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本編

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「さて、残る問題はまだあるぞ」


ルイスがそう言うとルーカス達はルイスに視線を向ける。


「メルヴィル·····オリビアはどうする?もちろん、この屋敷にしばらくおくつもりはないから連れて帰るが·····」

「そうですね·····」


メルヴィルはオリビアのことを愛している。それは今も昔も変わらない。だが、守るべきものがあるからこそオリビアをどうするかを考えなくてはいけない。


「私は·····正直に言うと迷っています。このまま離婚する方が子供たちの為になると思います。ですが、どうしたってオリビアがこの子達にとって実母である事は変えられません·····」


オリビアがこの屋敷からいなくなったとしてもメルヴィルとオリビアが離婚しない限りオリビアがこの屋敷に帰ってくる理由ができてしまう。

もちろん、メルヴィルはオリビア自身が改心しない限りはこの屋敷に入れるつもりは無い。

だが、それ以前にこの件に関してはオリビアだけではなくメルヴィルも責任がある。オリビアと離婚して屋敷から追い出すのは社会的に彼女自身に泥を塗る事になる。

それでは、オリビアだけに責任を被せることになってしまうのではとメルヴィルは考えた。


「一度時間を私とオリビアに下さい。オリビアが今後も変わらないよであれば·····その時は離婚します。」

「お父様·····」


テオドールは幼い頃からの両親を見てきた。子供のことを抜きにすればいい夫婦だ。


(私達の幸せのため··········か)


テオドールはメルヴィルの決定に口を出すことはなかった。


「·····わかった。ルーカスも·····それでいいか?」


幼子にする質問ではないとルイスは思ったが1番の被害者はルーカスだ。それに、幼くてもルーカスはしっかり話の内容を理解している。だからこそ、ルイスはルーカスにも尋ねた。


「··········わかりません。」


ルーカスはオリビアの行動を幼い頃から見ていた。その中でオリビアがどれだけメルヴィルを愛していたかも知っている。


(オリビア様は父様は今から離れ離れになるのに·····これ以上のことは可哀想な·····)


ルーカスは優しいのである。どんなに母親が自分のことを嫌っていたとしても母親が嫌な思いをするのは好まない。

ルーカスが黙ってしまった様子を見てルイスはルーカスの頭をポンポンと叩く。


「とりあえず、オリビアは1度連れ帰る。これは決定だ。期間は·····明確には出来んが定期に手紙を送ろう。これでどうだメルヴィル?」

「ご配慮ありがとうございます。」


メルヴィルがルイスに向かって一礼する。


「それじゃあ、今日はもう休みましょ?」


ひと段落着いた所でソフィアがそう提案する。するとそれに同意するようにルイスやメルヴィル、テオドール達が頷いた。


「オリビアはしばらく起きないだろうから私が面倒見るわ。」

「ソフィアいいのか?」

「えぇ、私はこの子の母親ですもの。娘の不始末は親の責任よ。」

「じゃあ、ソフィア·····オリビアを頼んだ。」

「任されましたわ。」


ソフィアはオリビアを連れてくるようメルヴィルに頼むとメルヴィルはオリビアを抱えソフィアの後をついて行った。


「さて、3人ももう休もう。」


その言葉にルーカス達が頷き、談話室を後にしようとする。だが、その瞬間ルイスに呼び止められた。


「ルーカス!ルーカスはじぃじと寝るぞ!」

「「えっ·····?」」


ルイスのその言葉にテオドールとエルドが真っ先に反応する。


「お爺様!?何言ってるんですか?」

「そうです!お爺様··········」


慌ててテオドールが止めに入るとエルドも参戦してきた。

ルイスと寝ることはテオドールとエルドにとってはトラウマである。なぜなら、ルイスは寝相が悪い。


(ダメだ!このままだとルーカスまで·····)

(お爺様の寝相だと·····アイツが·····!?)


2人は視線を合わせると、サッとルーカスがルイスの視線に入らないように前に立った。


「なんじゃ2人とも。羨ましいかもしれんが今回はワシはルーカスと寝るぞ?」

「えっ、あ·····いや、羨ましい訳では·····」

「そうです!羨ましい訳ではなくて·····お爺様のね「こら!」」


エルドが正直に言いそうになったのをテオドールが止めに入る。

余計なことは言うなとテオドールがエルドに視線で訴える。すると、それに気づいたエルドが何度も頷いた。


「ほら、もう夜も遅いしルーカス行くぞ?」


ルイスはコソコソと話しているテオドールとエルドの横を通り抜けルーカスを抱き上げる。

この瞬間、テオドールとエルドはやってしまったと動揺する。


「えっ、·····お爺様?·····もう寝られるのですか?」

「そうに決まってるだろう。」


そう言ってルイスがルーカスを連れて出ていこうとした瞬間エルドがルーカスに向かって叫んだ。


「ルッ·····ルーカス!何かあったら叫べよ??」


その言葉の意味が理解出来ずルーカスは首を傾げる。メルヴィルも慌てるエルドのその様子を見て首を傾げる。


「全く、何が起こるっていうんだ?」

「とにかくだ!何かあったら叫べ。いいな!?」


エルドの勢いに負けてルーカスは頷く。


「·····おやすみなさい。兄様達」


ルーカスがそう言うとテオドールとエルドもおやすみと言って手を振った。

2人の姿が見えなくなったあと2人はその場にしゃがみ込んだ。


「はぁー·····こうなるとは思わなかった!」

「それは俺もです。」

「ルーカスが潰されないといいんだけど·····」

「細くてちっこいから余計に·····」


その後しばらく談話室でしゃがみながらルーカスの心配をする2人の姿があった。
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