91 / 817
第五章 王都でもこいつらは・・・
第91話 チキンなタロウの受難
しおりを挟む
スタンピードの後始末も終わって、町へ帰ろうかと思っていた時のこと。
アルトが言ったんだ。
「ねえ、マロン、あなた、『シュガートレント』を随分狩っていたわよね。
かなり沢山、『シュガーポット』を手に入れたんじゃないの。」
おいら、砂糖なんか手に入る機会は滅多にないと思って、調子に乗って五体も倒しちゃった。
シュガーポットってシュガートレント一体に千個以上生るみたいで。
後から見てみると、『積載庫』の中に五千個以上のシュガーポットが入ってたよ。
シュガーポット一つで抱えるほどの大きさがあるから、とても使い切れる数じゃないね。
「うん、今『積載庫』の中に五千個以上あるよ。
それがどうかした?」
「そう、じゃあ、良い機会だから余分な数を王都で売っていけば良いわ。
マロンの住んでいる小さな町じゃ、そんな数は捌けないでしょう。
王都は住んでいる人が多いから、千や二千、簡単に引き取ってくれる店があるわよ。」
アルトはそんな提案をしてきたの。
シュガーポットは腐るモノじゃないから、沢山あっても困らないけど。
確かに、欲しい人がいるなら余分なモノは売ってお金に換えた方が良いかもしれない。
そうなると、アルトが一緒にいる今がチャンスだね。
お店の人には、おいらが出したのか、アルトが出したのか見分けがつく訳ないし。
アルトが、『不思議空間』に仕舞っておいたシュガーポットを売ることにすれば良いもんね。
そうすれば、おいらがシュガートレントを狩ったことや『積載庫』の事がバレずに済むから。
「じゃあ、町に帰る前に王都でシュガーポットを売ることにするよ。
ついでに、『ハチミツ壺』も食べきれないから売っちゃおう。」
こうして、おいら達は町へ帰る前に王都で用事を済ませることにしたんだ。
********
朝、クッころさんの屋敷を出て王都の繁華街に向かって歩いていると。
「俺、マロンが魔物の領域に言っている間、クッころさんの家に置いてけぼりくっただろう。
やる事が無かったんで、王都をブラついてみたんだけどよ…。
いかにもおのぼりさんって感じで、アテもなくふらついてたのが悪かったのか。
俺より、ちょっと年上のお姉さんが声を掛けてきたんだよ。」
道すがらタロウが、おいらとアルトが留守にしていた時のことを話してきたんだ。
タロウは、王都をあまり見て回っていないからと付いて来たの。
「ふーん、良かったじゃない。
おいら達の町じゃ、タロウってキモい男扱いでお姉さん達みんな近付いて来ないものね。
モテ期が来たのかな?」
タロウは共同浴場で、キレイなお姉さんのスケスケの浴衣を見て奇声を発したもんだから。
それ以来、町の若い女の人からはキモい男認定されちゃって、誰も相手してくれないんだ。
「それがよ、無茶苦茶キレイなお姉さんで…。
『あら、素敵な黒髪ね、私の好みだわ。ねえ、これから良いことしない?』
って、誘って来たんだ。
俺、思ったね、異世界チーレムパターンきたって。
だから、俺、すかさずウンと言っちまったんだ。」
すると、そのお姉さんはタロウの袖を引いて自分の家に連れて行ったらしいよ。
「部屋に入る早々、お姉さん、服を脱ぎ始めたんだよ。
それで、もう、ほとんど、スッポンポンって格好で抱き付いて来たんだ。
俺、これは絶対イケると思ったね…、そしたらよ…。」
そこで、苦虫を嚙み潰したような顔になって、言葉に詰まるタロウ。
「そこで、どうかしたのかしら?
お姉ちゃんだと思っていた人がお兄ちゃんだったとか?
都会にそういう趣味の人もいるようだからね。」
アルトがそんな風に尋ねたんだ。
「いや、男の娘なら、それはそれで、まだマシだったよ…。
さあこれからヤルぞ、と思った瞬間、部屋の扉が開いて。
見るからにヤバ筋の兄ちゃんが入って来てよ。
剣を抜いて言ったんだよ。
『俺の女に手を出すなんて、良い度胸じゃないか。覚悟は出来てるだろうな。』
って。」
剣を突き付けられたタロウは、有り金全部置いて行くか、指一本おいて行くかと凄まれたんだって。
結局、ビビッて何も言い訳できなかったタロウは、有り金全部置いて来たそうだよ。
せっかく、王都散策に出たのに、初っ端から有り金を巻き上げられて渋々クッころさんの家に戻ったって。
ほとんど、王都の散策は出来なかったみたい。
「あんた、美人局に引っかかったの?
