第五部隊の隊員にも協力してもらい、上手く言って今日の上演は切り上げさせ、早々に解散させたらしい。
実情を知って徒労だったことを知ると、壁に手を突いて項垂れた。
「お疲れ様やったな」
「どんまい」
オナガとカイツに慰められるも、表情に張りが戻ってくることは無かった。
買い物を終えたレイランとセッカを伴い、休憩用の広場に向かう。
あちらこちらで地面に寝そべったり、椅子に座って背もたれに付いた髪置きに髪を流して日光に当て、栄養を補給している平民たちの姿が見える。
太陽光に髪を当てて栄養を補給することのないレイランとセッカは、驚きつつも興味津々といった様子で周囲を観察していた。
椅子に座ったオナガたちも、自然と髪置きに髪を流す。
レイランとセッカも好奇心に駆られている様子だが、自分たちの髪を晒せば騒ぎになることは理解している。オナガたちの髪を摘んだり、日に透かしたりするだけで我慢した。
「セッカ、約束じゃ。今日は俺が栄養をやる」
「ありがとう、オナガ」
隣合って座ったオナガとセッカは、自然と掌を合わせる。いつもはセッカから栄養を補充してもらっているが、蕊山の外にいる今は、オナガからセッカへと受け渡す。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
34
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる