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3・偽りの学園生活
3-30・疎みきれない
しおりを挟むところで今、ティアリィ、否、ティールやピオラが留学している学園にも生徒会なるものがある。
とは言え、それほど仕事も権限もなく、精々何がしかの催しがあれば、それの司会、運行を指示する程度。やりがいがないとも言えるが、生徒への負担を考えると、こんなものかとも思える程度だった。
懐かしいとそう感じた。
自身が本当に学生だった時のことを思い出す。ミスティを会長に頂いて、自分は副会長としてその補佐をした。よくよく思い返すと、生徒会の仕事より、妹の尻拭いをしていた時間の方が多いような気もするが、それはそれ。
とりあえず、慣れない他国で年甲斐もなく学生をしている現状の方が余裕があるのは確かな話。
なぜ、そんな話をするのかというと、例に漏れずユーファ殿下も、ある意味当然のように生徒会長なる職についていた為である。
ティールは留学生という立場が考慮され、正式な役職は頂いておらず、外部協力員なる名称で生徒会室に出入りしている。勿論、他でもないユーファ殿下が望んだ為だった。
ティールとしても、部外者を仲間にしてもらっている以上、せめてと出来る限りの手伝いはするようにしている。
逆に手伝い過ぎないように調整することにこそに苦心している有様だったが。
ただ、そんな風に留学生でありながら、ユーファ殿下に伴われ、生徒会室に出入りしているのを知ったリアラクタ嬢は、当たり前のようにそれについてティールを糾弾してきた。
この子に呼び出される頻度が増えてきたような気がするな、と、心配するユーファ殿下を振り切り、単身彼女に付いてきたティールは目の前の少女を観察する。
相変わらず親の仇か何かのように、ティールを睨みつけている。
自分の立場とティールの立場を、この少女は本当にわかっているのだろうかと心配になってくる態度である。
まだ、確か15歳。子供でしかないことと、偽らない素直さがあることは決して悪いことだとは思えないけれど。
もう一つティールが最近気づいたことで、気になっていることがあった。
彼女はどうも、ティールの張っている防御結界に、かなりの頻度で抵触しないようなのである。
勿論、ある程度の近さで弾かれて、首を傾げている所を見ることもあるので、常に、というわけではない。
ただ、それを超えた近さで彼女がいることがままあった。
そういうことも含めてティールはどうしてもこの少女を疎ましく思いきれない。
こんな風に睨まれていてさえ。
「本当に、いい加減になさってくださいませっ」
こんな風に厳しい口調で、見当違いの苦言を呈されても。ティールは困った顔で彼女に対峙するばかりなのだった。
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