馬鹿ねぇ、あれも冒険者ギルドのシノギの常套手段よ。
田舎から出てきた世間知らずの男が良く引っ掛かるのよ。
少し考えれば、自分がそんなにモテる訳ないって分かるはずなのにね。
他にも、冒険者ギルドって『タケノコ剥ぎ』とか色々罠を張っているからね。
若いキレイな女が声を掛けて来ても無視しないとダメよ。」
アルトが、『そんなにモテる訳ないって』って部分に力を込めて言うもんだから、タロウ落ち込んじゃたよ。
「いや、俺だって、そんなにモテる訳ないって思ってはいるけど…。
ここは地球じゃないんだから、モテるタイプが違うかもしれないだろう。
もしかしたら俺みたいなタイプがモテるのかもって、期待したって良いじゃないか。
ちくしょう、異世界チーレムも難しいって思い知らされたぜ…。」
最近、大分地に足が付いて来たように見えたけど。
やっぱり、中二病は完治していないみたい。
にっぽん爺が言ってたモノね、『なんの根拠もなく自分は特別なんだと思い込む』って。
すると、アルトが呆れ果てたと言う感じで言ったの。
「美人局云々は別としても、あんた、呆れた根性なしね。
まあ、あんた程度のレベルをひけらかす愚か者よりは幾分ましだけど。
冒険者ギルドのチンピラでレベル十ある奴はそうそういないわよ。
あんたの腰にぶら下げているのは飾りなの、その時だって持ってたんでしょう。
それで、幾らでも撃退できたしょうが。」
アルトは、タロウが腰にぶら下げている剣を指差して言ったんだ。
カイエンから巻き上げた業物の剣、あれからタロウは常に持ち歩いてるんだ。
因みに、美人局なんてやって小金を巻き上げているようなチンピラ冒険者は殆どがレベルゼロだって。
レベル持ちだとしても、精々がレベル一、二。
自分でレベル持ちの魔物を倒せないような連中で。
腕の立つ兄貴分にヨイっしょして、『生命の欠片』の端数を数枚恵んでもらっているような連中だって。
タロウがその気になれば幾らでも撃退出来るって、アルトは言ってた。
「そんなこと言ったって、いきなりそのスジのモンが入って来るんだぜ。
焦るに決まってるじゃねえか、剣の事なんかすっかり頭から消えちまったよ。
俺、小心者だから、ああいう強面のタイプは苦手なんだよ。」
そんなチキンな事を言うタロウ。
まっ、お金で解決できるなら、荒事になるより良かったかもね。
ギルドの連中と対立すると、あいつらしつこそうだから。
でも、冒険者ギルド、何処へ行ってもしょうもないことしてるんだね。
アルトが言ったんだ。
「ねえ、マロン、あなた、『シュガートレント』を随分狩っていたわよね。
かなり沢山、『シュガーポット』を手に入れたんじゃないの。」
おいら、砂糖なんか手に入る機会は滅多にないと思って、調子に乗って五体も倒しちゃった。
シュガーポットってシュガートレント一体に千個以上生るみたいで。
後から見てみると、『積載庫』の中に五千個以上のシュガーポットが入ってたよ。
シュガーポット一つで抱えるほどの大きさがあるから、とても使い切れる数じゃないね。
「うん、今『積載庫』の中に五千個以上あるよ。
それがどうかした?」
「そう、じゃあ、良い機会だから余分な数を王都で売っていけば良いわ。
マロンの住んでいる小さな町じゃ、そんな数は捌けないでしょう。
王都は住んでいる人が多いから、千や二千、簡単に引き取ってくれる店があるわよ。」
アルトはそんな提案をしてきたの。
シュガーポットは腐るモノじゃないから、沢山あっても困らないけど。
確かに、欲しい人がいるなら余分なモノは売ってお金に換えた方が良いかもしれない。
そうなると、アルトが一緒にいる今がチャンスだね。
お店の人には、おいらが出したのか、アルトが出したのか見分けがつく訳ないし。
アルトが、『不思議空間』に仕舞っておいたシュガーポットを売ることにすれば良いもんね。
そうすれば、おいらがシュガートレントを狩ったことや『積載庫』の事がバレずに済むから。
「じゃあ、町に帰る前に王都でシュガーポットを売ることにするよ。
ついでに、『ハチミツ壺』も食べきれないから売っちゃおう。」
こうして、おいら達は町へ帰る前に王都で用事を済ませることにしたんだ。
********
朝、クッころさんの屋敷を出て王都の繁華街に向かって歩いていると。
「俺、マロンが魔物の領域に言っている間、クッころさんの家に置いてけぼりくっただろう。
やる事が無かったんで、王都をブラついてみたんだけどよ…。
いかにもおのぼりさんって感じで、アテもなくふらついてたのが悪かったのか。
俺より、ちょっと年上のお姉さんが声を掛けてきたんだよ。」
道すがらタロウが、おいらとアルトが留守にしていた時のことを話してきたんだ。
タロウは、王都をあまり見て回っていないからと付いて来たの。
「ふーん、良かったじゃない。
おいら達の町じゃ、タロウってキモい男扱いでお姉さん達みんな近付いて来ないものね。
モテ期が来たのかな?」
タロウは共同浴場で、キレイなお姉さんのスケスケの浴衣を見て奇声を発したもんだから。
それ以来、町の若い女の人からはキモい男認定されちゃって、誰も相手してくれないんだ。
「それがよ、無茶苦茶キレイなお姉さんで…。
『あら、素敵な黒髪ね、私の好みだわ。ねえ、これから良いことしない?』
って、誘って来たんだ。
俺、思ったね、異世界チーレムパターンきたって。
だから、俺、すかさずウンと言っちまったんだ。」
すると、そのお姉さんはタロウの袖を引いて自分の家に連れて行ったらしいよ。
「部屋に入る早々、お姉さん、服を脱ぎ始めたんだよ。
それで、もう、ほとんど、スッポンポンって格好で抱き付いて来たんだ。
俺、これは絶対イケると思ったね…、そしたらよ…。」
そこで、苦虫を嚙み潰したような顔になって、言葉に詰まるタロウ。
「そこで、どうかしたのかしら?
