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3・偽りの学園生活

3-29・宰相

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 ティアリィは早々に自分一人ではどうにもならないと判断して、二人ほど、詳しそうな者をナウラティスから呼び寄せることにした。
 そもそも現状、多少なりティアリィが抜けた状態にあるナウラティス自体にもそこまでの余裕はなく、2名、都合をつけてもらうのが精々だったのだ。
 ミスティは当然のようにあまりいい顔をしなかったが、現状を伝えると溜め息を吐いて許可を出してくれた。その際に交換条件のように強いられた行為は思い出したくもないが、あれはただ単に常に口実を探しているだけなのだろう。
 なお、今のティアリィはミスティのそういう所をこそ受け入れがたく思っている。
 らしくもない我慢を強いている自覚は流石にあるのだけれど。
 ともあれ、ティアリィのファルエスタでの仕事は、ピオラの護衛兼ユーファ殿下の為人ひととなりの確認、及びリアラクタ嬢への牽制の外には、そうした王城での国王夫妻の相談役が主なものとなっていた。
 国王から、更にもう一つお願いがあると言われたのも、その延長線上のようなものだった。
 曰く。

「お恥ずかしい、話なのですが……我が国の宰相、コルナルダを少し注意してみていて頂きたいのです」

 その名は国境で、ティアリィも気になった人物の物に他ならなかった。
 あの、ティアリィに近寄ることが出来なかった人物である。

「宰相、ですか……」
「ええ。彼は数少ない、の粛清の折の生き残り・・・・で、元より我が国の侯爵位にあった家系の者なんです。だからというわけではないとは思うのですが……」

 国王にはどうにも、彼の者について気になる所があるらしい。
 隣の王配を窺うと、にこと意味ありげに微笑んでくる。
 おそらく彼が国王だった時代なら、すぐにでも処刑対象となっていたのだろうと当たりを付けた。
 正直、あまり気が進まない、だけど。
 ティアリィは辛うじて頷く。
 これが今後、面倒なことになる気配をひしひしと感じた。
 しかし、ティアリィ自身、彼が気になっていたのは確かで、仕方がないかとも思う。
 具体的なことは何も言われていない。
 国王としても、明確な何かがあるわけではないのだろう、もしそれがあったらとっくに更迭しているはずだ。この国王にはその程度の決断力ならある。
 疑わしく思える、というだけでそれ以上の何かが見えない相手の尻尾を掴む。
 こんなの本当に自分のすることなのかと疑問に思いながら、ティアリィは溜め息を飲み込むことが出来なかった。
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