嫌われ愛し子が本当に愛されるまで

米猫

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本編

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談話室を出たあとルーカスはルイスに抱き上げられながら寝室へ向かった。


「ルーカス、色々とあって疲れただろ?」

「·····いえ」


確かに、予想外の出来事はたくさんあり今までと変わった部分はたくさんある。だが、ルーカスにとってはまだ現地味がなく受け止めれていない部分が多々ある。

しかし、ルーカスはそれを表に出さなかった。正直どう伝えればいいかも分からないし、話したところで意味があるとも思えない。


(時間が過ぎれば·····慣れるのかな?)


ルーカスがそんなことを考えているうちに2人は寝室に着いた。


「さぁ、ハンナを一度呼ぶとしよう。着替えさせてもらいなさい。ワシも着替えてくるからな。」


ルイスはそう言うと部屋を出ていった。するとすぐにハンナが部屋に入ってきた。


「ルーカス様、こちらが寝衣です。お召かえのお手伝いはいかが致しましょうか?」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」

「·····そうですか。かしこまりました。それでは、外でおりますので終わりましたらお声掛けください。」


そう言うとハンナは一礼して部屋を出ていった。
ハンナが出ていったのを確認した後、ルーカスは直ぐに着替えた。


(もう夜遅いし·····急がないとハンナさんに迷惑かけちゃう)


ルーカスはさっさと着替えを済ませハンナに声を掛ける。ルーカスからの声掛けを貰ったハンナが部屋の中に入り、ルーカスを一瞥した後クスッと小さく笑った。


「ふふっ、ルーカス様ボタンをかけ違えておりますよ。」

「えっ!?」

「少し失礼します。」


ハンナはそう言うとルーカスの前にしゃがみかけ間違えられたボタンを直そうとする。
だが、ルーカスはハンナの手が届く前に1歩後ろに下がった。


「だっ、大丈夫です!自分で直せます!」

「かしこまりました。」


立ち上がったハンナは一歩後ろに下がる。ルーカスはハンナに背を向けすぐにかけ間違えたボタンを直した。


(はっ·····恥ずかしい·····)


予想外の出来事にルーカスは慌てた。ボタンをかけ間違えたのもそうだがハンナに手を伸ばされた事もだ。


(あまり·····痣とか見られたくないからな·····)


ボタンもなおし終わり、ルイスが来るまでの時間を潰すためにバルコニーに出ようと窓を開けた。

すると、ひんやりとした外の空気が頬を撫でた。ルーカスは外に出ると空を見上げた。


(星が·····いつもより多い気がする)


ルーカスは星空を眺めながら今日のことを思い返した。


(色々とあったな·····明日からどうなるんだろ?)


そう思い想像してみるが何も思いつかない。今までの生活が嫌だったかと言われるとなんとも言えない。嫌な部分もあったがそうでも無い部分もあった。


(そう言えばフィルに会ってないや·····会いたいな)


今までの生きてこれた理由にはフィルも含まれている。この屋敷で唯一の友達だ。言葉は分からないがそれでもお互いが大切なんだと何となく伝わってくるのだ。ほぼ毎日会っていたフィルに会えないのはルーカスにとっては苦痛だった。


(明日·····フィルの餌やりをしに行こう!)


そんなことを考えている時だった。


「ルーカス!」


その声と同時にルーカスは急に持ち上げられた。
慌てて顔を後ろに向けるとそこにはルイスがいた。


「夜は冷えるぞ。身体も冷えているではないか!さぁ、もう遅いし寝るとするか。」

「··········はい。」


ルーカスは持ち上げられながらベッドまで運ばれた。ルイスはベッドに着くとそっとルーカスをおろした。


「ハンナもう下がっていいぞ。」

「かしこまりました。ルイス様、ルーカス様良い夢を」


ハンナはそう言って一礼すると部屋から出ていった。ルイスはハンナが出ていったのを確認し部屋の電気を消すとベッドに潜り込んだ。


「さぁ、ルーカス布団に入れ。」

「·····失礼します。」


ルーカスは恐る恐る布団に入る。昨日は知らないうちにベッドに寝かされていたが改めて意識がハッキリした状態でベッドに潜るといつもとは違うふわふわの布団にルーカスは心が踊った。


「····気持ちくてあったかいや」

「そうか·····それならよく寝れるな」


いつの間にか思っていたことが口に出ていたらしい。その声はルイスに届いていたらしく返事をしてくれた後、ポンポンと頭を撫でてくれた。

 
「さて·····疲れてるだろうからさっさと眠ってしまえ。」

「わかりました·····」


そう言って目を閉じるがなかなか眠気が来ない。ルーカスは恐る恐る目を開けるとルイスはすでに目を閉じていた。

だが、ルーカスの何気ない気配に気づいたのだろう。ルイスもルーカスと同様に目を開けた。


「なんだ、寝れんか?」
 

ルーカスはそれに頷いた。ルイスは少し悩んだあと口を開いた。


「なら、じぃじと少し話をするか?」

「いえ、お疲れでしょうし·····」

「子供が気にすることではない」


そう言ってルイスは色々と話をしてくれた。自身の学生時代の話やソフィアとの話、そして旅先での話などを色々としてくれた。


「旅をするのはやっぱりいい。知見も広がるしその地域の特産物も·····っと?」


ルイスは話を止めてルーカスを見る。先程からうなきなどが少なくなってきたと思ったら、ルーカスがウトウトしていた。


「ははっ、眠いなら寝なさい。」

「·····は·····い」


ルイスがルーカスの背中を優しくポンポンと叩いているとすぐにルーカスから寝息が聞こえてきた。

ルイスは布団を肩までかけるとルーカスの顔を見た。


「本当に··········幼い頃のオリビアに似ている」


性格も行動も髪色も声も雰囲気も全くと言っていいほどルーカスはオリビアに似ていなかった。

それが幸か不幸かはわからない。だが、ルイスは少しほっとした。あれだけ嫌っていればもしかしたらルーカスはオリビアの子ではないのか?と少し考えた。

だが、こうして似ている部分を見つけるとどこか安心する部分があった。


「·····ルーカス、幸せになれ。」


ルイスはそう呟いて自分も目を閉じた。これからはオリビアの事で色々と忙しくなるであろう。

今だけは穏やかな夢を見れるように祈りながらルイスも眠りについた。
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