お姉ちゃんだと思っていた人がお兄ちゃんだったとか?
都会にそういう趣味の人もいるようだからね。」
アルトがそんな風に尋ねたんだ。
「いや、男の娘なら、それはそれで、まだマシだったよ…。
さあこれからヤルぞ、と思った瞬間、部屋の扉が開いて。
見るからにヤバ筋の兄ちゃんが入って来てよ。
剣を抜いて言ったんだよ。
『俺の女に手を出すなんて、良い度胸じゃないか。覚悟は出来てるだろうな。』
って。」
剣を突き付けられたタロウは、有り金全部置いて行くか、指一本おいて行くかと凄まれたんだって。
結局、ビビッて何も言い訳できなかったタロウは、有り金全部置いて来たそうだよ。
せっかく、王都散策に出たのに、初っ端から有り金を巻き上げられて渋々クッころさんの家に戻ったって。
ほとんど、王都の散策は出来なかったみたい。
「あんた、美人局に引っかかったの?
馬鹿ねぇ、あれも冒険者ギルドのシノギの常套手段よ。
田舎から出てきた世間知らずの男が良く引っ掛かるのよ。
少し考えれば、自分がそんなにモテる訳ないって分かるはずなのにね。
他にも、冒険者ギルドって『タケノコ剥ぎ』とか色々罠を張っているからね。
若いキレイな女が声を掛けて来ても無視しないとダメよ。」
アルトが、『そんなにモテる訳ないって』って部分に力を込めて言うもんだから、タロウ落ち込んじゃたよ。
「いや、俺だって、そんなにモテる訳ないって思ってはいるけど…。
ここは地球じゃないんだから、モテるタイプが違うかもしれないだろう。
もしかしたら俺みたいなタイプがモテるのかもって、期待したって良いじゃないか。
ちくしょう、異世界チーレムも難しいって思い知らされたぜ…。」
最近、大分地に足が付いて来たように見えたけど。
やっぱり、中二病は完治していないみたい。
にっぽん爺が言ってたモノね、『なんの根拠もなく自分は特別なんだと思い込む』って。
すると、アルトが呆れ果てたと言う感じで言ったの。
「美人局云々は別としても、あんた、呆れた根性なしね。
まあ、あんた程度のレベルをひけらかす愚か者よりは幾分ましだけど。
冒険者ギルドのチンピラでレベル十ある奴はそうそういないわよ。
あんたの腰にぶら下げているのは飾りなの、その時だって持ってたんでしょう。
それで、幾らでも撃退できたしょうが。」
アルトは、タロウが腰にぶら下げている剣を指差して言ったんだ。
カイエンから巻き上げた業物の剣、あれからタロウは常に持ち歩いてるんだ。
因みに、美人局なんてやって小金を巻き上げているようなチンピラ冒険者は殆どがレベルゼロだって。
レベル持ちだとしても、精々がレベル一、二。
自分でレベル持ちの魔物を倒せないような連中で。
腕の立つ兄貴分にヨイっしょして、『生命の欠片』の端数を数枚恵んでもらっているような連中だって。
タロウがその気になれば幾らでも撃退出来るって、アルトは言ってた。
「そんなこと言ったって、いきなりそのスジのモンが入って来るんだぜ。
焦るに決まってるじゃねえか、剣の事なんかすっかり頭から消えちまったよ。
俺、小心者だから、ああいう強面のタイプは苦手なんだよ。」
そんなチキンな事を言うタロウ。
まっ、お金で解決できるなら、荒事になるより良かったかもね。
ギルドの連中と対立すると、あいつらしつこそうだから。
でも、冒険者ギルド、何処へ行ってもしょうもないことしてるんだね。
応援ありがとうございます!
2
お気に入りに追加
287
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる